在宅で仕事をする日は、できるだけ、職場に出勤する日と同じスケジュールで準備をして、

20分(だいたい、家から最寄り駅までの所要時間)位、散歩するようにしている。

朝から、猛烈に暑く、セミの声も大きくなりつつある。

 

さて、2回目のドイツは、5月頃。

ドイツ滞在は、一ヶ月程度であったが、実験の準備だったので、比較的気分が楽だった。

実験のときは、3~4人で、24時間連続測定を、2~3週間続けるので、その間、食事と睡眠以外には、実験室にほぼ籠りっきりになる。

実験室の床に転がって、仮眠なんてこともある。

仮眠なのか、寝落ちなのかわからないところもあるが、、、、

しかし、準備だと、朝から始めて、夕方には終わるという、きわめて健全な生活だ。

 

ちなみに、ドイツ語は、「こんにちは」「私の名前は、○○です」「ありがとう」と数字くらいしかわからない。

大学の第2外国語でドイツ語を履修したが、2年間の履修でその程度である。

外国にいくとき、外国から来客があるとき、ドイツ語にかぎらず、どの国の言葉でも、一応、上の3つのうち最初の2つを覚えておいて、挨拶に使う。

”○○さんの一発芸”と大学の後輩には言われていたが。

 

滞在先での朝、起きて実験室に向かう準備をしながら、何となく部屋のTVをつけていたが、「アサハラ」「ギフト」という言葉がやたらと耳に入ってくる。

”アサハラ”と”ギフト(贈り物?)”の関係がさっぱりわからない。

映像をみてみると、オウム真理教の本部に、警察等が突入した時の映像が流れている。

「ギフト」はドイツ語で「毒」の意味があるようだ。

 

それは、さておき。

ミュンヘンフィルのコンサートチケットを当日手に入れた経験から、

フランクフルト近郊のコンサートに、当日チケットを買うつもりで、

夕方早めに作業が終わった日に、チケットを事前購入することもなく

直接コンサート会場に行った。

しかし、どうも、ミュンヘンフィルのときとは様子が違う。

ダフ屋らしき人もちらほら。

チケット売り場にいくと、完売とのこと。

 

諦めて帰ろうか、とおもっていたところ、「日本の方ですか?」と声をかけられた。

外国で、そのように声をかけられると、これまで怖い経験をしたことはなかったが、警戒して、やや反応が遅れてしまった。

もう一回、「日本の方ですか?」聞かれたあと、警戒しながらも、当日券が手に入らずに帰ろうと思っていることなどを話した。

そうしたら、「わかりました。入れてあげますよ。」

こちらとすると、???????

「付いてきて」と言われ、ますます警戒心が高まりつつも、後を付いていく。

そうすると、声をかけてくれた方は、気軽にあいさつしながら、

受付を通り過ぎて中にはいっていく。

話をきくと、その方は、バンベルク交響楽団の演奏家とのこと。

 

「これからリハーサルだから、その辺に座っていて」との言葉に従い、ホールの中央前方に座る。

これまで、演奏家の顔がわかるような位置でクラシックコンサートを聴いたこともないし、

リハーサル風景をみることもなかったので、リハーサルだけで興奮した。

 

チケットがないので、せめてリハーサルだけでも、という話だと思っていたのだが、

リハーサル後に、その方が来られて、「たぶん、このあたりの席は空いているから、そのまま、聴いていても大丈夫」とのこと。

どうやら、演奏家の家族などのために用意されている席だが、通常、そこがいっぱいになることはないらしい。

お言葉に甘えて、ベートーヴェンの交響曲、第8番、第9番を特等席で聴かせてもらった。

ベートーヴェンの交響曲、全曲演奏シリーズの最終回ということで、チケットの売れ行きがよかったらしい。

指揮者は、ホルスト・シュタイン。コンサート後に、楽屋に連れて行ってもらって、ホルスト・シュタインにサインをもらった。

 

さらに、その方には、フランクフルトまで帰るから送りますよ、と言われて、車で送ってもらい、その流れで夕食までごちそうになってしまった。「日本から来た学生さんが聴きに来てくれてうれしい」という言葉に、何から何まで甘えてしまった。

 

おそらく、もう二度と体験することはないであろう、奇跡のようなできごとだった。