山の上ではまだ咲いていました🌸

先日、映画「RAVENS(レイブンズ)」を観ました。



監督・脚本はイギリス・マンチェスター出身のMark Gill マーク・ギル氏。前作「イングランド・イズ・マイン モリッシー はじまりの物語」(日本公開2019年)を観ていたこともあり、今作も楽しみにしていました。

映画の概要については、上のリンクより公式ホームページを、是非ご覧いただけましたらと思います。


イングランド・イズ・マインの日本公開プロモーションで監督が来日された際、次は写真家・深瀬昌久さん(1934〜2012、北海道出身)の映画を撮ります、とインタビューで話されており、イギリス人の監督が、一人の日本人写真家に注目したのはどのような理由だろう?と気になっていました。とは言え、不勉強でお恥ずかしいのですが、当時私自身は深瀬昌久さんという存在を知らなかったので、この日をきっかけに深瀬さんの作品や生涯に興味を持つようになった次第です。


地元の映画館では、日本公開初日より1ヶ月ほど遅れての公開。上映期間もあまり長くはなく、この地域ではどのくらい、そしてどんな反響があるかな…?と、何となく気になりつつ映画館へ。

平日だったこともあり、入場者はそれ程多くはありませんでしたが、私の個人的な体感では、上映が始まると私を含めその場の観客は、おそらくかなり真剣に観ていたのではと感じました(珍しく雑音がほとんどなかったので)。 終演後、パンフレット売り場に列ができたことからも(これも私が知る限り、この映画館では珍しいです)、心に刺さった方が多かったのかな、と。


以下ネタバレを含みます。


こういう言い方をしてはギル監督に失礼かもしれませんが、イギリス人の映画監督が、これほどまでに「日本」を正しく理解し、描き出してくださったことに、まず感銘を受けました。もし後世の人々が、深瀬昌久さんについては勿論、1950年代〜90年代の生活(地方の一般家庭、都会の団地生活、若者たちの乱痴気パーティー、新宿ゴールデン街のスナック、時代の変化で廃れてゆく地方の商店や家業・ここでは写真館)と、そこに生きた人々のことを知りたいと思ったら、この映画の鑑賞が推奨されて然るべきでは、と思うくらいに、誠実な映画でした。北海道の屯田兵による開拓、大戦を経て、戦後から90年代までの社会の変化など、時代背景をしっかり踏まえている点からも、安心してストーリーに没頭することができました。


深瀬昌久さんと父助造さんとの軋轢の描写(家業である写真館を長男昌久さんに継いでほしい父、芸術家としての写真家を目指したい息子)、高校生の昌久さんへの殴る蹴る暗室に閉じ込めるの暴行は、いかにも昭和の親父という感じ。(これはフィクションで、実際の助造さんは、こんな暴力的ではなかったようです) ただ、シリアスで胸が苦しくなるシーンではありながら、助造さんの風貌の造形や、いつも一升瓶を抱えている描写からも、どこか昔のテレビのコメディを思い出してしまい、不謹慎ながら笑ってしまいそうでした。(助造さんが酒に溺れずにはいられなかった一因は、大戦からの生還者であることから、戦争のPTSDを想像させられましたが。)


そして、写真への情熱とインスピレーションの源、洋子さんとの出会いと、愛と激情の日々。

「女神(ミューズ)」と「母親」は両立し得ない、という二人の関係を表す一つのキーフレーズ。

カメラのレンズを通して「作品」として見られることに、次第に拒絶感を感じ、レンズを通して見ているのは自分(洋子さん)ではない、自分自身(深瀬さん自身)を見ているのだ、と離別の決意に向かう洋子さん。


深瀬さんを演じた浅野忠信さん、洋子さんを演じた瀧内公美さん、お二人の演技が凄まじく、月並みな言い方しかできませんが、本当に深瀬昌久さんと洋子さんがそこに存在しているかのようでした。ギル監督が、この役は浅野さん以外考えられなかったというのも頷けます。浅野さん(深瀬さん)が洋子さんを愛おしく見つめる目、幸せそのものの笑顔、こんなに(時に)酒クズなのに、洋子さんに捨てられてしまうのが気の毒に思えてくるのが不思議。浅野さんの泥酔の演技は、ベネディクト・カンバーバッチさんの薬漬けの演技に匹敵するなぁ…


ギル監督はロックの聖地マンチェスター生まれの元ミュージシャンで、映画製作を志した方。深瀬さんの人生と作品を知り、ぜひとも映画化したいと心を動かされたことが、この作品を観て腑に落ちた気がします。


ちなみに安直な発想ですが「Yoko」という名前で、欧米の方々が真っ先に思い浮かべるとしたら、やはりOno Yokoさん…?海外の観客は、ここにもまた運命の女性Yokoが…という思いで観るのでしょうか。


最後に、タイトルであり、重要な登場人物(人ではないですが…)、「RAVENS」=「鴉」について。

この作品が通常の「伝記映画」の範疇ではなく、「ダークファンタジー」のカテゴリーでもあるのは、謎のクリーチャー〈ツクヨミ(ヨミちゃん)〉の存在によるのですが、制作陣の方々はこのヨミちゃんが観客に受け入れられるか、公開まで不安があったという情報を目にしました。カラスが巨大化し人間と合体したかのようなツクヨミ、深瀬さんが葛藤する度に現れ、彼の心の内なる問答であるかのような言葉を発します。

深瀬さんの代表作『鴉』。「鴉は自分自身だったんだ」という台詞。それらだけでも十分に「RAVENS」という伝記映画は成り立ったのかもしれませんが、ツクヨミという存在を通して芸術とは?芸術家の生き方とは?と問うたギル監督のアイデア、映像のインパクトからも、また、どこか戯曲のような演出に感じられるところも、私は好きでした。


ツクヨミのみ英語で、他の登場人物は皆日本語を話すこの映画、エンドロールが英語だったことで、これが国際合作映画だったことを思い出しました。

この素晴らしい作品を生み出してくださった方々に、心から感謝申し上げます。ギル監督、次はどんな作品を考えていらっしゃるのかな…


「旅する喫茶」さんコラボシリーズからもう一つ。シチズン時計さんの「Q&Q smile solar」より「涙宵(るいしょう)」。この夏、どれだけ旅する喫茶さんに心癒され、また心ときめかされてきたことか。
ちなみにミニトマト2つ分という軽さ、身に着けているストレスがほとんどありません。ベルト部分のシリコンもサラッとしていて快適です。お値段が良心的なところも有難いです。

太陽光でキラキラ✨

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