荻窪に住んで早5年半。
他に魅力的な街もなく、ほどほどに気に入っていたこの街。

だが。数ヶ月前に突然引越しを決めた。

いまは日々、荷作り中。
あと数日後に離れるのに、まだ実感が湧かない。
私はいつも何でも、それが過ぎないと実感しないのだ。
今回もまた同じなだけか。

理想の暮らしは一つの場所にずっと住み、行きつけの店や散歩コースがあったり、というものなんだけど、狂ってきているなぁ。

上京後既に西葛西、早稲田、荻窪、つぎ、となる。
気付けば上京して丸10年経ってしまった。

荻窪のこのアパートには小さな庭のような場所があり、そこには沈丁花が植えられている。

あぁ、いい匂い。

気づいたのはいつだっただろう。
それから毎年楽しみにしていた。
沈丁花が満開になると、近所の川沿いの桜が咲く。
今年も順番に咲いている。

おそらく桜が満開の時期に引越してしまう。
散り際を見られないんだなぁ…。

あの沈丁花も知らないうちに自分の花のように思っていた。

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