午前10時の映画祭にて観賞。 

1954年大映作品
監督:溝口健二
脚本:依田義賢
(TOHOシネマズ新宿 8)

こういう作品を観ると映画は芸術だと改めて思ってしまう。
近松門左衛門の人形浄瑠璃ベースとした川口松太郎の戯曲を依田義賢が脚本化。

江戸時代、京都の大経師(朝廷から大経師暦という暦を発行する権利を持ち、公家、所司代に品物を納めている商人)の以春(進藤英太郎)の妻おさん(香川京子)と奉公人の職人・茂兵衛(長谷川一夫)との誤解を元にした不義密通事件の物語。

おさんの実家の放蕩三昧の兄(田中春男)からの金の無心が発端となり、奉公人・お玉(南田洋子)に手を出そうとする以春の話が茂兵衛とおさんの騒動へと発展する見事な展開。

最初は誤解だった想いが本物の恋愛感情に燃え上がっていく。この騒動があったがために、茂兵衛とおさんは互いのほんとの気持ちが通じ合うことができた。何という皮肉。

進藤英太郎のすけべ爺ぶり、田中春男のデタラメぶり、長谷川一夫の律儀さ、香川京子の一途さ、、、すべての役者が素晴らしい。

巨匠・溝口健二の凄みをまざまざと見せつけられた作品。