シェイクスピア 「ロミオとジュリエット」

この作品はとても有名でだれでも知っているものだ。レオナルドディカプリオ主演の映画版も有名で面白かったし、めちゃくちゃかっこいい。ということでストーリーは知っているけれど、文字として読んだことがなかったので手に取ってみた。話はいがみ合っている家系の子供であるロミオとジュリエットが一目ぼれをして恋に落ち、結婚しようとするけれども両家いがみ合っているがためにそれは許されない。二人はそれに絶望し一緒に駆け落ちしようとするが、齟齬が生じ二人仲良く自殺してしまうというものだ。なんといてもこの作品は、二人の純情を描いておりとても美しい。ロミオもジュリエットも相手に対する燃え盛るような恋心を言葉巧みに表現している。純粋で綺麗だ。「ああロミオ、ロミオ、どうしてあなたはロミオなの。」という家系を嘆いたジュリエットの言葉は有名だ。どちらとも相手を愛しているのに、大人たちのくだらないプライドで結ばれないのはとてもやりきれん気持ちになる。いつみてもいつ読んでも心に響くこの作品はさすがシェイクスピアと言わざるを得ない。

 

 

恩田陸 「蜜蜂と遠雷上下」

この本はとても面白かった。話は、ピアノコンクールでそれぞれの天才の苦悩や変化、進歩、それぞれが弾くピアノの描写がされている。ずば抜けて特徴的なのが、ピアノの音や浮かんでくる情景描写だ。奏者それぞれの弾き方や思い浮かべる情景など、ピアノという音を媒介にした芸術を文字で表現している。まるで読者自身がそのピアノコンクールで音を聴いてそれぞれの情景を思い浮かべているかのような体験だった。それほどまでに表現が上手い。何度も鳥肌が立ったくらいだ。ここまで興奮させてくれる本はなかなかない。加えて、有名なクラシックばかりが書いてあり名前は聞いたことあるとかどっかで聴いたことあるとか、知らなかったものもあったので、気になったものは逐一携帯で流しながら読んでいた。すべて読み終わったころには、すっかりクラシックにハマってしまったというわけだ。今まで全然聴いてこなかったのでとても新鮮だ。そういった意味でもこの本は素晴らしい作品だったと言えよう。

 

 

レイ・ブラッドベリ 「華氏451度」

前から読みたかった本だった。話は、本を読む、所持することを禁止された世界で、昇火士と呼ばれる本を燃やす仕事に就いている主人公が、本当に本は忌むべき存在なのかを問うていくものだ。最初本当に本を燃やす描写があって、真相は政府の陰謀か何かと思っていた。でも読み進めていくと「実は昇火士などほとんど必要ない。大衆そのものが自発的に読むのをやめてしまったのだ。」と大衆批判へと変わっていったのだ。確かに今日世の中には本以外にもあらゆる娯楽にあふれている。本を読むという行為は、ある程度能動的に行わなければならないが、映画やドラマ、ゲームなど受動的に簡単に快楽を得られるものも充実してきた。その中でやっぱり選ぶのは楽なほうだろう。そういった意味でも人は堕落しつつあると言える。便利な世の中にしようと躍起になっているものたちもいる一方、それが進歩するがゆえに堕落してゆく人間もいることを認めなければならない。でも適度に堕落するのもいいと思っている。僕はゲームが好きだ。それは楽しいから他ならない。読書も確かに楽しいがゲームも映画鑑賞も等しく楽しい。人生を謳歌するうえで娯楽は必要だと思っている。必死に生きることも必要だけれども、ゆったり何かを楽しむことも同じくらいに必要だ。だいたいこの世界なんてそう素晴らしいものではないのだから。

 

 

カズオイシグロ 「わたしを離さないで」

カズオイシグロは数年前にノーベル文学賞を受賞したことで有名で読んでみたかった。読んでみたところ、この「わたしを離さないで」はジャンプで連載中の「約束のネバーランド」に酷似していた。そのため読み進めるうえでの想像する登場人物や雰囲気は約ネバに近かった。話は、ある施設で子供から成人するまで育てられる。外の世界とはほとんど交流が無く、限定された世界での生活が語られていく。それから大人になり外の世界に出たら、『提供者』として生きていかなければならないと決まっている。施設とは、提供者とはいったい何なのかが少しずつ明かされていく。といった感じだ。真相は、施設はクローン人間を育てるためのところである。クローン人間は、臓器移植のために生み出される。そのため、大人になったら『提供者』として臓器提供をしなければならないというわけだ。最初から自分が誰かの臓器提供のために生かされて、育てられて、しかもそれを大人になって知ることはあまりに残酷すぎる。人間の倫理観などあったもんじゃない。クローン技術は、現実でも度々話題に上がることがあるものだが、やはり倫理的に人のクローンを作るのは難しいだろう。しかし作中でも言っているように、一回作ってしまったら、一回その利便性に気づいてしまったら、もう後戻りはできない。そういった意味でもクローンは細心の注意を払って研究していかなければならない分野だと思う。

 

 

森見登美彦 「夜は短し歩けよ乙女」

この本は森見登美彦2冊目となる本だ。話は、黒髪の乙女に思いを寄せる主人公(先輩)とその周りで起こる珍事件を面白おかしく書いたものだ。いやーやっぱり台詞回しと詭弁が面白い。ようこんな語彙力あるなあといつも感心する。クスッと笑えるところばかりだ。それに今回は変人奇人が多く、個性的なキャラを上手く書いているところにも感心する。黒髪の乙女もなかなかの変人で学園祭の場面では、でっかい鯉のぬいぐるみを背負ったり、演劇部みたいなやつに急遽参加して名演技をみせるなどなかなかの人物だった。加えて特徴的なのは、森見登美彦独特のSFにもファンタジーにも似た世界観だ。金魚がいきなり竜巻によって巻き上げられて、その後落ちてきて主人公にぶち当たる場面や、古本屋での秀才少年(自称古本の神)、風邪が瞬く間に流行しそれを治めるための秘薬などなかなか独創的で、現実にもありそうでない世界を描いている。ちなみに恋愛ものを謳ってはいるが、恋愛要素が霞むくらいに台詞回しと詭弁が面白い。すっかりこの作者が好きになってしまった。