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皮子平溶岩流の先端の表面近くで採取したガラス質流紋岩(Obsidian).これには殆ど晶子はみられない.斑晶斜長石は半分位は破砕した組織をしています.

鈴木(2000火山)の分析値から石基組成を計算して,800℃での粘性係数をGiordano et al.(2008)で計算すると無水で4*10^11Pas,含水量0.1wt%で5*10^10Pasになるので,流下速度は10^-4m/s程度で,4.4kmを流れるのに1年余りかかることになる.溶岩流停止のグレッツ数(進行速度/冷却速度の比を表わす無次元数でこの値が300を切ると停止する)は数100程度なので微妙に止まらずに流れたようだ.この高い粘性はメルトの結晶作用を抑えることができ,これまでなされた珪長質メルトのTTT図(Time-Temperature-Transformation図:von Engelhardt 1995, Sato et al.,2006IMA abstract)から結晶作用が進行するNoseの下の結晶化しない領域でのメルトの粘性係数が10^(10-11) Pasであることと良く合っている.

つまり流紋岩質マグマではマグマ溜りの加圧下で高い含水量のためリキダス温度が800℃以下に下がっていたのが,噴火で脱ガスして温度はそのままなので過冷却して,TTT図のNoseの下の領域に入ったため結晶作用が進まなかったものと思われる.