わたしがICを降り、待ち合わせ場所に着いたときに、

 

とても珍しく、ほぼ同時にあの人からもメールが入った。

 

「着いたよ」

 

「わたしも着いた。どこにいるの?」

 

わたしは返信をして、車を降りて見回してみるが、

 

あの人のパジェロは見当たらなかった。

 

「今、行くよ。」

 

もう一度あの人からメールが入ると、

 

すぐにあの人がわたしを迎えにやってきた。

 

・・・どこから来たの?

 

あの人は駐車場内ではなく、北方面の道からやってきた。

 

わたしが立っているすぐそばで車を停める。

 

「会えた」

 

わたしが助手席に乗り込むと、わたしもあの人もにこりと笑顔になる。

 

あの人は、あきれるほど変わってなくて、

 

その上なぜか、セーター姿だった。

 

・・・なんでスーツじゃないんだろ?

 

少し不思議に思うけれど、そんなことはどうでもいい。

 

「今日、ちょっとしたコラボイベントがあってね、

 

午前でだいたい終わったから、

 

じゃ、今日は帰るってサボってきた。

 

良かった。

 

明日から毎日会議だから、

 

休めるの今日しかなかったよ。」

 

あの人は嬉しそうな口ぶりでわたしに告げた。

 

あの人と会うとき、そういうことがしばしばある。

 

・・・今日しか空いてない。

 

ちょっと無理して来て・・・

 

そんなメールをわたしに寄こし、

 

わたしはいつだってバタバタと山を越えて会いに行くのだ。

 

そして今日のように、たまたまのメールのやり取りで、

 

「その日は無理だから、だったら今から来て」

 

そのようなことも時々ある。

 

それは、直前まで予定が決まらないあの人の忙しさと、

 

今はメールさえやり取りを控えているため、

 

久しぶりのメールでやっと互いの状況を知るからだろう。

 

わたしたちは(特にわたしは)、相手の動きを全く把握していない。

 

毎日メールで細かくチェック、などとできるような状態にない。

 

だから、一週間に一度程度、ご機嫌伺いにメールを入れると、

 

たまたまその日が時間が取りやすいよ、ということがあって、

 

わたしの方もなんとかなるならば、

 

「じゃ、今日、これから」となるのだ。

 

もちろん、わたしが断ることもそれなりにある。


先の予定なんて、本当に分からない。

 

仕事に大きく穴を開けるような事態にならないのならば、

 

ちょっと無理でも、そのチャンスを生かすしかない。

 

そうやってわたしたちは10年、時間をやりくりしてきたのだ。