遊ばれたわけではなかった。
悪く言えば痴漢行為ではないのかとまで思い悩んでいた。
しかし、彼は私の事が好きだったのである。
しかもそれを潔く認めた。
大切な人なのに行為も失礼だったし、心も傷つけたし悩ませた。
これを彼は考え、その結果、即座に私に謝り少し距離を置いていたのである。
でも、こうなる以前、私たちはあまり話をした事がなかった。
周りの人とはよくしゃべったのだが、肝心の彼はデスクでも休憩所でもプライベートな会話はほとんどなかった。
「あまり話をしなかったよね?」
思いを寄せている割には近づかなかったので聞いてみた。
「仕事上、話す機会もなかったしね」
でも、遠くからちゃんと見ていたのだ。
思うがゆえに目も合ったし、行動も把握していた。
なのに、彼はこれ以上、私とは付き合わないという。
好きになればなるほど申し訳ないと。
「ご飯を食べにいくのもだめ?」と聞く私に対して、
「食事をすれば酒が入る。気持ちがあるから、お酒が入ればそのまま帰すことはできない。」
このセリフは正直嬉しかった。
女性としてすごく好きだと言われているんだ。
と思った。
こんな言葉をさらっと言える彼を男らしいと思った。
ただ、これを聞いて、「私が帰るって言うからご飯に行こう」とは言えなかった。
何故なら、私も気持ちがあるから。
ただ、「どういうふうに」帰さないのかによっては断るかもしれないというのもあった。
いろんな事を話した。
でも、二人で出した答えはこのままの状態でいること。
彼は私に対して「素敵な人でいてくてください」と。
そう、私たちには付き合えない理由があった。