ひとりごと0068(番外028 シルバーカーのお婆さん) | 林住期さんのひとりごとブログ

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林住期を生きるおっちゃんの不定期なひとりごとです。

シルバーカーのお婆さん

 

1年前までは本社勤務で、

通勤は電車がメインでドアツードアで片道ピッタリ2時間。

ほんとに痛勤でした。

ただ、おかげさんで定期券で、余分な出費なしに実家には行けましたので助かってました。

母は諸事情により、都会に一人暮らしです。

 

3年ぐらい前の、ある土曜日に実家に顔出しして、その帰りの時の話です。

暖かな日差しの中、のんびりと駅へ向かっていました。

乗車するホームは線路をまたいで向こう側。

地下道を通っても良かったんですが、

あまりにも気持ちの良い柔らかな日差しだったので、

電車をやり過ごすこととなってもよいと、

カンカンカンカン鳴っている踏切で立ち止まっていました。

 

何気に、向こう側の遮断機に目をやると、

シルバーカー(老人用手押し車)に手をかけたお婆さんが立っていました。

 

踏切(遮断機)の内側に。

 

え~~~~~~~~~~~~~~~!

 

右側を見ますと、

特急電車がこちらに向かってきているのが見えました。

お婆さんの反対側だから、大丈夫かもしれん。

左側を見ますと、

遠くに普通電車?が見えます。

 

あか~~~~~~~~~~~~~~ん。

 

周りに人はいません。私だけです。

 

お婆さんに、叫びました。

「じ~っと。じ~っとしとりや~!」

しゃがむようにジェスチャーしても

聞えてんのか?見えてんのか?反応がありません。

 

右側の特急が減速しているのが何となくわかりました。

 

もうしゃ~ない。

遮断機をくぐって、下りの線路をまたぎ、上りの線路をまたぎ、

お婆さんを捕まえました。

お婆さんはしゃがめないようでした。

お婆さんを捕まえながらでは、遮断機は重くて上げられませんでした。

遮断機の左右の棒の隙間を利用して出そうと、お婆さんを引っ張っていたところ、

運転士?車掌?駅員が?一人来て、遮断機を持ち上げてくれました。

お婆さんを踏切の外へ出し、ほっとしたところ、もう一人の駅員が来ました。

特急は踏切手前で完全に止まっていました。

 

お婆さんは、

何事もなかったように、

「間に合えへんかってん」

と言って悪びれた様子もなく、

シルバーカーを押して立ち去りました。

 

駅員?たちも、

お婆さんを怒ることも、駅長室に連れていくこともなく、淡々としていて、

「すんませんでした」

林住期さんに言って立ち去りました。

 

そして、

特急も普通電車も通り過ぎ、警報機が鳴り止んだ踏切には、

誰もいなくなりました。

車が通り過ぎるだけでした。

柔らかな日差しの中、林住期さんがただ一人立っていました。

 

林住期さんひとりが、大げさやったん?

何なんこれ。