朗読劇初鑑賞 | ホノシバ(柴犬たちのお姉ちゃん)

ホノシバ(柴犬たちのお姉ちゃん)

さくら、雅、りん
柴犬3頭と、インコ1羽。

大切な妹たちの記録


2023年の現場始めは、
1/10にヒューリックホールで行われた朗読劇の夜の部だった。



感想がめちゃくちゃ長文になったので覚悟して読んで欲しい



BOOK ACT
「僕らは人生で一回だけ魔法が使える」



わたしは昔から縦書きの小説を読むのが苦手だ。

好き嫌いではなく、
文字が何故か頭に入らない。
国語の授業も文字を追いかけるのが大変だった。

でも物語は好きで、
舞台、ミュージカル、映画、ドラマ、アニメをよく見る。


現場に行くようになった中学から10年、
色んな界隈で推しを増やし続けてオタクをしてきたので、
舞台やミュージカルは度々観劇してきた。

2.5次元も好きだし、
香取慎吾さん、
V6の坂本くん、三宅くん、
キスマイの藤ヶ谷くんなどが主演を務める作品も観劇する。


しかし、
実は朗読劇を見たのは今回が初めてだった。

以前ブログに記載した、
THE RAMPAGEの山本彰吾さんという最近できた推しの方が出演されるとの事で、遥々東京までやってきた。


動きがなく、
演者も台本を持ったまま舞台に置かれた椅子に座ったまま。


国語の授業のようなただの音読ではなく、
声色と表情を使い分けて、
生のピアノ演奏と共に
数人で掛け合いをしながら演じる。


凄かった。


声優の生アフレコやドラマCDとも違って、
キャラクターの画像や環境音もない。


それなのに、
彼らが生きる様子、
その周りの情景が思い浮かぶ。


語り手としてのキャラクターの声と、
そのキャラクターとして発する声を使い分けていたのもとても印象的だった。



語り手とピアノ演奏が一心同体となっていて
彼らの住む世界がとても想像しやすかった。





今回観劇した
「僕らは人生で一回だけ魔法が使える」は、

「男が18歳から限られた期間の間にたった一度だけ魔法が使える」とある村で、
18になりそのことを告げられた4人の若者たちのお話だった。


作中のセリフにもあったが、
18というと大学受験、就職など
人生においてとても重要な決定をする期間だ。

多感で、勉強、恋愛、趣味などで挫折を経験したり、
将来の夢として抱いていた未来から現実を突きつけられたりもする難しい時期。


そんな時期に突然「君は魔法が使える」と言われても…


もちろん彼らも信じていなかった。
そりゃそうだ。
そんな事言われたらわたしでも笑うと思う。


でも、彼らはしっかり考えた。

偉い。
素直でいい子たちだな。


夢を現実にしようとするアキトと、
その一方で父親が倒れ夢を諦めざるを得なくなったナツキ
恋愛と家庭 それぞれの人間関係で悩むユキオ
生まれつき心臓に障害を持つハルヒ


作中ハルヒが
障害があると可哀想なのかという事や
障害がある中で生きる事の話をしていた。

ハルヒは心臓の障害だったが、
わたしは発達障害がある。

障害があると生きづらい。
それでも頑張って生きてるつもりだ。


それぞれが苦しんで、
悩んで迷って、
人とぶつかってすれ違って、
自分と向き合って、
たった1度しか使えない魔法についても考える。


夢を叶える為に使う?
倒れた父親を治す為に使う?
好きな相手に振り向いて貰う為に使う?
障害を治して生きやすくする為に使う?

自分のために使うか
他の誰かのために使うか





夢を諦めるしかなかったナツキは彼らとぶつかって、
一緒にいることが少なくなりやがて村を出る。

ユキオも父親と向き合い、
真実を知ることで和解する。

アキトもずっと追いかけているピアニストという夢を叶える為に、
ユキオとハルヒと、
気持ちのいい“綺麗な空”に祝福されるように送り出されながら村を出る。



ハルヒは心臓の疾患が悪化する。


その事を知るのは両親とユキオだけ。

アキトには「すこぶる元気です」と手紙を書いて嘘をついていた。


しかしハルヒが意識を失ったと知らされ、
今までバラバラだった4人が病室で久々に揃った。



魔法を使えると伝えられる際に、

いくつかルールも伝えられる。


そのうちの1つが、

「魔法は命に関わることには使えないと言われている」

というもの。



しかし目の前には、

幼い頃から一緒に遊んだ大切な友だちが
病室のベッドで横たわっている。

必死に病気と戦った事がわかるほど
顔が浮腫んだ状態で。



「魔法は命に関わることには使えないと言われている」

“使えない”のではなく
“使えないと言われている”


ハルヒに魔法を使おうとするナツキと
それを止めるアキトたち


「死ぬことには意味がある」

だから、
命を引き伸ばすのは良くない。と。


アキトの母親は
彼が幼いうちに病気で亡くなっている。


そんな母親の死にも意味があって、
今、
ハルヒと別れることにもきっと意味がある。



そう信じて、
“ハルヒに音が届くように願って”演奏した。



ハルヒは、
自分が生まれた時のような桜色の景色と、
想いに溢れた音に包まれて“目を閉じた”。






最初の感想は
「とても綺麗なお話だったなぁ〜」
という物だった。


もちろん人間臭い部分はあったし、
全部が綺麗な訳では無いけど、
とても優しいお話だった。



そして規制退場で会場を出る時、

「さくらもあの時、
幸せに死ねたのかな。
そうだったらいいな」

と考えてしまったその瞬間、
一気に涙が溢れて来た。


今もまた涙が止まらない。


さくらというのは、
2022年の8月17日に16歳で亡くなった愛犬だ。


ちょうど、
アキトたちがハルヒに出会ったくらいの歳の頃に、
わたしとさくらも出会った。




犬と人間だけど本当の姉妹みたいに
一緒に遊びに出かけたし、
わたしは手で押して さくらは歯を当てて、
喧嘩もした。


そんなさくらが腎臓病になった。
そして歩くのが大変になった。
食べなくなった。


点滴、投薬、強制給餌、点眼


夜に徘徊するし、
喚くし、
下痢が止まらないし、
吐くし、

めちゃくちゃ大変だった。

めちゃくちゃ楽しかった。


さくらのお世話ができることが楽しくて、
めっちゃ笑いながら介護した。


そうやって母とふたりで
さくらの介護をするようになってしばらくすると
さくらのおしっこが出なくなった。


獣医師に1週間ももたないと言われた。


1週間どころじゃない。
3日すら危ういと思った。



遠くにいる弟に連絡した。


すぐ来てくれた。

髪もボサボサで、
いつも付けてる香水も付けずに。


弟が来ると、
もう力も残ってないのになんとか立ち上がろうとするので手伝った。


なんと奇跡的に少しだけ歩けた!


さくらは
わたしの弟のことを自分の弟だとも思っていたので
多分いい所を見せようとしたんだろう。


弟がしっかり抱きしめて、

ありがとうありがとう

と沢山言って、
わたしにさくらを渡して車に乗る。

弟は、
わたしに抱かれながら運転席に手をかけるさくらに手を振って帰った。



その次の日、
さくらはわたしの腕の中で亡くなった。



息が止まって
目や舌、耳から血が引いていく。



わたしと母はそんなさくらに

「ありがとう」
「大好き」
「愛してる」

と言い続けた。



さくらも何度も口をパクパクする。

声は無かったけど、
それでも何か言っていた。


何かを必死に伝えようとしていた。


そして、動かなくなった。




音楽をかけながら身体を綺麗にした。

昔からさくらと一緒に聴いてた歌手の歌。


さくらに届くように。

さくらが心地よく逝けるように祈りを込めて。



さくら、
さくらもハルヒみたいに
さくら色の景色と想いに溢れた音に包まれながら逝けたのかな?


わたしたちの想い、
届いてるよって受け取ってくれた?



アキトの母親がアキトに送った最後の手紙。

もう息子を抱く力もないのに、
必死にペンを持って記した
沢山の「愛してます」の言葉。



ねぇ、さくらも
弟の前で頑張って立って

「愛してるよ」

って伝えたの?



わたしの腕の中で
声も出ないのに必死に口を動かして
わたしとお母さんに

「愛してるよ」
「愛してるよ」

って沢山伝えてくれてたの?




いや、
本当は分かってた。


さくらがあの時
「ありがとう」「大好き」「愛してる」
って言ってたのは。



でもなんだか、
答え合わせができたような気がして。



半年前の出来事なので
とても鮮明に脳裏に浮かぶ。

昨日までは、
声もなく口を動かしてた様子を思い出すだけだったのに、

今日思い出すと
さくらの声が聞こえたような気がした。



不思議だな。

あいつ、
「ごぁん(ご飯)」とか「おあーーぁん(お母さん)」とかしか喋ったことないのに。



もしかして、
さくらの魔法だったりして。




なんて言ってしまいたくなるくらい

わたしには刺さりまくった。



作中に出てきた
「死ぬことには意味がある」
という言葉。

それも確かにそうだと思う。


わたしは死にたい人間だった。
ロープを結んで自殺しようとしたりした。

どうやって死のうか考える日々だった。


でも、
さくらが死んでしまってからは、

あと2頭いる愛犬と愛鳥を見送りたい

と考えるようになった。


また母親と2人で介護をして、
抱きしめながら見送る。


さくらが死んだことで
それが今のわたしの生きる意味となった。





山本彰吾さんの役は
心臓に障害を持つハルヒ。

優しくて前向きな青年に似合う、
柔らかく、穏やかな声での演技だった。


アキトたちに語りかける時の目

アキトたちと笑い合うシーンで見せた笑顔

ハルヒの意識がない時の静かな凪いだ表情

右目から静かに零した涙

八木さんのクセの強い演技に笑いを堪える顔

水を飲む仕草
ピアスのついてない左耳
カテコでのいつもの笑い声
他の演者さんのご挨拶にぱちぱち手を叩く姿
上げた前髪
金髪
存在

どれも良かった。


ただちょっとイントネーションが訛っちゃってた所が数箇所あったのが気になった。


多分、演技をする上で訛りは大敵。

これから山彰さんの色んな役が見てみたいし、
色んな人と色んな演技をやって欲しい。

でも山彰さんはずっと訛ってて欲しいという矛盾…


とにかく、応援してます!!!




RIKUさんの演技は、
幼少期の演技の際に少し高くてあどけない声を出していたり、
アキトの感情によって抑揚がはっきりしていて、
とても良かった。

誰かに語りかける際にはその演者の方を向いたり、
客席をまっすぐ見つめて訴えかけたり、
涙を流したり。

これが朗読劇か、と思った。


ナツキ役のSWAYさんは演者との掛け合いがすごく上手いなと思った。
ハイテンポな応酬が見事だった。

ユキオ役の櫻井さんの声は優しくて聞きやすかったが、
怒鳴った時の声もとても迫力があってそれもまた良かった。

八木さんは色んなキャラクターを、
声の出し方とトーンと表情と仕草とで見事に演じ分けていた。
クセが凄かった。

アキトの母親役の方は
話し方が本当に、ものすごく上手くて、
すごく引き込まれた。

ピアノの演奏はジャズピアニストの方が作曲された曲と、
演者と呼吸を合わせての即興での演奏だったそうで、
カテコでそれを聞いて驚いた。




年初めにこのとても素敵な朗読劇を拝見できてよかったと思った。