一般教育で惑星関係の講義を持たせてもらっているが,自分でガリレオ衛星とか惑星を望遠鏡で見たことがない.
 
自分で望遠鏡を用意して探してみてもよいのだが,はたと思いだしたのが,KB大の惑星科学実習で学生さんが毎年行っていた西はりま天文台.ネットで探してみるとやはり公開天文台で世界一とのことで,小さい望遠鏡の貸出まで行っているとのこと.Narusawa研究員のツイートをフォローしていると土日は人が多いようなので,木曜に予約して出掛けた.
 
高速を使って2時間弱かかって,16時過ぎに着く.事務所で宿泊等の手続きをしてから望遠鏡の建物へ向かう.右側が天文台北館で60㎝反射望遠鏡があり,左側の白い建物が天文台南館で2m反射望遠鏡の’なゆた’が収められている.
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実に周囲の眺めが良い.写真は北東側の眺望.西播磨の準平原が延々と続く.
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16時半から貸出望遠鏡の説明があるとのことで,南館の事務室で望遠鏡を出してもらい,ビデオでまずは簡単な説明.Narusawa研究員がこられて実物でも説明してもらう.Borg77という77㎜の屈折望遠鏡で扱い易い.
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いったん,望遠鏡を預けて,夕食をとりにカノープスへ行く.食事は1人だけで,もう一グループ(3人)が飲み物でおしゃべりしておられた.私は定食を注文したが質・量とも満足.Narusawaさんによると,木星・金星は観望会(1930~)の前に見る事ができるとのことだったので,南館の南側で望遠鏡を設置して西を見ると暗くなるにつれ,金星と木星が見えだした.ただ,雲が西側から来てそのうち金星が隠れてしまった.木星のガリレオ衛星のうちまず2つを確認.写真は西側から見た天文台南館.右側の部分に’なゆた’が収められている.温度が上昇しないよう,風の乱れを作らないよういろいろ工夫された建物.
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19時半からは観望会で南館の1Fに集まるとのことだったが,宿泊の4人?グループは参加されず,スペースガード(美星天文台)のUrakawa研究員と私だけで,Narusawaさんの解説,装置の駆動はTakahashi研究員が担当ということで贅沢な観望会になった.実はUrakawaさんもTakahashiさんもKB大の向井研出身でUrakawaさんは覚えていた.
 
南館3Fのなゆたのドームに入り,なゆたを動かす前に外に出て,周囲の星座や星々の説明を受ける.土星がスピカの左側で同じ位の明るさで見易い位置にある.
 
なゆたについて,まずは全体の構成の説明を受ける.西はりま天文台は1991年に設置されたが,’なゆた’は10年以上の準備期間を経て2004年に設置されたもので,2mの反射鏡はフランス製.3トンあるそうだ.(厚みは60㎝位?).
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下の部分には可視光,赤外,そのた観測機器が多数組まれている.
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まず反射鏡の覆いを外し,次にドームの扉が開けられる.
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Narusawaさんの指令でまずは木星に向けられる.縞々が良く見え,ガリレオ衛星も3つ見えていた.コンパクトデジカメで撮影してみたら縞々は判らないが一応写る.
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衛星はもう一つ写真の視野の外にあった.
ガリレオは1610年に自作の望遠鏡で毎日木星の4つの衛星を観察した記録を「星界の報告」に残しており,それによって衛星が木星の周囲を公転していることを確信したのだが,当時は光害はなかったにしろ粗末なレンズで良く観測できたものだと感心する.
 
次に土星に向かう.なゆたは、毎秒0.5度の速度で動きドームも同時に動く。土星は環が見易い状況で肉眼ではカッシーニの間隙が良く分かった.衛星(タイタン等数個)もよく見える.写真ではかろうじて環が写る程度.Narusawaさんによると,今日の土星は85点.環の外側のエンケの間隙が見れれば100点とのこと.
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この後は,比較的近い処(130光年)にある連星を2種,写真はサイズと色の異なる連星.Narusawaさんは連星がご自身の研究テーマでいろいろ論文を発表しておられる。
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このほか,小惑星のケレス,エスキモー星雲,M67星雲,木星状星雲,M3,M51,M82等の星雲,コルカロリ(チャールズの心臓),で最後に土星をまた見て観望会を終わった.Narusawaさんの熱心な解説があり,質問をしながらTakahashiさんのコメントを受けたりしてたいへん良い勉強になった.観望会の後はUrakawaさん達が夜中の観測に入られた.
 
観望会の後,KB大からセンター長に異動されたItohさんの部屋で少し話を聞かせて頂いた.後は外に出て,小型望遠鏡で土星をおっかけたりしたが,写真は肉眼と比べると全然小さく分解能も低い.雲が出なくてラッキーだった.
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宿の部屋にNarusawaさんの『137億年の・・』という本があって,それにご自身となゆたの設置の過程が詳しく書かれていた.
 
翌朝は周囲を散歩し,10時頃山を降りながら岩石を採取して帰路についた.天文台のある大撫山(おおなでさん)は436mで,上部は玄武岩,下部は流紋岩溶結凝灰岩で構成されているようだった.写真は節理の発達した玄武岩の露頭.
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写真はいずれも右下をクリックすると拡大します.
 
お世話になった,Itohセンター長,Narusawa研究員,Takahashi研究員,職員の方々にお礼申し上げます.