昨日、就活の方は動きが無いだろうと思い、朝からヴァイオリンの練習でもするかと思っていたら、母親から電話が掛かってきた。


『悪いけど、今日も、荷物を運んでもらいたいんだけど』


「はいはい」


でたよ。引越しの手伝い。

電話をもらって、すぐに母親のところに行き、荷物を車に運び込む。


「でもさ、最後は運送会社に残り頼むんでしょ?」


『頼まないわよ。だから、少しずつ運んでもらっているんじゃない』


「そうですか・・・。後何回分あるですかね」


『4回くらいじゃない?』


この家の中で、普段、歩かないような所に、ダンボールや衣類ケースが山のように積まれている。

こんなにあるのに、まだ、荷物があるんだ。


車に荷物を運びながら、思ったね、捨てなければいけない物がかなりあるんじゃないのかって。

何気に箱の中身を覗いてみると、そこには、見覚えのあるたくさんのおもちゃが入っていた。


「うっ・・・これ・・・」


『ごめんね、これ、どうしても捨てられなくて・・・』


母親が俺の子供と遊んだ時のおもちゃだ。


母親にしてみれば、初孫だった。


その、おもちゃを見ると、忘れかけていた記憶がよみがえる。


もう会う事がない子供と一緒に遊んだ記憶。


なんだか、それを見たら、こみ上げてくるものがある。


捨てられないと言う母親も、辛かったんだなって、改めて思う。

生きていれば、ほんの少しの可能性だけど、向こうから会いに来てくれるかも知れない。

そんな小さな可能性に期待しているのかもしれない。

でも、子供にかかわるものは、正直、俺は見たく無い。

俺はそのまま、蓋をして、車に積み込んだ。


忘れたくても、まだ忘れられない。

それなら、いつになったら、昔の思い出のように思えるんだろう。

子供の顔を最後に見てから今年の初夏で2年。

まだ、時間が掛かりそうだ。