上記の「会社は社員の心身の健康に注意義務を負う」という文言は、平成3年に、とある超有名広告代理店の社員が過労自殺したときの、最高裁の判決文の文言です。これは、極めて当たり前の判決であり、その会社はこの時も、最高裁から注意を喚起されているにも関わらず、一向に社員の心身の健康などには一切注意を払おうとせず、相変わらず社員を無茶苦茶な労働環境に置き放しにした上で、あたかも健康管理は自己責任であるかのごとくに無責任な態度を取り続けて来たわけです。
そして、その後も何人もの過労死や過労自殺者を出しておきながら、誰も何も責任を取らないまま無責任体質は放置され、先日の女性の過労自殺事件が起こりました。
健康管理は、自己責任と言いながら、会社側が社員に対して健全な勤務体制が取れるような施策をせずに人員配置もせずに、長時間労働が行われていることを知りながら放置していたということは、会社側が「社員の心身の健康の注意義務」を果たしていないどころが、むしろ暗黙の内に「社員が心身の健康を損なうような労働環境」に置いたのも同然で、これがアメリカであれば社員からの訴訟だけであの会社はあっという間に破産していたと思います。
日本人はお人よし過ぎであり、そのような過酷な労働環境に置かれながらも、企業の責任を問わずに自分を責め続けたりするので鬱になったり自殺したりしてしまうのだと思います。
上記の会社の様な極めて無責任で、ある意味とてつもなく悪質な会社は、アメリカならばpunitive damage といって懲罰的損害賠償というもので、何百億円という損害賠償が請求されることに成ります。
懲罰的損害賠償とは個人が受けた損害だけでなく、社会的に許されないことをしている企業に対して社会的な制裁をするためのもので、会社の規模に応じて、その会社にとって相当の痛手となる額を支払うように裁判所が命令するわけです。
有名なところでは、マクドナルドのコーヒーが熱すぎて火傷をしたという訴訟で、やけどをした本人に対する賠償に加えて、上記の懲罰的損害賠償が加算され、結局マックは100億円もの損害賠償を払う事になったことがあります。
上記の件はアメリカの裁判制度のやり過ぎ具合の象徴的事件になっていますが、コーヒーで火傷するのは常識的にも本人の責任だと考えるのが当たり前ですが、アメリカではそれでも企業に注意を喚起する意味で100億円もの懲罰的損害賠償を支払わせるのです。
それが、上記の広告代理店の場合は最高裁から再三注意を受けていたにも拘らず、全て無視して全く企業体質を変えようともせずに、社員を過剰労働をせざるを得ないような環境に置きっぱなしにし、そのせいで、何人もの社員が過労死や過労自殺をするに至ったことに対する企業としての責任は重大であり、その社会的制裁として相応しい懲罰的損害賠償の額は、熱いコーヒの責任が100億円なら、おそらく5000億円は下らないと思います。
上記の大手広告代理店は、自分たちがそれ程罪深いことをしているのであり、企業としては極めて無責任な儲け主義一点張りの悪徳企業に成り下がっていることを自覚すべきであると思います。
そもそも、上記の有名な広告代理店に限らず、従業員を慢性的に過酷な労働環境に置き放しにして何らの改善策もとろうとしない企業は、この日本には腐るほどあります。
全国民の殆どが何処かの企業の従業員であることを考えると、従業員の心身の健康と福利に注意を払わず、結果的に従業員に肉体的・精神的なダメージを与えるような企業は、社会の敵であり、反社会的な組織であると認定されるべきだと思います。
そして、法的にももっと従業員の心身の健康と健全な勤務体制を厳格に保護させるような法整備をすべきであり、上記の大手広告会社のような働き方は法律的にも全面的に禁止されるようにするべきであると思います。
何度も言いますが、この世の中の殆どの人はどこかの企業の従業員であることを考えると、企業の従業員が手厚く保護されることこそが、全ての人々が手厚く保護されることに繋がる訳であり、それ以上に優先されるべきことは何一つないということです。
収益の関係で従業員に手厚い保護が出来ない会社などは潰れれば良いのです。従業員を保護できる会社だけ生き残ればいいのです。何故なら、従業員を手厚く保護できないような会社は存在する価値がないからです。企業が従業員の生活を犠牲にしてまで、存在し続け成ればならない理由などないからです。株主が損をするかもしれませんが、株主の利益のために従業員の生活が犠牲になるようなことがあっては絶対にならないと思います。
所が、現在の状況は正にそのあってはならない状況がまかり通っている訳です。株主の利益のために従業員の給料は減らされ続け、正社員はもっと給料の安い非正規社員に置き換えられ、非正規社員は永遠に貧困状態から抜け出せなくなっています。
すべては、企業の存続のため、と言いながらその実は株主の利益を充分に確保するために、従業員にギリギリの生活を強いているだけです。そして、ひどい場合は従業員を過労死や過労自殺にまで平気で追いやる企業まであるにも関わらず、それらの企業は何らの社会的制裁も受けずに、平然と同じ勤務体制を今も続けているのです。
日本人は自分に厳しく人に優しいというのが、特筆すべき美徳の一つですが、上記の様な悪徳企業はそのような日本人の美徳を逆手にとって、それに便乗し、それを利用して従業員を酷使しながらぼろ儲けしているに過ぎません。
今こそ、全国の日本人は、生真面目すぎるお人よしの性格で自分ばかり責めるのをやめて、それに都合よく便乗している悪徳企業の化けの皮を剥がして、一刻も早く全ての従業員が企業から手厚く保護され、今や全世帯の6分の一とも言われる貧困家庭を無くし、親の貧困のせいで惨めな生活を強いられている子供達に明るい笑顔が戻ってくるにように我々一人一人が声を上げるべき時が来ていると思います。