「流通雑感 臨時号NO.13」2025年 4月20日
「流通雑感 臨時号」は、住谷ゼミのOBOGの皆さんに読んでいただこうと思って発行するものです。
《近況》
*春は、桜や花がいたるところに咲き、気持のいい季節です。
*今年は、毎年楽しんでいる近所のグリーンハイツの桜の他に、鎌倉に宿泊して、鎌倉の桜を楽しみました。ただ、あまりにも観光客が多く、驚きました。また、海外の方が半数を占めていて、改めて海外からの観光客が多い事を実感しました。長谷寺観音像も鎌倉大仏も本当に外人が多くて驚きました。
*下旬には、東北三大桜を見に行きます。それを今は楽しみにしています。
*左親指が腱鞘炎になってしまいました。左の親指と手首を固定するようにしながらリハビリに通院しています。GWの終わり頃にはよくなるといいのですが、難しいかもしれません。
1.社会・消費者について
(1) 推ししか勝たん
(2) キダルト市場拡大中
(3) 私立大学、2割は経営困難
(4) 首都圏の介護が深刻
(5) 訪日客1~3月で1000万人超
2,小売業について
(1)2024年度の百貨店の店舗別売上高ベスト5
(2)セブンイレブンの今後の戦略
(3)地方小規模スーパーの生き残り策の一つは「非効率」
(4)書店のない市町村、4分の1
(5)ウエルシアとツルハが2年前倒しで経営統合
(6)ローソン、好業績
3,消費財メーカーについて
(1) ワールドの事業多角化が面白い
4,その他
(1)餃子の王将、15期ぶり最高益
(2)チャーハン、原価の高騰
(3)ワイン離れ進む
1、社会・消費者について
(1)推ししか勝たん
推しという言葉は2016年ごろから定着しました。社会学者の中山淳雄氏は「内的な感情が中心の『萌え』から、体験型・共有型の外的な『推し』へと楽しみ方が変化し消費の活性化につながっている」のだそうです。
20代以下の64%、30代の44%が「複数の推しがいる」と回答しました。押しがいる人のうち、30代以下は平均で年間20万円を投じています。40代以上の平均額は7万円程度で、約3倍の差がついています。
アニメやアイドルなどの関連市場の規模は24年度に1兆円となる見通しだといいます。1兆円の売上高は、パンや宝飾品に匹敵します。グッズ購入、ライブへの遠征費用などの合計が1兆円という事でしょうか。
推しがいる人は可処分時間の39%を使い、可処分所得の37%を投じているそうです。東北大学の滝靖之教授によると「ワクワク感でドーパミンが分泌され、幸福感が高まりストレスレベルを下げる効果が推し活にはある」のだそうです。
「SNSが普及し、推しは身近な存在であると同時に永遠の存在である」のだそうですから、まさに「推ししか勝たん」なのです。
(2)キダルト市場拡大中
キダルトという用語は、「子供の心を持った大人層」という意味です。大人が子供の心で楽しむことを言うそうですが、そういうことがあって自然なように感じます。特に男性は。
例えば、タカラトミーのダイカスト製ミニカーの「トミカ」。55周年を迎え、記念モデルを発売していますが、中でも大人向けプレイセットが驚異的な売れ方を見せているそうです。その一つがトミカをレイアウトできる「tomica GARAGE」です。高級住宅街でよく見かけるシャッター付きのガレージのミニチュアで、電動で開閉し、開くと照明が点灯します。マニアは、ガレージの内装や床を改装し、実車では高くて買いにくいランボルギーニやフェラーリなどのスーパーカーを並べ、夢のガレージを作り上げます。そして、SNSで発信して楽しむ訳です。スマホでの撮り方によっては本物のように見えるので楽しいかもしれませんね。
文鎮。コクヨは本の開いた形に合わせた、鳥が飛んでいるようなデザインの文鎮を開発しました。その名も「本に寄り添う文鎮」。24年に発売すると子供もさることながら社会人にヒット。価格もスチール製で2000円以上するので、大人買いに向いているようで、累計販売数は7万本を超えました。これもスマホで撮って、SNSにあげるのだろうな~。
今は、何でもスマホで撮って、友人知人に見せて、その反応を楽しむという時代なので、そのことを意識して製品開発すればもっとこのようななヒットは生まれそうですね。
(3)私立大学、2割は経営困難
日本には、私立大学を運営する571の学校法人があります。23年度の収支状況などから私立大学の経営状況を分析したところ、「正常状態」だったのは278法人(49%)でした。「自力での再生が極めて困難」な法人は17法人(3%)でした。この17法人はいずれ吸収合併されるか自主廃業で消えるでしょう。「経営困難」な状態なのが119法人(21%)でした。この119法人をどのようにして救済するのか、あるいはなるように任せるのか、その点が一番の問題のようです。
24年度の入学者が定員割れした4年生の私大は全体の59%にあたる354校でした。まずは定員割れを防がないといけないのですが、どこも推薦入試とか学校推薦とかいろいろな推薦入試をすでにやっていますので、定員割れを防ぐのも難しいのかもしれません。
日本は、大学が多すぎるのです。少子化を契機に必要のない大学は消えていただくのも良いことかもしれません。もちろん、この意見は極端すぎるのかもしれません。
(4)首都圏の介護が深刻
総務省の人口推計によると、首都圏(1都3県)は65歳以上の高齢者が4人に1人を占めました。65歳以上の高齢者が939万人、そのうち75歳以上は546万人(58%)になります。後期高齢者とよばれる75歳以上の人口が5割を超え、増えているようです。
ところが介護職員が不足しているのです、東京都7.6万人の不足、神奈川県5.2万人の不足、埼玉県4.4万人の不足、千葉県3.9万人の不足。こうなりますと家族が介護しないといけません。そのため、過去1年間に介護・看護のため離職した人は全国で10万6000人にのぼります。働きながら介護にかかわる「ビジネスケアラー」も30年には318万人(20年56万人)になると予想されています。
なかなか深刻な問題です。介護職員は賃金が安く、重労働でストレスが多いと言われています。そのため、介護職員の方が急速に増えるとは思えません。また、いろいろな本や雑誌・ニュースを読んでいますと要介護2までなら、介護保険を使いながら自宅で生活できると言われています。私のような高齢者は、まずは要介護にならないように体を動かす事でしょうか。
(5)訪日客1~3月で1000万人超
日本政府観光局によると、3月の訪日客数は349万人でした。1~3月では1053万人と初めて3か月間で訪日客数が1000万人を超えました。訪日客を国別にみると、1位が韓国の250万人、2位が中国の236万人、3位が台湾の162万人でした。訪日客の消費額は1~3月で2兆2720億円でした。1人あたりでみると消費額は22万2千円です
これだけの外国からの観光客があり、消費額があると、ますます外国からの観光客を大切にし、魅力的にしていかないといけないような気がします。ただ、観光地は本当に外国からのお客さんが多いです。驚くほどです。これが望ましいのかどうかは、また別のような気がします。
2,小売業について
(1)2024年度の百貨店の店舗別売上高ベスト5
1位:伊勢丹新宿本店:約4100億円
2位:阪急本店:約3600億円
3位:JR名古屋タカシマヤ:2136億円
4位:高島屋大阪店:約2070億円
5位:高島屋日本橋店:約1670億円
異変は、西武池袋本店がベスト5に入っていない事です。周知のように、そごう・西武がアメリカのファンド傘下になり、家電量販店「ヨドバシカメラ」の出店に伴う改装工事が始まっています。そのため、営業面積が減少しており、24年夏以降は前年同月比で半分以下の売上となる月も出たそうです。西武池袋本店の24年度の売上高は約1400億円で、全体の第8位です。
また、関西圏の百貨店の売上高が好調でした。訪日客の来店が多かったようです。24年の大阪市の百貨店の売上高は前年比14.2%増でした。
それにしても伊勢丹新宿本店と阪急本店の安定した強さが目立っていますね。
(2)セブンイレブンの今後の戦略
セブン&アイHDは、9日、2026年2月期の連結営業利益が前期比1%増加の4240億円になりそうだと発表しました。売上高にあたる営業収益は10%減の10兆7610億円を見込んでいます。純利益は、前期に計上した特別損失の影響が小さくなり、47%増加の2550億円となる見通しです。
国内コンビニ事業は、今期、営業利益を5%増加の2447億円にする計画です。新規出店は、都心部を中心に623店と高水準の出店を続けます。①24年秋に始めた低価格商品「うれしい値!」➁ドーナツや焼き菓子、入れたて紅茶などレジ横商品の品揃えを強化して集客を図る、➂PBの売上高を1兆5500億円と前期から500億円増やす、以上が今期の主な施策です。
30年度までの長期戦略では、6年間で設備投資やM&Aに3兆2000億円を投じます。①店舗のデジタルサイネージなどに広告を表示するリテールメディアを本格展開します。メーカーからの広告料収入が得られ、店頭の商品の拡販にもつなげたい考えです、➁店内調理への投資を積み増します、➂最短20分で店から商品を届ける「7NOW」を通じて、1店舗当たりの売上高を伸ばします。
堅実な方針かもしれませんが、アッと驚くような新機軸はまったくなく、これでACT(クシュタール)の買収提案に対抗できるのだろうかと不安になってきます。株価はさらに低下していますから困った状況にあります。9日、最大6000億円の自社株買いをすると発表しました。発行済み株式総数の15.4%にあたる4億株を上限に取得するそうです。自社株買いをさらに進めれば、株価も上がるでしょうし、ACTも買収できにくくなるでしょうが。
最近のセブン&アイは、経営のスピード感がないし、新機軸もないので、なんとなく魅力的ではないように感じます。これでいいのだろうかとちょっと不安になります。
(3)地方小規模スーパーの生き残り策の一つは「非効率」
兵庫県に9店舗を構えるヤマダストアー、2024年12月期の売上高は182億円。19年12月期比7割増加で、過去最高でした。ヤマダはいわゆるNBをあまり品揃えしていません。16個入りで2786円の「プリッと海老しゅうまい」(累計で8万袋売上)などこだわりのPBが売りのスーパーマーケットです。「搾乳日まで分かる低温殺菌牛乳」もこだわりの商品です。これらの商品開発が地元の消費者から好評なのです。どうやら既述の2つの商品は大手が真似できない効率の悪い商品のようです。手間暇をかけた「非効率」で差別化するという方法もあるようです。
三善は掛川市の1店舗「スーパーサンゼン」のみです。競争も厳しいのですが、25年2月期の売上高は16億円超。10年で約3割売上高が増加しました。人気商品のひとつが1食1000円の冷凍ラーメンです。掛川市内の人気ラーメン店が開発した商品です。4個入り1992円の冷凍ハンバーグ、20個入りで951円の冷凍餃子など人気商品が数多くあります。地元の人気店が協力して卸しているようです。こんなやり方もあるようです。これもまた協力していただけるようにするための「非効率」の努力があってこそだと思います。
手間暇かけて大手が品揃えできない商品を品揃えする。それらの価値が徐々に消費者に伝われば、価格競争からも逃れることができます。
(4)書店のない市町村、4分の1
24年3月時点の調査によると、書店のない市町村は4分の1を上回ります。これは問題だという事で、24年10月には経済産業省が「書店活性化のための課題(案)」をまとめました。また、ちかく経済産業省は文部化科学省など他省庁と連携して「書店活性化プラン」を打ち出すそうです。
街に書店があって欲しいと個人的には思います。ただ、消費者はそれほど困っているのでしょうか?街には、公民館があって、少ないけど本が並んでいます。市立図書館もあります。場所によっては県立図書館もあります。学校にも図書室があります。購入したい場合にはアマゾンがあります。アマゾンなら自宅まで配送してくれて、本屋で購入するのと同じ値段です。消費者は本当に困っているのでしょうか?
このような消費者視点が「書店活性化プラン」に入っているといいのですが、例によって、RFIDサービスの普及とかを言うだけなら無駄など努力だと思います。
(5)ウエルシアとツルハが2年前倒しで経営統合
ウエルシアHDとツルハHDは、4月11日、12月に経営統合すると発表しました。当初予定を2年前倒しにします。まず。株式交換によってウエルシアはツルハに統合されます。その後、イオンがツルハHDに対してTOBを実施し、50.9%の株式を取得します。このようにして、ツルハHDはイオングループに入ることになります。存続会社名はツルハになります。
規模拡大によって仕入れや物流の効率化などを進めていく予定です。また、PBの統合・再編も進める予定です。
両社の売上合計は、2兆3000億円程度ですが、32年2月期に売上高を3兆円にする予定です。また、営業利益も7%を目標にしています。
経営統合を前倒ししたのは、国内に出店余地が少なくなってきたことと、ネット通販などが医薬品販売に参入してきており、競争激化が予想されるためです。
(6)ローソン、好業績
17日、ローソンは25年2月期業績を発表しました。2月期の連結売上高は前期比10%増加の1兆2000億円程度。2月期の連結純利益は前期比15%増の599億円で過去最高でした。平均日販も57万4000円と1万8000円伸びました。
同時に31年までの中期経営計画を発表しました。最も重視しているのは日販で、現在の57万4000円を70万円超にする計画です。そのために行うのは、KDDIのデータ基盤を活用し、店舗の購買履歴などと組み合わせた商品を開発することです。また自動化ロボットなども活用し、効率化しセブンイレブンを追っていきます。竹増社長は「リアルとテックを組み合わせたコンビニエンスグループに生まれ変わり、圧倒的な美味しさと成長で消費者の期待を超えていく」と述べています。
もうひとつ、現在、海外の店舗は中国、タイ、フィリピンなど5カ国に約7400店舗を抱えていますが、31年2月期をめどに1万4000店舗に増やす計画です。
3,消費財メーカーについて
(1)ワールドの事業多角化が面白い
アパレルのワールドが、衣料品の生産・販売という事業の他にいろいろな事業を展開し始めています。
そのひとつは、衣料品のOEMやODM(製造開発委託)です。三菱商事から三菱商事ファッションを買収し、「エムシーファッション」という会社を作り、各国の生産拠点と連携して、衣料品や雑貨などの商品を調達するのだそうです。現在までのOEMやODMの外部収益は50億円程度でしたが、エムシーファッションの取り込みで700億円程度まで増えると予想しています。
もうひとつが「ワールドプラットフォームサービス」という会社です。ワールドでは、幅広い法人向け事業を「プラットフォーム事業」と呼んでいます。今のところ、この事業の利益は18億円ですが次年度には倍の36億円まで増えると予想されています。具体的な内容は、「菓子販売のシャトレーゼが展開する店舗や商品デザインの監修」、「ホンダの海外アンテナショップの空間デザイン」など多岐に渡っています。
さらに再建ビジネスも行っています。1月にグループ入りさせたカジュアル衣料のライトオン(24年8月期時点で6期連続の赤字)の再建です。このライトオンの再建が再建ビジネスの試金石となるでしょう。
ワールドの事業の多角化がうまくいくのか、興味の尽きないものがあります。
4,その他
(1)餃子の王将、15期ぶり最高益
「餃子の王将」を展開する王将フードサービスが好調です。25年3月期には連結営業利益が15期ぶりに最高益の見通しになっています。25年3月期の営業利益は前期比9%増の111億円。過去3年で5度目の値上げをしても客数が増加しているのです。
「ギョウザのレシピは毎年、少しずつ変えて味の改善がお客様に伝わるようにしている。接客に力をいれるためプロトレーナ―による研修も始めた。清掃にも手を抜かない」と渡辺社長は説明しています。
そのような改善があるのでしょうが、注目すべきは、新型コロナウイルス流行時に投資を増やしたことです。また、コロナの時、ギョウザは持ち帰りに適していたことも奏功したわけです。同時に、FC店がコロナ禍で閉店する中、直営店を増やしました。25年2月末の店舗数は723店。直営比率は76%になりました。19年2月末と比較すると直営店比率は5%伸びました。もう一つが、「ぎょうざ倶楽部」会員向けに割引サービスを相次ぎ打ち出してリピーターを優遇し、強固なファン層を掴んでいることです。
味と接客の改善、そして固定客作りを積極的に行い、直営店を増やしていることが王将フードサービス好調の要因といえるのではないでしょうか。
(2)チャーハン、原価の高騰
チャーハンの原価が高騰しています。コメは約3倍、卵は56%値上がり、ラードは7%の値上がり、エビは4%の値上がり、べーコンは3.4%の値上がり。中華料理の原料の値上がりが続いています。中華料理の価格も、また上がりそうです。
(3)ワイン離れ進む
世界のワイン市場の縮小が続いています。2024年の全世界のワイン生産量と消費量はいずれも1961年以来、62年ぶりの低水準となりました。
全世界のワイン生産量は2億2580万ヘクリットトルと前年に比べて4.8%減りました。消費も24年の全世界の消費量は2億1420ヘクリットトルと前年比で3.3%減りました。アメリカ、フランスでワインの消費量が落ち込んだだけでなく、中国が前年比19.3%減少、日本も4.4%減少でした。ワインの価格が上がったことが嫌気されたのかもしれません。
ワインの好きな私としては、残念な気がしますが、「ワイン離れ」という世界的傾向を知らなかったので、一つ知識が増えた気がします。これは「アルコール離れ」とも関係があるのでしょうか。
以上