昔、学生の頃、Miyashiroさんの「地球科学の歴史と現状」というのが「自然」に15回の連載で掲載されたことがあった(1965年)。日本の地球科学の当時の状況を良く指摘されていて、当方も多いに影響を受けた。その中の一つに、地球科学研究の地域性の問題が取り上げられていた。地球科学では研究対象が個別の岩体であったり噴出物であったり変成岩であったりするので、それを詳細に記載していくことは、どうしても地域限定の問題を扱いがちになる。しかし、科学というのは、地域性を越えた一般的な問題を扱うべきである、という趣旨だったと思う。そのようにできるだけ一般性を求めてやっていくと、しかし当方のような働きの悪い人間は、表相的な部分を一般化して、それを問題として設定して解決する、という過ちを犯す場合が多いようだ。対象が複雑なら、その分時間をかけてじっくり観察していかねば、本質的な研究は難しいのかも知れない。還暦になってこのようなことに気づいても仕方ないが。