粒子沈降の実験について,よくわからないことが多すぎてなかなか難しい.

今回我々がやっているガラスビーズと水飴を使った実験は,Shibano, Namiki, Sumita(2012) G-cubeの実験が結構良く似ている.幾つか条件は異なるものの,沈殿した粒子層を持つ系をひっくり返して重力的に不安定な液相と粒子層がどのように入れ替わっていくのかを観察しその機構について議論している.概念図(Fig.1).

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この実験では,粒子層が厚くmush状のマグマ溜まりに新たに液が層状に貫入した状態を模している(左図).重力的に不安定な液相と粒子層の入れ替わりの機構として,右側に描かれているように,浸透流(b),ストークス沈降(c),レイレイ・テーラー不安定によるダイアピル上昇(d)を考えている.

実験としてはガラスビーズのサイズは0.11mm径で我々のものと比べ一桁小さい.液(シリコンオイル)の粘性は0.1-0.5Pasで1-2桁小さい.実験時間としては数分から数時間で我々のものと類似している.

上の3つのモデルについて定量的な扱いがされており,観察結果を解釈しているのだが,最終的には,主な機構としては上の図の3つの機構のどれでもなく,粒子層の最下部の膨張と粒子の分離・沈降,それに伴う対流による粒子層の浸食,によって粒子層全体が沈下する.同時に若干浸透流によって粒子層を抜けて上部に液層が形成される,という考えでまとめられている.(Fig.7)
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それで気づいたのだが,粒子層を抜ける液の浸透流速度は球の場合,粒子サイズの二乗に比例するので,我々の実験では数10倍の径のガラスビーズを使っているので,浸透流で粒子層全体が剝れる現象が見られた可能性.一応,粒子サイズを測って,粒子層の粒子体積分率(0.73)を求めて浸透流の速度を見積ると,液の粘性係数が24Pasの場合で10^-3mm/s程度になって微妙な処.浸透率表示の定数の取り方にもよる.自分の直感では,浸透流が粒子層を抜ける位なら,粒子はくっついていないので,途中で粒子層を膨潤させてどんどん粒子層を落としていくのではないかと思って,最初浸透流は考えてなかった.この疑問はまだよく分からない.今またひっくり返して粒子層の変化を観察しているのだが.いずれにしても,我々の実験で最初小さな集団での落下があり,次のフェーズとして大規模な落下(次図)がどのようにして生じるのか,分からない.ある程度集団になっていると粒子間の液が流動し辛いからバルクとしてその部分だけ高粘性を保って沈殿する.あまりマグマ溜まりで起きていることと結びつくかどうか分らない話ではあるが,現象としてもう少しきちんと理解できると良い.来週火曜の地震研の研究会のプログラムを見ると’キッチン’とはいえ他の皆さんはプロの手法をもっておられ,素人実験を紹介するのは肩身が狭いのだが,勉強させてもらえれば,と思っています.研究会のプログラム↓

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