放課後、これまでの性体験の話題になった。
涼子はクラスでも目立つグループにいる。友人たちも、派手だ。
高校に入学して1週間。
女子高だから、もっと早くこんな話題が出てもおかしくなさそうなものだが、オリエンテーション合宿や、
授業についての説明や、選択科目の登録などでばたばたして、それどころではなかった。
エアリーな、やわらかい髪がおそらく自慢であろう美夏が、言う。
「中3の夏休みに、カテキョーと、しちゃって。
つき合ってるわけじゃないんだけど、親が居ないときは、そのたびにしてる、って感じかな。」
それを受けて、さやかが言う。
「私も。 なんかカテキョーって、絶対 私たちのカラダめあてみたいなとこ、あるよね。」
そうなのか。 私は家庭教師じゃなく、塾に通っていたから、そういうことは よくわからない。
だいたい、私が行っていた塾の先生たちは、みんなオヤジだった。
大学生のアルバイトなんかには任せておけませんから、が売りの塾だったのだ。
「えー。 みんな、結構やってるんだね。 私は全然、まだ。」
顔を紅潮させながら、美鈴が言った。 私も、と涼子が相槌を打とうとすると、美鈴は続けた。
「でもね、なんか彼氏が やりたいやりたいってうるさくて。 どうしようかな。」
その後、美夏とさやかが、絶対やったほうがいいよ、いつまでも処女なんてね、と顔を見合わせたところで
チャイムが鳴った。 クラス全体が、あたふたと席に着く。
涼子は、なんとなく自分が同級生よりも出遅れているような、不安な気持ちになった。
帰りのHRの後、さやかが通りすがりに言った。
「ね、涼子は、カンペキ処女でしょう? 今夜は、コレ使って! 大人の仲間入りして!」
スタバの紙袋に入った何かを、鞄に入れられた。
じゃぁね、と振り返ったさやかが、意味深に微笑んだ。
何かとてもいけないものを渡されたような気がして、涼子は、こっそり袋を覗き込む。
それが何なのか、一瞬わからなくて、そのまま鞄に入れて、涼子は、学校を後にした。
今日から週に3日、学校の帰りに、涼子は、付属の音大のレッスンを受けることになっている。
高校を卒業したら、そのまま大学のピアノ科に進みたいのだ。
両親も、せっかく習わせたピアノをずっと続けてもらいたいと思っている。
大学を出たら、教員採用試験でも受けて、音楽教師になれば、食いっぱぐれないだろうとの算段だ。
隣の敷地にある大学校舎までは、歩いて10分ほどだ。
敷地に入ったら、さらに奥へ進む。 レッスン室は、敷地のいちばん奥にある。
音大のレッスン室は、10畳ほどの広さで、グランドピアノが1台と、譜面台があるだけだ。
壁には、大きな鏡がしつらえてある。
レッスン室に入り、鞄と紙袋をピアノの脇に置く。
大学までの道を歩きながら考えて、さやかに渡されたものが、派手なピンク色のバイブレータだと判った。
中学時代に、友達の家で見たいやらしいビデオが頭をよぎる。
プラスチックの包みに入っているから、たぶん新品だと思う。
さやかは、どうして、あんなものを学校に持ってきたんだろう。
しばらく待つと、30歳ぐらいだろうか、痩せた男が入ってきた。
「どうも、サクラギです。 レッスン始めましょうか。 譜面もってきたよね?」
言葉少なに、でも矢継ぎ早にそう言って、腰をかける。
「じゃ、練習してきたところ、弾いて。」
大学での、初めてのレッスン。
涼子は、緊張のためか集中してレッスンを受けることができない。
つい、余計なことを考えてしまう。
家ではきちんと弾けたのに、同じところを何度も間違えた。 関節が開かない。
大きなため息をついて、冷淡な声でサクラギは言った。
「バイエルから、やり直そうか? それとも、緊張しているの?」
涼子は真っ赤になり、俯くことしかできない。 なぜか涙まで 出てきた。
ぽたぽたと零れる滴を手の甲で拭う。 拭っても拭っても、涙は止まらない。
呆れたように、またため息をついて、サクラギは追い打ちをかける。
「こんなんじゃ、ダメだね。 また明後日、おいで。 今日はこれで、終わり。」
親切のつもりなのか、涼子に鞄を取って渡してくれようとする。
「すみません、大丈夫です。」
鞄を受け取ろうと手を伸ばしたが、力の抜けた涼子の手は鞄を掴めなかった。
どん、という音とともに鞄が床に落ちる。
スタバの紙袋から、ピンク色の物体が顔を出す。
サクラギは、鞄を拾おうとして手を止めた。
無言でピンク色を拾い、まじまじと、それを見る。
「何、これ。」
涼子は、今の自分の状況がわからない。
制服のまま、グランドピアノの下に、仰向けに寝かされている。
ブレザーのボタンも、ブラウスのボタンもはずしてある。
ブラジャーのホックはそのまま、ブラジャーのカップからは乳房がはみ出している。
薄い色の乳首が、ぴんと立ち、サクラギの舌がそれをつついている。
サクラギの舌で乳首がころころと転がる。 そのたびに、脇腹のあたりに何か刺激が走る。
音も声もだしてはいけない気がして、とにかくじっとしている。
何かに気づいたのか、サクラギは、ふと、乳首から舌を離し、言った。
「大きく息を吐いてごらん。」
深呼吸の要領で、涼子は息を吐く。 運動会の前に、緊張をほぐすための深呼吸のように。
次の瞬間、涼子は、驚いた。
まるで、自分の思っていなかったような声が出たのだ。
そう、中学時代に友達の家で見た、あのいやらしいビデオの女のような、あえぎ声が。
その声を聞くと、安心したかのように、サクラギは また舌を動かし始めた。
吸うように、つつくように、包むように乳首を舌で撫でまわす。
涼子は、まるで初めて言葉を覚えた幼児が、同じ言葉を繰り返すように、あえぎ続けた。
脇腹のあたりに走っていた刺激が、全身にまわる。 サクラギの舌も、涼子の乳房だけでなく、
あらわになった上半身をくまなく這いまわる。 涼子は、もう、目を開けていられない。
瞼をおろし、刺激に神経を集中させる。
サクラギの指は、涼子の下半身にある。
膝の後ろを撫で、太腿を掠める。 淡い色の小さな下着の中に入り、足の間を蠢く。
涼子の上半身から口を離すと、下着の上から、足の間に舌を這わせた。
懐かしいような、あたたかさを感じ、目を開けると、サクラギは、涼子の陰毛の中に顔を埋めていた。
ざらざらとした触感。 ぬるぬるとした何かが足を伝う。
涼子は、もう、今 自分が何をされているのか解っていた。 しかし抵抗する気には、とてもなれなかった。
目を閉じて、全てに身をまかせる。 涼子の中に、やわらかなサクラギの舌が入ってゆく。
サクラギは、さやかから渡されたバイブレータのスイッチを入れた。
やわらかな春の日差しにそぐわない機械的な振動音。
おそらく、次の瞬間には、これが私に入ってくるのだろう。
身支度を整えて、レッスン室を後にする。
明後日のレッスンでは、もう緊張のあまりミスタッチをするようなことは、ないだろう。
そのかわり、きっと、サクラギに言うに違いない。
今日も、と。