眼鏡 145話
そして、古寺𠮷。すっと立ってただただ黙っていた。無言の訴えだった。
掛水は言った。
「つまりはインパクトは手段であっても良いけれど、それが主であってはならないってことだよね」
「そうです。訴えるものがあってこそのCMだと思うんです。いじめをやめてほしいのなら、その訴えがしっかりしないと意味がない」と、康熙。
「でも、私は作った人は最初は訴えようと思ったと思うんです」と、明美は言った。
「どういうことですか」と、掛水。
「そこはやはり制作するには今私たちも、どうしたら振り向いてくれるか、そればかり考えていました。まず見てもらわないことには始まりませんから。私たちは短時間ですが、あのCM にはかなりの時間をかけたと思うのです」と、明美。
教室の中ではうなずく生徒が増える。
「インタビューがあれだけあって、キャッチコピーのような言葉ができているけれど、あの言葉だって言わされてるわけじゃない。本当にそう思ってるから言ったまで。そして覚えやすいようにって」
「なるほど」掛水もうなずく。そしてクラスに意見を求める。
古寺𠮷が重い口を開いた。
「大丈夫か」と健児が寄り添う。
「大丈夫」というと、話し始めた。
「CMを見る側、聞き取る側の責任はどうですか?」古寺𠮷は言った。
ざわつき始めた教室はまた、一瞬にして静まった。
「たかがCM,自分には関係のない世界とか、おじさんがなんか言っている。面白いCM。そんな風にしか見ていないからそうなったんじゃないの?」
横にいた健児は唖然とした。ここまで古寺𠮷がクラスの中で自分の考えをはっきり出したのは初めてだったからだった。
そして我に返ると、
「そうかもしれない・・・自分に置き換えてなかったんだ。テレビの中でしか怒らないとか、面白そうとか、そんな考えしか持てなかったんだ。交通安全のCMだってそうじゃないのかな」と、健児も続けた。
「だってさ。実際面白かったしさ、自分はいじめられるなんて思わなかったしさ」と、どこからともなく声がした。