「月刊 流通雑感」NO.230、2023年 11月号
《目次》
1、 社会・消費者動向
(1) 小中学生の不登校が29万人
(2) ソバーキュリアス
2、 小売業・卸売業の動向
(1)イオン、「いなげや」に対してTOB開始
(3)中国市場で1万店を目指すローソン
(4)アマゾンの最新倉庫は、ロボットが5000台
(5)アークスのネットスーパー「アークスオンラインショップ」
3、メーカーのチャネル戦略、
(1)日産、中国市場で苦戦中
4、その他
(1)24年問題、政府が対策決定
(2)「学歴の暴力」というアイドルに驚く
(3)ロボットに乗る
先月、70歳になりました。なんだか不思議な感じです。
大学での講義はあと3か月、定年まではあと5か月。41年間も大学の教員をやっているので、あと数か月といわれても・・・これもなんだか不思議な感じです。
そんな感じで生活していますが、11月になりました。大学では白いシートが敷かれ、大学祭の準備が進んでいます。コロナで数年間中止だった大学祭も復活です。
大学祭が終ると、入試のシーズンです。各種の推薦入試が始まります。推薦入試の面接官とか来年2月の一般入試の試験監督も今回で終わりになります。
今月は大学の業務が多いので、静かに無難に講義と仕事をこなしていきたいと思っています。私生活では秋の味覚を楽しみたいと思っています。
1、 社会・消費者動向
(1)小中学生の不登校が29万人
義務教育の崩壊が始まっているのではないでしょうか?22年度の調査で、全国の小中学校で不登校だった児童が29万9048人となり、21年度から22.1%増えたことが報告されています。不登校児というのは、病気や経済的理由などを除いて、年間30日以上登校していない状況を言います。児童生徒1000人あたり不登校人数は31.7人です。約3.2%の児童が不登校なのです。
「学校以外の居場所が認められ、無理して学校に通う必要がないと考える保護者も増えた」という解説もあります。
教育する側もますます難しくなりますね。義務教育の崩壊につながらないといいのですが。ちょっと心配です。
(2)ソバーキュリアス
「ソバーキュリアス」。聞きなれない言葉ですが、英語の「ソバ―(しらふ)」と「キュリアス(好奇心が強い)」を組み合わせた造語で、健康への配慮などからお酒をあえて飲まないライフスタイルなのだそうです。Z世代には少なくないそうです。ビッグローブの調査によると20~24歳のうち「日常的にお酒を呑みたい」との回答は2割弱で、8割強が日常的にお酒を呑みたくないという意向を示しているそうです。
お酒を呑まない。ビールを飲まない。そんな若者が増えてきています。ビール市場は94年度をピークに縮小し、ビールの市場規模は2021年にはピークから約7割縮小しています(発泡酒などが登場してますので、ビールだけならという話です)。今のままの状態が続けば、2050年には、現在の半分程度の市場になると予想されています。おそらく、それを前提にノンアルコール飲料を多く開発しているものと考えられます。ビールの好みも多様化するという前提でクラフトビールに力をいれているメーカーもあるのだと思います。
「呑みつぶれる」とか「酩酊する」などという人は少なくなっていくのでしょうね。相変わらずお酒を楽しみたい派の私は、マイペースでビールやワインや日本酒を料理と合わせながら少しずつ楽しみたいと思っています。世の中は変わりますね。
2、小売業・卸売業の動向
(1)イオン、「いなげや」に対してTOB開始
イオンは、食品スーパー大手の「いなげや」に対して、10月10日から1株1610円でTOBを開始しました。株式の51%を上限に、最大225億円を投じて子会社化する予定です。その後、2024年11月までにイオンの子会社(ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス:USMH)に経営統合する方針です。そして、「いなげや」は上場廃止になります。
イオンは、「いなげや」の筆頭株主で17.01%を所有しています。今回は、「いなげや」の方から話があったようです。どうやらPBやデジタルへの莫大な投資を1社ではまかないきれないという判断だったようです。また、イオンが今春、賃上げを行ったことも影響があったようです。「いなげや」の労働組合が、イオンの子会社になる事を嫌がらなかったようなのです。
(2)ニトリの海外展開
ニトリは、現在、国内で約800店舗を展開しています。アジアでは148店舗展開しています。25年までに海外店舗数を今の約2倍の300店程度に増やす計画です。24年3月期は前期比2倍強の77店の海外出店を計画しています。23年3月期の海外売上高は約300億円で、ニトリの売上高の3.8%にとどまっていますが、これを今後早期に10%まで引き上げる考えです。
アジアでの店舗数が増えると、工場からの教理が短いので日本と比べて物流コストが抑えられます。また、為替の影響に左右されにくい体質に転換できます。そのため、アジアでの出店を急いでいるわけです。その一方で、アメリカからは23年に撤退します。
ニトリの海外展開が予定通りいくかどうかが、今後のニトリを決めそうです。
(3)中国市場で1万店を目指すローソン
ローソンが8月、中国市場で6000店を突破しました。また、23年12月期は黒字に転換する見込みです。そして、25年に1万店にする目標を持っています。1万店は、25年に達成するのは難しそうですが、その近くの数値にはなるのではないでしょうか。
中国進出から28年目ですが、ようやく花が開いてきました。22年でセブンイレブンは3319店、ファミリーマートは2666店ですから、ローソンの店舗数の多さが目立っています。ローソンは、あと10年もすれば、国内の店舗数よりも海外の店舗数が多いという状況になるのではないでしょうか。
苦節28年、なぜローソンは成功したのでしょうか?日経MJは、成功した要因を次の4つに整理しています。
➀各地の事業会社で過半数の出資を確保した事。出資比率を高めたことで経営の独立性を確保し、合弁相手との主導権争いを回避できたことが大きいそうです。
➁中国ならではの経営手法を追求した事。「広大な中国は1つの国と考えるのでは駄目。複数で構成する欧州連合と同じように考えるべきだ」という考えのもと、地域の事業会社に弁当などの商品開発や出店地域の選定、財務や人事戦略も任せたことが大きいようです。また、新商品をより多く販売した店舗にインセンティブを多く出すことによって、新商品の取り扱いをスムーズにしたことも有効だったようです。さらには、店舗を管理する社員(スーパーバイザー)は中国全土で統一の社内資格制度を持ち、各店舗の質を一定に保つように工夫している点も大きいようです。
➂商品力を磨き、たとえばPB商品の約7割が地域独自で、全国共通は3割程度です。PBの約9割が全国共通という日本とは大きな違いがあります。このように地域の独自性を優先させた商品開発が成功の重要な理由として指摘されます。
④日本人の長期赴任が指摘されます。中国駐在が10年を超える駐在員が現在十数人いるそうです。各地の事業会社に権限移譲しているため経営人材が多く必要なようです。そのため、長期駐在によって経営人材を育成できた点も成長した理由の一つとして指摘されます。
経営人材の育成がうまくいって、現在、中国で頑張っている人たちが帰国した後もその哲学とノウハウが引き継がれれば、ローソンの中国事業はますます発展していくのだと思います。
(4)アマゾンの最新倉庫は、ロボットが5000台
アマゾンの最新の倉庫(ワシントン州シアトルから北へ車で1時間のアーリントンにある)は5階建て、延べ床面積約27万㎡とサッカー場37個分です。ここで約1600人の従業員と約5000台のロボットが働いています。
出荷に向けて棚から商品を出す際には、ロボットが棚を作業員のもとに運ぶ仕組みは有名です。また、梱包後の仕分けもロボットが大部分を担っています。ベルトコンベヤーで流れてくる商品をアーム型のロボットがつかみ、台車の役割をする自走式ロボットに載せます。このロボットが自動運転で商品を配送先の地域ごとに分けています。
「協働ロボットを使い単調な作業を全て自動化したい」とアマゾンの担当者は述べています。すでにヒト型ロボットの「ディジット」の活用実験も始まっています。巨大な倉庫の中で数千台のロボットが動き、わずかな人間がそれを監督しているような姿が未来の倉庫なのでしょうか?いずれそのような姿に近づいていくと考えられます。その上、配送トラックが無人運転車だったりして・・・・。
(5)アークスのネットスーパー「アークスオンラインショップ」
北海道のアークスのネットスーパーは、24年2月期の売上高は12億円と、これからではあるが、「コストコ」の商品を品揃えに加えました。オンラインショップの商品数は約9000種類、客単価は約5500円です。
このアークスのネットスーパーが23年冬にもアマゾンの中に開くことが決まりました。アマゾンの配送網を利用するそうです。品揃えは約9000種類。最短で店舗から自宅に届く時間が2時間だそうです。アークスだと5時間、イオン北海道だと最短3時間だそうですから、この点でも有利になります。
このようにアークスのネットスーパーは、急展開を見せています。これから成長するのは、間違いないところではないでしょうか。
3、メーカーのチャネル戦略
(1)日産、中国市場で苦戦中
日産が中国市場で苦戦中です。6月の販売台数は前年同月比28%減、7月は33.6%減、8月は28.9%減。3か月連続で大幅減となっています。23年3月期の中国市場での販売額は104万台と全体の32%を占めています。23年3月期の純利益に占める中国事業の比率は34%です。その中国市場で苦戦しているということは、24年3月期の業績に大きな影響を及ばしそうです。
一般的には、「中国市場での急速な電気自動車シフトを受け、ガソリン車主体の日産のシェが落ちている」という説明になるのでしょうが、ゴールドマンサックスの湯沢康太さんは「新エネルギー車やハイブリッド車の商品展開の遅れに加え、エンジン車でも4気筒ではなく、(振動音の大きい)3気筒エンジンを搭載した事が中国の消費者のニーズに合わず、シェアを失っている」と説明しています。
今後の日産の中国市場での課題として、伊藤忠総研の深尾三四郎さんは「日産は中国市場でEVだけでなくコネクテッドカー(つながる車)の技術でも遅れている。消費者に訴求する商品構成の見直しなどでブランド力を建て直せるかが課題」と述べています。日産の中国市場での復活はなかなか大変なようです。
4、その他
(1)24年問題、政府が対策決定
政府は10月6日、24年問題に対する緊急対策をまとめました。24年度に14万人の運転手不足が見込まれていますが、緊急対策を実行すれば解消すると主張しています。
➀荷待ち・荷物の積み下ろし時間の削減で4万5000人分
➁荷物の積載率向上で6万3000人分
➂モーダルシフト(鉄道と船舶の輸送量を倍増)で5000人分
④再配達削減で3万人分
以上を補填できると考えているようです。なお、再配達削減のために「置き配」やコンビニ受け取りでポイント還元することを考えているようです。これで問題が解決すればいいのですが、どうやって実行するかが課題ですね。
(2)「学歴の暴力」というアイドルに驚く
かつての帝大の卒業生だけで作ったアイドルグループがあります。東大卒、京大卒、名古屋大学卒、九州大学卒の4人です。平日は社会人として働き、アイドルは週末だけ。芸能事務所にも属していません。
おもしろいのは、「学歴の暴力」という曲が始まると、「学歴の暴力くらえ」と歌詞に合わせてメンバーがビームを出すしぐさをするのです。そうすると、「低学歴」と書かれたTシャツを着たファンが一斉に倒れ始める事です。しかし、一部のファンは倒れずに生き残っています。生き残ったファンが掲げているのは、なんと旧帝大の大学の卒業証書(学位記)。それを盾にして学歴ビームを防いでいるのだとか・・・・。
実に変。驚きました。こんなアイドルもいるのか~。ファンもいるのか~。驚きました。
(3) ロボットに乗る
搭乗型ロボットに乗ることが現実になってきました。24年にはパイロット体験ができる施設が都内で正式開業する予定です。
両国駅からほど近いところにロボット操縦施設「ロボットベース」があります。体長3メートルの油圧式ロボット「EXA」があります。これのコックピットに乗り込み操縦するのです。
また、高さ4.5メートル、重量3.5トンの「アーカックス」というロボットが販売されています。4億円です。ヒト型の「ロボットモード」から車型の「ビークルモード」に変身する夢の搭乗型ロボットです。
ロボットは色々な場所で活躍していますが、搭乗型ロボットが現実になってきていることに驚きました。
以上