それからは、何事もなかったように日々を過ごした。
しかし、仕事中、彼とは何度も目が合い、しばらく見つめあった。
なのに、仕事上、絡むことはほとんどないので、彼と話す機会は少なかった。
そう、たまにある休憩所での会話。
これは私の確信犯で、彼が休憩に行く姿を見計らって私も行くという感じ。
日に何度もあると、ちょっとわざとらしい?
それでも、たまに会話できると嬉しかった。
だって、顔は見れても何週間も会話できないこともあったから。
そんな中、私は地方へ出張に行くことになった。
お互いのスケジュールは把握できる立場にあったが、この出張は急遽。
当然、彼は私が出勤していない事を不思議に思うだろう。
だから、敢えてだまって行った。
2日間の日程を終え、みんなへのお土産の一部を彼にも渡そうと思った。
その他に、彼だけに別のお土産も。
実は、これは私とお揃い。
正確にはお揃いではない。同じ種類・・・かな。
幸運にも出張明けの朝、彼と話す事ができた。
「出張行ってました?」
「うん。」
彼は私の行き先掲示板で知っていたようだ。
「お土産買ってきたよ。」
「ありがとうございます!」
「帰りに渡すね。」
これで、帰りに緊張せずにわたすことができる。
だって不思議でしょ?
同じ担当でもなく、そんなに絡みもない人に何か渡すの。
周りがどんな風に思うか。
退社時間。
彼は離席中。
そういえば、一時間ほど前、どこかへ行っていた。
その時、私に何か合図を送っていた。
行き先はわかるのだが、帰ってくる時間がわからない。
私はメモを書き、机に置いて帰る用意をし始めた。
・・・帰って来ない。
いいや、朝言ったから、びっくりしないだろう。
お土産とメモを袋に入れ、彼の椅子に置いた。
当然、周りの人に「彼に渡してて~」なんて言えない。
だから無言で。でも、ちょっと意味ありげに・・・
諦めて退社。
エレベーターへ。
その扉から、彼が!
「あ~!机に置いてるよ~」
「うん、ありがとうございます。」
よかった。
直接は渡せなかったけど、伝えられて。
さっきの合図は、「ごめん、すぐ帰ってくるから・・・」とでも言いたかったのだろう。