玄関のドアを開けるとき、
今日こそはマケルかなと思って出かける。
でもなかなかマケナイ。
スマホの電源を切ったり、
防犯カメラの死角をかいくぐったり。
変装アイテムもだいたいそろえた。
もうバカバカしくなってしまったけど。
本人は孤独を感じている割には、
今や当たり前の日常である。
あちこちぶつかって、
ダメ出しされまくって、
あぁ、これは食べちゃだめだ。
それに触っちゃ危ないよ。
時に目や耳を理性で閉ざして、
意図的につくりあげた暗闇の中で感覚を研ぎすます。
誰に教えてもらうでもなく、
自分で経験して学んでいく。
毎日、更新されている。
確実に死へ向かうための誠実な秒刻みでの成長。
過程の中での失敗をあざ笑いたい気持ちはよくわかるのだけれど、
過去はもう遠すぎる過去でしかない。
暇なく毎日闘っているから、
いつの話かすら忘れてしまっているくらい。
だいたい完璧ってなんだい?
みんないつかは死ぬんだよ。
たまに命さえ懸けているおかげで、
傷口ふさがる頃には、
結構なりたかった人間になってたりする。
不意に追い風が吹くと、
泣き出しそうにもなるのだけれど。
私の体を仕切ってる精神も、
なかなかマケテナイ。