流通雑感のブログ

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「流通雑感 臨時号NO.4」2024年7月20日

 

「流通雑感 臨時号」は、住谷ゼミのOBOGの皆さんに読んでいただこうと思って発行するものです。

臨時号とするのは、毎月掲載するわけでもなく、一定量が溜まったらなので、月に1回かもしれませんし、2~3か月に一度くらいかもしれません。その点はご容赦のほどお願いします。現在は、月1回の刊行を目指しています。住谷ゼミのOBOGの皆さんに、少しでもお役に立てたら幸いですし、私の近況もお知らせしたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。

 

・先日、東洋大学から「名誉教授の証」という身分証明書をいただきました。これがあるといつでも大学にいく事が出来るようです。図書館もいつでも使えるそうです。

 

1.社会・消費者について

(1)「生活が苦しい」59.6%

(2)日本版ライドシェアの新展開

2,小売業について

(1)ユニクロの40年

(2)セブン&アイ、49%減益

(3)アインHDがフランフランを買収

(4)ファミペイの中にミニアプリ

(5)マツキヨ、1株当たり利益1.8倍

(6)赤字で販売している卵

3,消費財メーカーについて

(1)ファンケルの化粧品事業

(2)GUCCIが苦境に

(3)花王、「ケイト」に注力

4,その他

(1)「ハルメク」絶好調

(2)「パタゴニア」というアウトドア衣料の会社の考え方

(3)社員が幸せな企業ベスト10

 

1、社会・消費者について

(1)「生活が苦しい」59.6%

厚生労働省が7月5日公表した2023年の国民生活基礎調査によると、生活意識が「苦しい」という回答は全世帯で59.6%でした。高齢者世帯に限ると59.0%で、前年よりも10.7%増えています。過去最高だそうです。子育て世代に限ると「苦しい」という回答は65.0%で9年ぶりの高さだったそうです。

このような調子の悪いニュースはあまり積極的に報道されていないのが不思議です。生活が苦しいという国民が6割なのですから、それを強く意識した政治を行ってもらわないといけません。

(2)日本版ライドシェアの新展開

 私が住んでいる地区では、現在、タクシーの予約ができません。「明日の朝、8時にタクシー1台お願い」と言えば、かつては予約出来ていたのですが、今は、「お客さんの地域は、予約はできません」と言われます。どうやらタクシー運転手が激減していて、明日の朝、何台稼働しているのかわからないためのようです。

2012年に34万人いたタクシー運転手は、2022年度には21万人になっています。10年間で13万人減少したのです。

そのため、「ライドシェア」(一般ドライバーが有償で乗客を運ぶ)が2024年4月から、タクシー会社管理の日本版を導入しました。国交省は、4月にタクシー不足が顕著な地域に限定して営利目的のライドシェアを認めました。果たして、ライドシェアが導入されるのか、あくまで日本版ライドシェア(タクシー会社管理)で終わるのか、現在、とても注目されています。

そんな中、新た動きが始まっています。アプリ開発スタートアップのnewmo(ニューモ)が大阪のタクシー会社(未来都)の全株式を買収したのです。そしてニューモが出資する別のタクシー会社と共同で7月中にも大阪府でライドシェア事業を展開するそうです。そういう手があったのです。これだとタクシー会社の管理下でのライドシェア事業なのでなんの問題もありません。どうやらタクシー会社とIT企業の連携が相次ぎそうなのです。

そんな中、千葉県でもライドシェアが6月8日から始まりました。土日の午前0時から3時台という限られた時間帯のみ運行できるというもので、55台分の運行枠が配分されているのだそうです。これでは希望する運転手さんもあまりいないだろうし、なんだか千葉県もやっていますよと言うためだけのようにも感じられます。実際、希望する運転手さんが少なく、今のところ、千葉県も導入していますというだけの内容のような気がします。

 

2,小売業について

(1)ユニクロの40年

ユニクロが6月に誕生から40年がたったという事でなにかと注目されています。実家の紳士服店を継いだのが1972年。「このままでは将来はない」と考えた柳井氏が出した答えがユニクロでした。ユニクロ1号店は、1984年6月にできました。この当時のユニクロは、「カジュアルウェアの倉庫」というコンセプトでした。倉庫に見立てた店舗に、他社から買い集めたカジュアルウェアを所狭しとならべたのです。これが大ヒット。

しかし、その2年後、香港で見つけた1枚のポロシャツが1500円だったのです。その価格に驚愕した柳井氏はそのシャツの販売元の経営者に会いに行って、香港近郊の縫製工場に生産を委託するSPA(製造小売)という方法で実現していることを知り、柳井氏は、倉庫方式から、自社で服をデザインし、生産委託するという現在の方法へモデルチェンジすることを決めたのでした。「カジュアルウェアの倉庫」で成功した2年後のことです。成功しているのに2年で、自己否定するのは凄い意思決定だと思います。

SPAにしたユニクロは、波に乗り、中国地方から東へと店舗網を広げていきます。そして、悲願であったファッション業界の中心地である東京への進出が98年でした。ユニクロができて14年後のことでした。ところが、そのわずか3年後から英国、中国、アメリカと立て続けに海外進出を果たしたのです。

ユニクロには「3倍の法則」というものがあるそうです。規模が3倍になるごとに10年がかりで戦略転換を果たしてきたというのです。

➀売上高が約3000億円だった2003年から10年かけて1兆円を突破します。3倍強の成長をもたらしたのは海外での成功でした。「日本のユニクロを移植する」という考え方で、日本で優秀な成績を残した若手を次々と海外に送り込みました。

➁さらに10年たった現在、売上高は3兆円を超えようとしています。この間、ユニクロは「情報製造小売業」と呼ぶビジネスモデルへと進化しています。グーグルと提携するなど、異業種の力を借りて需要予測の精度を高めるなどデータの力とりアル店舗の融合を図る試みを続けています。

➂柳井氏は、次の目標を売上高10兆円に置いているそうです。ただ、柳井氏も75歳なので、「柳井だのみ」から「チーム経営」に転換が必要だと言われています。

 ユニクロの歴史は、とても興味深いものがあります。「ユニクロ」について書かれている本も沢山売られていますので、そのような本を読むのも楽しいと思います。

(2)セブン&アイ、49%減益

このニュースには驚きました。2024年3月~5月期の3か月間の連結決算で、純利益が前年同期比49%減少の213億円だったというニュースなのです。売上高は3%増加の2兆7347億円、営業利益は28%減の593億円でした。連結営業収益(売上高にあたるもの)の7割を占める海外コンビニ事業が不振だったそうです。同事業の営業利益は44億円と前年同期比79%減少だったそうです。

私がニュースで一番驚いたのは、国内事業の既存店の売上高の伸び率が、3~5月期は、セブンイレブンはほぼ前年同期並みだったことです。それに対して、ファミリーマートとローソン(1.8~3.7%増加)は前年同期比で増加してることです。この臨時増刊号NO2でファミリーマートの好調さについて書きましたが、どうやらセブンイレブンの無形の資産(お惣菜ならセブンが一番おいしいとかパンならセブンが一番おいしいといったかつての消費者のプラスの評価)がなくなりつつあるような気がするのですが、皆さんはいかがお感じでしょうか?

これから国内のコンビニ事情は変化していくかもしれませんね。そんな予感がする今回のニュースでした。

(3)アインHDがフランフランを買収

調剤薬局として著名なアインHDがフランフランを買収するというニュースには驚きました。①調剤薬局の経営が不安定・・・アインHDが注力してきた医療機関と同じ敷地で営業する「敷地内薬局」は2年ごとの調剤報酬改定のたびに報酬が引き下げられてきているそうです。そのため、収益性の不安定さがあるのだそうです。➁そのため、化粧品主体のドラッグストア「アイン&トルぺ」を展開しているそうです。「アイン&トルぺ」は東京など都市部を中心に83店舗あり、売上高は311億円です。

アインHDは、「アイン&トルぺ」を含めて、小売事業を28年4月期までに1000億円にする計画を持っており、「アイン&トルぺ」と顧客層が共通する「フランフラン」の買収に乗り出したそうです。フランフランの売上高は23年8月期で394億円。単純合計すると、両社で700億円になります。

もしかしたら、将来的には、「アイン&トルぺ」と「フランフラン」の複合業態を開発するのかもしれません。アインHDは調剤薬局として安泰だと思っていたものですから、少し驚きました。

(4)ファミペイの中にミニアプリ

ファミリーマートは、ファミペイの中にメーカーが個別に広告や割引クーポン、ゲームなどを配信できる「ミニアプリ」を立ち上げます。広告代理店を挟まずにメーカーとファミマが直接契約します。24年度は約10社と手を組み、3年後をめどに30社程度までに増やす方針です。11月をめどにファミペイの購買データとメーカーの情報の連携を始めます。

 ファミペイの利用者が来店すると、メーカーの広告やクーポンをスマホ上でプッシュ通知します。約1万店に設置しているデジタルサイネージでもアプリの広告と連動したコンテンツを配信します。

 ファミマのミニアプリはメーカー側から利用料を得る仕組みです。28年度にはリテールメディア事業で税引き後100億円の利益を目指します。ウォルマートのグローバル広告事業の売上高は24年1月期で前年同期比3割増加の34億ドル、約5000億円でした。リテールメディアを重視する傾向は世界的なものです。日本では、ファミリーマートがリードしているようです。

(5)マツキヨ、1株当たり利益1.8倍

マツキヨとココカラが統合して3年が立ちます。マツキヨHD時代の21年3月期と比べ、マツキヨは24年3月期で、1株当たり利益は79%増加しました。営業利益率は7.4%と1.5%ほど伸び、純利益は2.4倍の523億円となりました。時価総額は23年3月に初めて1兆円の大台に乗り、経営統合前のマツキヨHDの2倍近い水準で推移しています。

ココカラファインも、マツキヨの運営方法を取り入れたりして、営業利益率は24年3月期に7.5%と統合前の2倍以上になりました。

経営統合して、両社とも業績を伸ばしているのですが、課題もあるそうです。

➀「薬剤師、登録販売者ら調剤や大衆薬を扱える資格者の存在が競争力の源泉となるのですが、それらの従業員をどうつなぎとめていくのかが最大のハードル」だと経営企画担当の石橋氏は述べています。

➁マツキヨは化粧品、ココカラは調剤とそれぞれの強みを持っているのですが、両方の店舗を使ってもらえようにはなっていないことです。お互いの送客をどのように実現していくかも今後の課題です。

(6)赤字で販売している卵

6月の大手スーパーの卵の店頭価格の平均は1パック(10個入れ)245円です。でもコストは平均で282円なので、1パック売るごとに37円の赤字になっています。ご存じのように卵と牛乳はスーパーに来る人のほとんどが購入する商品です。そのため、競合もあって、282円以上で販売できないようです。

1個当たり28.2円で販売すると収支トントンなのですが、そのコストの主なものは、➀エサ代;1個当たり13.4円で生産者の段階のコストは、1個当たり17円。➁運賃:1個当たり1円、その他のGPセンターのコスト、➂小売店のコスト:1個当たり4.9円なのだそうです。

卵は栄養価も高いですから、我々はありがたくいただかないといけませんね。

 

3,消費財メーカーについて

(1)ファンケルの化粧品事業

ファンケルの祖業の化粧品事業は、24年3月期で、売上高は612億円。ファンケルの売上高全体の55%を占めています。現在、全国に約160の直営店があり、美容部員1100人が働いています。この化粧品事業を買収するキリンがどうするのかに注目が集まっています。

磯崎功典会長は、「今後の化粧品事業について「シナジーどころか生命線だ」と述べていますが、化粧品事業はキリンの事業と距離があるため、シナジーは容易ではないと思われます。磯崎会長は「私は、化粧品は離さない。東南アジアでは美容へ関心が高く、健康食品と化粧品の二本足で攻められる」と述べています。

ただ、磯崎会長が退いた後はわからないのではないでしょうか?場合によっては、化粧品事業は売却という意思決定もあるかもしれません。キリンは果たして将来、ファンケルの化粧品事業をどうするのでしょうか?注目されます。

(2)GUCCIが苦境に

GUCCIを展開しているフランスのケリング社が苦境に立たされています。GUCCIが最大市場の中国で低迷し、アウトレット店での値引き販売がブランド価値を損なっているようです。時価総額は、かつて同水準だったフランスのエルメス社の6分の一に沈みました。19年6月のケリング社の時価総額は約10.4兆円で、エルメスの時価総額10.9兆円とほぼ同じだったのですが、24年6月にはエルメスが3.5倍になっているのに、ケリング社は4割も減ったのです。

全体の約半分を占めるGUCCIの売上高は24年1~3月期に前年同期比21%減少しました。4四半期連続の減収です。全体の約35%を占めるアジア太平洋(日本を除く)地域の苦戦が響いています。中国では、「高級ブランドを選別する動きが強まっているそうです」。バーキンのように再販売価格が高い超高級品の需要は旺盛ですが、GUCCIはアウトレット店などで安売りし、ブランド価値を毀損しているようです。なお、エルメスやLVMHなどは型落ちなどのアウトレット品を販売していません。

そのため、在庫も膨らみGUCCIの棚卸し資産回転日数は354日と85日も伸びています。

GUCCIも23年に8年ぶりにデザイナーを交代し、ブランドイメージを再構築しています。たとえば、一目でブランド品とわかるロゴを強調するのではなく、あえて控え目にした「クワイエットラグジュアリー」などの流行を取り入れています。同時に、日本やアジア市場のアウトレット店や一部店舗も閉鎖します。5月には栃木県佐野市の佐野プレミアム・アウトレットから撤退しています。

ブランド品の元祖とも言われるGUCCIは再び輝きを取り戻すでしょうか?一度落ちたブランドイメージを回復させるのは一般的には難しいのではないでしょうか?

(3)花王、「ケイト」に注力

花王は、渋谷駅前の複合ビルに「ケイト」(若者向け低価格コスメ)の旗艦店をオープンします。人気の口紅「リップモンスター」を、ネット限定品を含めて全色試すことができます。また、AIで顔の印象を分析し、マスカラの最適商品を提案します。

花王の化粧品事業は、連結売上高(1兆5325億円)の約15%を稼いでいます。ただ、カネボウとの買収後、融合に時間がかかり、07年3月に2900億円の売上高だったのが、2023年3月には2386億円と減少しています。そのため、化粧品のブランドの統廃合を進めています。「コフレドール」や「オーブ」は年内に販売を止めます。

独自の成長戦略として力をいれているのが「ケイト」です。ケイトは、口紅やアイシャドーなど多様な色で顔を彩る「メーキャップ」に特化しています。いわゆる「セルフ化粧品」です。ドラッグストアが販路の中心です。価格は1000~1500円です。

2021年に発売した「リップモンスター」は大ヒットし、累計出荷本数は2200万本を突破しています。セルフ化粧品の口紅におけるシェアで3年連続1位です。

ケイトの年間売上高は300億円強とみられていますが、30年に1.6倍の500億円程度に引き上げようとしています。そのため、台湾、マレーシアなど9カ国ですでに販売しています。台湾では、大衆向け市場で口紅とアイシャドーはすでにシェア1位です。

渋谷に旗艦店を設けて、情報発信を強化し、アジア全体でもメーキャップの分野でシェア1位を狙っているようです。花王の化粧品分野では珍しく成功している例です。楽しみですね。

 

4,その他

(1)「ハルメク」絶好調

「ハルメク」という月刊誌があります。販売部数は45万部(6年で3倍になった)を超えました。女性誌で首位です。この雑誌は通販で販売されています。読者層は、50歳代、60歳代、70歳代の女性です。ファッションから生き方までシニアの「お役立ち情報」のみをわかりやすく掲載しています。

毎号、2000枚ほどの読者調査を分析し、読者に会社に来てもらって面談する事もとても多いのです。そして、加齢に伴う不安への解決策を示すにはどうすべきかを考え抜くのです。誌面作りには通常の月刊誌の2倍の6か月をかけています。

熱心な愛読者が多く、通信販売を手掛けたら、利用者数は年間135万人。シニア向けでは国内最大になっています。今や、売上高の9割は通販です。雑誌と通販で、「ハルメク経済圏」を作りましたので、いろいろな企業から連携の依頼が来ています。ますます発展していきそうです。

(2)「パタゴニア」というアウトドア衣料の会社の考え方

パタゴニアは「地球を救うためにビジネスを営む」という独自のESG(環境・社会・企業統治)経営を貫いています。その会社のライアン・ゲラートCEOは、インタビューで次のように答えています。

・「成長を重視する会社ではなく、この規模に達したいとか、この速度で成長したいとか言ったことは一度もない。完璧ではないが、でき得る最高の製品をつくることに集中したい。」

・「品質とは環境問題であり、社会問題である。環境への影響を抑えて製品をつくり、長く使えるように考える責任だ。品質はパタゴニアのあらゆる側面を支配する哲学といえる。」

・「すべてのアパレル企業が消費至上主義を見直し、人々に必要のないものを買わせる精神構造と思考を変える必要がある。現在のファストファッションビジネスモデルの正反対だ。」

・「高品質は正当化される。製造方法、製造する人に対して果す責任、使用素材、耐久性等、すべてを考慮すれば答えはおのずと明らかになる。多くの機能を備え、長持ちする製品を買う方が、使い捨ての長持ちしない製品を幾つも買うより経済的だ。」

 とても個性的な企業ですね。でも、このような社会的に支持される理念がまずあって、それに基づいて経営する個性的企業が増えていくような予感がしています。

(3)社員が幸せな企業ベスト10

「社員が幸せな企業」ベスト10

1,ソニーグループ

2,スターバックスコーヒージャパン

3,サイバーエージェント

4,ジョンソン・エンド・ジョンソン

5,アクセンチュア

6,LINEヤフー

7,湘美会

8,リクルート

9,オルビス

10,      アダストリア

「中年が幸せな企業」ベスト10

1,楽天グループ

2,アクセンチュア

3,LINEヤフー

4,トヨタ自動車

5,ソフトバンク

6,リクルート

7,ユニクロ

8,東京海上日動火災保険

9,アマゾンジャパン

10,      日本IBM

どうしてこのようなランクになったのかはわかりませんが、「社員が幸せな企業」でなおかつ「中年が幸せな企業」のベストテンに両方入っているのは、「アクセンチュア」「LINEヤフー」「リクルート」の3社なんだな~と思った次第です。この3社の共通点ってあるのでしょうか?調べてみるとおもしろいのかもしれません。

                                      以上