大学院修士課程の2年生のとき、ドイツの施設で実験をするために、1か月ほどフランクフルトの郊外の研究所に滞在した。季節は5月頃だったと思う。

 

現地で行う実験の準備に手間取り、朝の5時頃まで徹夜で予備実験を行い、そのまま、成田に向かった。なお、このとき、国内線も含めて飛行機に乗るのは初めてであった。日本国外にでるのも初めて。

 

実験機材の大部分は輸送済みであったが、当日朝まで予備実験で準備していたものなどがあり、荷物の重量がかなり重く、超過料金を取られたと記憶している。成田では、これ以外は特に問題はなかったはずである。

 

向かった先はドイツだが、一番安い飛行機として、ベルギー航空を利用した。ロシアのアエロフロートの方が航空運賃が安かったのだが、乗り継ぎで一泊する必要があり、宿泊費を考えて、ベルギー航空となった。なにしろ、飛行機初体験。しかも、アエロフロートは、定員の倍くらいの乗客が乗っていた国内線が墜落した、とかホントとは思えない話(おそらく、友人にからかわれただけ)も耳に入ってきたので、ベルギー航空になってほっとしたのを覚えている。

 

ブリュッセルで乗り継ぎをして、フランクフルトについたのは、現地時間で19時頃だったか、晴れた夕方の空を見た記憶だけが残っている。空一面に、たくさんの飛行機雲。これまでに見たことのない、また、そのあとも見たことのない、空だった。

 

そういえば、ブリュッセルの乗り継ぎで1つトラブルがあった。手荷物に入れていたノートパソコンがブリュッセルの手荷物検査でひっかかったのだ。片言の英語で、パソコンであることを説明したら、電源を入れて動かしてみろ、とのこと。しかし、バッテリーが無く立ち上がらない。240Vから100Vへの変圧器は、スーツケースに入れてあるので、どうにもならない。ついに、別室に連れていかれてしまった。何か、パソコンの表面をぬぐって、分析装置にかけたようだ。爆発物を疑われたのか、と思う。特に、問題はなく、間もなく解放されたが、初の飛行機、初の海外で、どうなることかと思ったひと時だった。