教育について考えを巡らせている。
多様な価値観、という言葉がよく聞かれる。子供達に単一の価値観を押しつけるのではなく、それぞれの個性に応じた価値観を認めていこう、といったようなコンテクストで使われているようだ。
では、多様な価値観とはいったい何なのだろうか。
昨今の報道を見ていると、「勝ち組」と「負け組」という視点で社会が捉えられている。しかし、その勝ち負けの判定にはただ「カネ」という物差しがあるのみで、非常に浅薄である。そこには人生における多様な価値観などはまったく窺えない。人生にはもっと色々なオプションがあるはずなのに、金を稼ぐことのみを良しとする。
そういう社会風潮は、教育にも悪影響を免れ得ない。何も、復古趣味で教育を行えば良いという訳ではない。昔には昔で悪いことはあった訳で、全て昔のままに行うなどということが良い施策にはなり得ない。しかし、昔の良いことを学ばないということはまた、良い施策とはなり得まい。古人の知恵に学ぶことは多いはずである。西郷隆盛は「左氏春秋を読めば世界情勢が分かる」と言ったという。その言葉には大きな意味がある。まさに「温故知新」である。
そのために、できるだけ古人の書いた文書を原著で読ませるのはどうだろう。先日、古典をたくさん読ませるべし、と書いた。できれば通読させると面白い。特に徒然草などは、非常に興趣深い。通読して、味わわせてみたら面白いだろう。
いずれにせよ、結局は古典の時間を増やしては、という結論に至るのでした。