「流通雑感 臨時号NO.6」2024年9月20日
「流通雑感 臨時号」は、住谷ゼミのOBOGの皆さんに読んでいただこうと思って発行するものです。
臨時号とするのは、毎月掲載するわけでもなく、一定量が溜まったらなので、月に1回かもしれませんし、2~3か月に一度くらいかもしれません。その点はご容赦のほどお願いします。現在は、月1回の刊行を目指しています。住谷ゼミのOBOGの皆さんに、少しでもお役に立てたら幸いですし、私の近況もお知らせしたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。
*9月から「スポーツ吹き矢」というのを始めました。週1回の練習です。自宅でも練習できるようにしました。今は初心者なので、6mです。来年の2月の船橋市大会が公式戦デビューになりそうです。なかなか楽しいです。5回吹いて、7点が最高なので35点が満点です。日本の弓道のような流儀があります。どなたかスポーツ吹き矢をやっている方いますか?もし、いたらご連絡ください。
1.社会・消費者について
(1)高齢者3625万人:29.3%
(2)私大の定員割れ59.2%:354校
(3)若い世代に資産効果
(4)旅行離れか?旅行にいかない日本人
(5)共働き世帯の格差
2,小売業について
(1)セブン&アイHDの買収提案を巡って
(2)「アリマンタシォン・クシュタール」ってどんな企業?
(3)コンビニ、初の2年連続店舗数減少
(4)イオン株式上場50年
(5)ヨーカ堂、閉店33店舗固まる
(6)ドラッグストアの再編
(7)ダイソー、アメリカで1000店体制は実現するのか?
3,消費財メーカーについて
(1)加工食品、6割の商品種類で品目数を削減
(2)公正取引委員会、日清食品に警告
4,その他
(1)海外企業による日本企業「大買収の時代」
1、社会・消費者について
(1)高齢者3625万人:29.3%
24年9月15に時点での人口推計によると、65歳以上の高齢者人口は前年比2万人増の3625万人と過去最高になりました。総人口に占める割合は29.3%で過去最高を記録しました。
その高齢者は、働いている人が多いのです。60歳~64歳は74%、65~69歳は52%、70~74歳は34%、75歳以上は11.4%の方々が働いています。働く人の割合は年々高まる傾向にあります。
(2)私大の定員割れ59.2%:354校
2024年度の入学者が定員割れした4年制の私立大学が354校にのぼり、全体の59.2%であったことがわかりました。前年比5.9%増です。4年連続で定員割れした私立大学が増加しています。
3大都市圏の私大の定員全体に対する入学者の割合が初めて100%を下回りました。千葉県、埼玉県、神奈川県、兵庫県、愛知県、京都府にある大学で定員割れに陥ったところがあったのです。まだ、東京都と大阪府の大学は100%以上です。
少子化の進行で、小規模校や地方で定員割れに追い込まれる私大が増えていますが、学生を集めやすい都市部でも経営の厳しさが増している状況が明らかになってきています。
今後、ますます少子化の影響が出るでしょうから、入学試験を止めて撤退する大学、大学を統合する大学などが増えて行くものと予想されます。東洋大学はその点、心配ありません。
(3)若い世代に資産効果
資産効果とは、株式や投資信託などの評価額の上昇が個人消費にプラスの効果を及ぼすことを言います。逆に株式の評価額が下がって個人消費にマイナスの効果を及ぼすことを逆資産効果と言います。
まずNISAの口座数は30歳以下で、15年から24年で6倍程度に増えています。保有割合でみると、30歳以下は15年に13.3%だったのが24年には29.2%まで拡大しています。また、前年と比べて資産を現預金からリスク性資産などに振り向けた20歳代世帯の割合は13年には3.0%でしたが、23年には18.7%と大幅に増えています。
この期間、ハイブランドのバッグやアクセサリーがよく売れたそうです。資産効果ですね。
このように若い世代に「貯蓄から投資へ」という機運が高まってきており、そのため、資産効果が出ているようです。もちろん、株式の評価額が大幅に下がれば逆資産効果が出るかもしれません。
(4)旅行離れか?旅行にいかない日本人
海外渡航者はコロナ前の6割程度にとどまり、国内の宿泊旅行も前年割れが続いています。日本人は旅行にいかなくなるのでしょうか?実際。日本人のパスポート保有率は2019年に23.8%でしたが、2023年には17.0%になりました。若者層(13~29歳:400人)のアンケートでは、海外旅行に「行きたいと思わない」が57.3%となっています。
海外渡航者は増えそうにないのです。また、国内旅行も頭打ちです。その背景には、レジャーの多様化があるでしょう。その他にうまく休みがとれないとか、お金がないとか、仕事が忙しいとか、いろいろな理由がありそうです。
でも日帰り旅行は増えているのかもしれませんね。
私のような、70歳くらいの人は、旅行会社のターゲットらしく、連日、旅行の案内・パンフレットが届きます。旅行会社も大変なんですね。
(5)共働き世帯の格差
妻が64歳以下の共働き世帯は23年に1206万世帯、専業主婦世帯は404万世帯でした。
その共働き世帯ですが、妻が高所得であればあるほど夫も高所得であることがわかりました。妻の年収が1000万以上の夫婦で見ると夫の69%が年収1000万以上となっています。妻の年収が300万~499万円の夫婦では、1000万以上の夫は7%でした。
大学や会社で出会って、結婚すると、夫婦で同じような所得層になりやすいためではないかと解説されています。結果として、世帯単位でみた場合、個人単位より大きな格差が生まれる恐れがあります。共働き世帯には大きな所得格差があるようです。
2,小売業について
(1)セブン&アイHDの買収提案を巡って
カナダのアリマンタシォン・クシュールがセブン&アイHDに対して買収提案したことはとても大きな反響を呼んでいます。日経新聞でも、いろいろな記者がいろいろな視点から記事を書いています。ここではそれらを簡単に整理してみましょう。
➀「セブン買収目的 ガソリンか食か」という記事がありました。この記事の結論はないのですが、アリマンタシォンの買収目的は、GS併設型のセブンイレブンの米国店舗網であるという指摘もあれば、セブンイレブンの食分野のノウハウが目的という指摘もあると両論併記で書いています。
➁「セブン&アイ 実はお買い得」という記事は、M&Aの投資尺度の観点から見れば、セブン&アイの買収はお買い得なのだという内容です。セブン&アイの時価総額は5兆円くらいで買収となるとおそらく6兆円は必要になると思われます。しかし、買収資金を何年で回収できるかという目安を見ると、6.98なのです。つまり、7年で投資回収できるという事です。イオンは10倍弱、アリマンタシォンは11倍ですから、投資資金を7年で回収できるセブン&アイHDはお買い得だというわけです。どうやら日本の著名な企業も株価があまり高くなく、円安の現在、買収の対象になりやすいようです。
➂「セブン価値、スーパー『3%』」という記事は、アリマンタシォンの買収提案がでたのは、セブン&アイHDの株価低迷にあるという主張です。足元の時価総額は、各事業の価値を積み上げた額を2割下回るそうです。事業価値合計から利子負債(2.21兆円)を差し引いたものが株主価値合計(6.39兆円)です。セブン&アイHDの8月23日時点の時価総額は5.32兆円なので、株主価値合計から17%割り引かれているのです。少なくてもセブン&アイHDの株価は17%以上高くなる必要があるのです。このように株価が低迷している状況で円安なので買収提案が出たのではないかという内容です。
④「セブンの買収額8兆円でも成算」という記事では、アリマンタシォンの買収の狙いは「食品部門の強化」にあると断言しています。そして、いろいろな指標を分析すると、たとえ買収に8兆円かかってもメリットが大きいと判断しています。買収資金は、社債などの有利子負債で調達するのかもしれないし、「ケベック州の年金基金が資金の出し手になる可能性もある」と述べています。
4つの記事を簡単に紹介しましたけど、どうやら世界の企業との比較では日本企業の株価がまだまだ安く、その上、円安なので、今後、日本の有力企業はM&Aの標的にされやすい可能性が高いようです。自社の株価を十分に高くすることがM&Aの対象にならない近道のようです。難しい時代になってきました。
(2)「アリマンタシォン・クシュタール」ってどんな企業?
セブン&アイHDに買収提案しているカナダの「アリマンタシォン・クシュタール」ってどんな企業なのでしょうか?
アリマンタシォンは1980年にカナダのケベック州にコンビニ1号店を出店しました。その後、カナダで「クシュタール」ブランドで店舗網を広げてきました。
2001年には、アメリカに進出し、2003年には「サークルK」の運営会社を買収し、2017年にはアメリカでコンビニと給油所を数百店展開していたホリデーステーションストアーズを買収しました。ヨーロッパでも2023年フランスのエネルギー大手のトタルエナジーズから給油所を約5000億円で買収したと発表しました。
現在、31カ国・地域で1万6000店超まで増やし、アメリカのコンビニ市場の店舗数シェアは3.8%とセブン&アイ(8.5%)に次ぐ2位です。売上高は約10兆円でそのうち7割はガソリンスタンド関連が占めています。
このアリマンタシォン・クシュタールは、買収巧者で成長してきているとも考えられます。2020年にはすでにセブン&アイに対して買収提案を一度行っています(セブン&アイが拒否)し、2021年にはフランスのカルフールにたいしても買収提案(フランス政府の反対でとん挫)しています。
今回の世界に8万5千店あるセブンイレブンの運営会社であるセブン&アイに対する買収提案も、役員会が賛同するとは思えないのですが、さてどうなりますやら。
(3)コンビニ、初の2年連続店舗数減少
日本経済新聞社の2023年度コンビニエンスストア調査で国内の店舗数が5万7594店舗と前回調査から0.3%減少したことがわかりました。これで店舗数が2年連続減少となりました。
セブンイレブンは2万1535店舗(前年比0.6%増加)
ファミリーマートは1万6271店舗(前年比1.6%減少)
ローソンは1万4643店舗(前年比0.1%増加)
新規出店数は7%増の1194店舗で前回調査からプラスに転じたのですが、閉店数が17.9%増加の1338店舗と増えました。閉店数は、ファミリーマート(521店舗)、セブンイレブン(445店舗)、ローソン(268店舗)でした。
どうやら国内のコンビニは6万店弱が天井で市場が飽和してきているのかもしれませんね。これからはますます収益性重視になっていくでしょう。
(4)イオン株式上場50年
前身のジャスコが株式上場したのは1974年9月10日でした。上場当時は連結子会社が13社しかなかったのですが、現在は連結子会社が309社に達しています。小売業では国内最大級のコングロマリット(複合企業)になっています。2024年2月期の連結決算では売上高9兆5535億円と上場当時の49倍に達しています。GMS、食品スーパー、ドラッグが国内首位です。
次の50年をけん引するのはドラッグストアだといわれています。同事業の営業利益は10年前に比べ6倍の426億円に達し、全社利益の2割弱を占めるようになりました。利益の伸び率は主な事業で断トツのトップです。傘下のウェルシアHDの売上高は1兆2173億円と首位です。
グループ全体の店舗数は、上場時の約140店から125倍の約1万7000店に拡大しました。1984年にマレーシアで現地法人を構え、今年で海外進出も40年になりました。海外の店舗数は12カ国に1292店舗と全体の1割を占めています。
イオンの利益は、総合金融やショッピングセンター開発などの非小売部門が営業利益の過半数を握る構図が長年続いてきましたが、24年2月には小売部門が営業利益の52%と本業の重みが再び増してきています。
課題としては、GMSの売上高営業利益率が0.8%と低い事、首都圏の店舗網が薄い事、USMHの利益が低迷している事などが指摘されるでしょう。まだまだ解決すべきことは沢山ありますが、時間をかけながらゆっくり解決していくイオンの動向に注目しましょう。
(5)ヨーカ堂、閉店33店舗固まる
ヨーカ堂は23年3月に、26年2月期までに全国の店舗を2割(33店舗)減らすと発表しました。すでに、24年2月には北海道、東北、信越地方の全17店舗を閉鎖し、首都圏でも川越店、柏店、津田沼店などを順次閉店していくことになっています。
残りの閉店する5店舗が明らかになっていなかったのですが、その5店舗は竜ケ崎店、西川口店、川崎港町店、姉ケ崎店、尾張旭店であることがわかりました。
私は、たまにヨーカ堂の船橋店にいくことがあるのですが、ほぼテナントになっています。ヨーカ堂が運営している食品売り場はいいのですが、非食品売り場は寂しい状況で、なくても良いのではないかと思ってしまいます。衣料品だけでなく、非食品売り場から撤退するのかどうかも意思決定する必要があるのかもしれません。
(6)ドラッグストアの再編
ドラッグストア業界の再編は、とても注目されています。27年末までに、ウェルシアHD
とツルハHDが統合します。存続会社はツルハHDになり、同時にツルハHDはイオンの傘下にはいることになります。
このようになるとクスリのアオキが注目されます。イオンがクスリのアオキの株式の9.98%を所有し、ツルハが5.13%所有しています。合計でイオンは15.11%所有することになります。これにオアシス・マネジメント所有の5.5%以上の株式をイオンが購入するという事になれば、クスリのアオキもイオン傘下にならざるを得なくなるでしょう。
また、アインHD(調剤薬局を1200店展開)の株式をオアシス・マネジメントが15%所有しているので注目されています。アインHDは約8%出資しているセブン&アイHDと関係強化に動いているそうです。セブンイレブンとの協力関係を模索しているようです。ただ、セブン&アイが調剤薬局に興味を持つのかどうか、疑問な点もあります。オアシス・マネジメントがどこに15%の株を将来売却するのかが注目の的ではないでしょうか。果たしてアインHDはどうなるのでしょうか?大いに注目されます。
(7)ダイソー、アメリカで1000店体制は実現するのか?
ダイソーは、国内で100円ショップのシェアが6割を超えています。そのため、ダイソー(3790店)の他に「スリーピー」(451店:価格帯300円中心)、「スタンダードプロダクト」(100店:価格帯300~1000円)を展開しています。国内は、そろそろ飽和状態です。
そのため、インド、アメリカなどに進出しています。特に、アメリカに期待しています。アメリカでは1.75ドルで販売しているのですが、小さいサイズの雑貨や日本の菓子が人気です。キッチン用品も意外な売れ筋になっています。そこで、24年からドジャースのスポンサーになりました。知名度を高める施策をしながら、その一方で、円安の中、「梱包材を小型に」「印刷カラー数も削減」「一部商品は容量減」「商品情報の紙シール廃止」を徹底してきています。たとえば、台所で使うお玉セットはパッケージ面積を8割減らし、積載効率も5割改善しました。このような小さな努力を積み重ねて、円安に対抗しています。
この円安への対抗努力・工夫の積み重ねで、アメリカのダイソーはある種の自信を持てたそうです。現在、西海岸中心に130店を展開しているのですが、31年2月期までに1000店体制にする目標を掲げています。是非、達成して欲しいと思っています。
3,消費財メーカーについて
(1)加工食品、6割の商品種類で品目数を削減
2019年度から2023年度までの販売実績のあった商品の種類の品目数について調べると、食品・飲料では全127種類のうち72種類の商品で品目数が削減しています。日用品では52種類の商品の内17種類の商品で品目数が削減しています。
消費者は常に目新しいものを欲しがりますし、スーパー・コンビニも常に新しい商品(品目)を求めますので、その要望に対応するとメーカーが作る品目数はどんどん増えています。そんな状況で原料高になりましたので、各メーカーは品目ごとの採算を考えて、生産を止める品目数を増やしています。そうすることによって利益率が改善します。
だいたい魚肉ソーセージ344品目(種類)とか制汗剤1194品目(種類)とか必要ないですものね。この商品数(品目数)の見直しは、優秀なメーカーほど毎年行っているものです。
(2)公正取引委員会、日清食品に警告
日清食品は、即席麺の希望小売価格を2022年6月に5~12%、23年6月に10~13%引き上げました。その際、同社は、社内で共有していた店頭価格の目安も改め、スーパーやドラッグになど全国の小売業者に改定後の価格で売るように要請したそうです。その上、要請を受け入れるまでセール時の卸売価格の値引きには応じられないと示唆したり、セール時についても同社が決めた価格で販売する事を条件に卸売価格の値引きに応じていたそうです。
そのため、公取は「カップ麺の店頭価格を指定した水準まで引き上げるように小売業者に要請したのは独占禁止法違反(再販売価格の拘束)の疑いがあるとして、22日、日清食品に警告しました。」
この警告を無視すれば、独禁法違反として処分されることになります。
4,その他
(1)海外企業による日本企業「大買収の時代」
カナダのアリマンタシォン・クシュタールからセブン&アイが買収提案を受けたのは衝撃的でした。今まで、買収というと、日本企業が海外の企業を買収するという事が多かったのです。この20年間で言えば、日本企業が海外の企業を買収したのは1万535件(買収金額136兆円)で、海外の企業が日本企業を買収したのは4226件(買収金額42兆円)だったのです。
今回のアリマンタシォン・クシュタールの買収提案は、海外でもとても注目されていて、同業の日本の企業を買収できないか、検討を始めた企業が多いと言われています。円安で日本の企業の株価が低いので、買収の大チャンスのようです。たとえば、トヨタ自動車の時価総額は約42兆円なのですが、テスラの半分以下なのです。テスラが日本の自動車メーカーを買収するなんてこともあり得るのかもしれません。
今回のアリマンタシォン・クシュタールの提案は、海外企業による「大買収時代」の到来を予感させます。どんな大企業でも買収されるリスクが出てきています。株価を高める事が買収リスクを低くする唯一の道かもしれません。経営者は、経営効率を高めて株高経営を実現させていくしかないのかもしれません。
なお、8月5日の日本株の歴史的急落の時に、株を積極に買っていたのは「アクティビスト(物言う株主)」たちだったそうです。企業経営はますます難しくなってきていますね。
以上