







荘子を読む。
この世で一番正しいものなんかわからないということだね。
齒欠が王兒に問うた。
ひとびとがみな同じく是(いい)とするところを、
あなたは知っていますか。
と。
どうしてそんなこと知るもんですか。
じゃぁあなたは、知らないのですか。
どうしてそんなこと知るもんですか。
では、ものには知るということはないのですか。
どうしてそんなこと知るもんですか。
が、まあしかし、試みに申してみましょうか。
なんによって、
わたしの言う「知る」が、「知らない」でないと、
わかるのですか。
また、なんによって、
わたしの言う「知らない」が、「知る」でないとわかるのですか。
さらに、試みにわたしは、あなたにおたずねしましょう。
人は湿っぽい所に寝ると腰を病み、よいよいになって死にますが、
ドジョウもそうでしょうか。
人は木の上にいるとおそれおののく。
サルもそうでしょうか。
この三者のうちどれがその正しい場所を
知っているというのでしょうか。
人は野菜や家畜の肉を食います。
ナレシカは草を食い、
ムカデはヘビをうまいものとし、
フクロウはネズミを好きます。
この四者のうち
どれがその正しい味を知っているというのでしょうか。
サルはイヌザルの雌とまじわり、
ナレシカはシカとつがい、
ドジョウはウオといっしょにあそびます。
毛墻や麗姫は人が見てこそ美しいが、
ウオは見ると水深くかくれ、
トリは空高く飛んでにげ、
シカはすばやく逃げかくれます。
この四者のうち
どれが世の正しい色を知っているというのでしょうか。
わたしからみると、
仁義のくらいづけも是非のみちも、
ごたごたと乱れまじり、
とても、けじめがつくようなものではありません。
と。
出典・「現代語訳 荘子 内篇 斉物論第二」(原富男、春秋社)