「まだあるよ。彼は言ったんだ。薬を使わなかった理由を。まさかの時の為に、家族を見たいって。君に見てもらいたいわけじゃないけどね・・・でも、おじさんの代わりに家族を。新しい目で見るチャンスはこれから先、あるかもしれない」
「でも、その術式は極めて難しいのでは!?」
「袴田先生、私も覚悟してますよ。彼が私に約束した日から術例や、ヨーロッパにも行って術式を身につけてきました。彼の覚悟の大きさに比べたら、まだまだ小さいものですが」
「先生・・・」
「美空さん?」
「私、おじさんの目になります。そんな思いのつまった目を断ったら、怒られそうですよね」
「わかりました。今から、すぐ、入ります」
「でも、ちょっと待ってください!本当にいいんですか?美空さん!」
「何で止めるの?袴田!?」
「確かに主治医の先生は腕はいい。成功することを願いますが・・・願うからこそ、もし、失敗したら・・・いや、仮に、神経がうまく通ったとしても見えないことだってあるんだ。つまり、期待して臨んでだめだった時の落胆は大きいと思うんだ」
「言いたいことは分かるけど、私は別に見えなくてもいいの。だから、見えたらそれで奇跡じゃない!それとも、目が見えるようになったら、袴田とお別れしなくちゃいけないから寂しいとか?」
「バカなことを!患者が良くなることを喜ばない医者は失格だよ」
「患者・・ね」
「美空さん、もうひとつ、考えて。君は生まれつき目が見えなかったわけではなかったね。そして、今の年頃・・・。おじさんとの瞳の大きさが違ったら、顔の印象だって、違って見えるんだよ。最初に見る久しぶりの自分の顔が違って・・・」
ブー、ブー、ブー
「言いたいことはよくわかったけどね・・・袴田・・・携帯なってるよ(ありがとうね・・でも、失うものなんてないの)」
「え!?携帯!?そんなの今は(何で彼の携帯がなってる?珍さんはここにいるぞ!)君のことが大切だ」
「もういいよ・・本当に・・ありがとう」
「え!?『ありがとう』?」
バタン