キィ~ハルカナル~
第十七話
『つらくなるだろうし・・』
『わかってますって、そんなこと・・』
少女と先生はこんなやり取りをした後に、キィを保育器から出し、少女のほうが抱いた。
『ごめんな・・』
たった、たった一言だった。その言葉は、キィがあの田舎でも聞いたことがある言葉でそれがよくばっちゃんが使っていた言葉だってこともわかっていた。
ただ、その時は、誰に向けて使われていた言葉かなんて、わからなかった。
今日のこの『たった一言の言葉』は間違いなく、キィに向けられた言葉ではあった。
それをキィは知ってか知らずか、
思わず、力などはいらないはずなのに、その少女の顔を見上げることができた。そしてじっと見た。
(あれ?目から雨が出てるよ?)
そう思うとすぐに
『なんか、この子気持ち悪い!こっち、ずっとにらんでくるんだ!泣きもしないよ!』
その少女は泣きながら、キィを先生に預けた。
『嘘おっしゃい…』
痛いほどわかっている。わかっていないのはおそらく、この場ではキィだけである。
『もう、これで最後のお別れになるんだよ、そんなお別れでいいの?』
『…いいの、これくらいのほうが…私が悪いんだから。この子には何にも罪はないし・・きっと大きくなって、これからいい、新しい母親にも恵まれて…』
『わかったわ、もういいわ…何か最後にしておかなくていいの?』
そう言われて、その少女は『じゃあ・・』と、名前の付いたタグを置いて出ていった。