ここ最近、弁護士業界の市場規模、とかいう話を、どこかでお聞きになったことのある方は結構おられるんじゃないかと思います。
自分もふと気になったので、いったいどれくらいの市場規模なのか、大まかな目安を見るために、ネット上に落ちてるデータを適当につまんで概算してみますね。
10年区切りでは、こんな感じで推移しているようです。
1990年
市場規模 4,300億円(GDP x 0.10%)、GDP 424兆、総人口 12,360万人
弁護士総数 14,000人 → 一人頭売上 3,000万円
2000年
市場規模 6,700億円(GDP x 0.14%)、GDP 475兆、総人口 12,690万人
弁護士総数 18,000人 → 一人頭売上 3,700万円
2010年
市場規模 9,500億円(GDP x 0.19%)、 GDP 511兆、総人口 12,800万人
弁護士総数 30,000人 → 一人頭売上 3,200万円
※わざと雑な計算をしてすみません m(_ _)m
・これは、ムチャクチャ恐ろしいデータです。
市場規模がGDP比で順調に伸びているように見えますが、どう考えても0.2%到達はムリな上、この2000年→2010年の伸びは「過払金」でドーピングかかった数字だということを忘れてはいけません。
「過払金」の底が抜けたらどうなるか、『かなり』どころじゃないレベルだと断言していいです。
※前世紀末ごろ、『米国は訴訟社会だから、日本も20年遅れでそうなる』と言っていた連中がいますが、もし、皆さんがそう言ってた連中を覚えておられて、今もまだそういうのがのうのうと生きてるなら、わざわざ言う必要はないですが、心の中で「極めつけのバカ野郎」だと思っておいてください。
ネタばれしてみりゃ、ホントに超かんたんな話だってのに、あの頃には、どうしてみんながみんな乗せられてしまって、弁護士増員の風潮を作っちゃたんでしょうかね。
かんたんな話です。
我が国は『まるく行く』ことを求める事前調整社会ですから、調整コストを事前に組織内で負担します。これこそが「クソ長い会議」とか社内ニートや「必要以上の空気読み」ていうカタチになって、社会コストとして顕在化するわけですね。
米国は『ヒーローなオレが片付けてやったぜ』を求める(苦笑)事後調整社会ですから、調整コストは事後に組織外に支払います。
これが、未だにそれをもてはやそうとするバカがたくさんいる、米国企業の「即断即決」の大元です。
社会は常に、その構成員・組織に対し、一定量の「イラつくほどに無駄なコスト浪費」を求めます。そのコスト負担は、畢竟、移転させることしかできません。移転先によって顕在化までのタイムラグがまちまちなので、良いタイミングを選ぶことに成功すれば、なんとなくコストカットができたように見える場合があるわけです。
効率化などは究極的(長期的視点では)には不可能です。結局のところ、社会全体・特定組織どちらであっても、技術革新および、無形・有形の社会インフラの積み上げのみによって達成するしかなさそうなんですよね。極端すぎる例ですが、「産業革命前の連中がどれだけ束になっても」「コンピュータ以前の連中がどれだけ頑張っても」「フォード大量生産前のい連中が(以下略)」てな感じです。
努力でなしえる効率化は、階段を一段ずつ上がるに似て、技術革新でなしえる効率化は一階ごとに上がるエレベータに似て、といったところでしょうか。
結局、どこに無駄なコストを放り込んでるか、それだけの差なのでしょう。
この手の話の続きをする機会は、・・・なさそうですね(汗)
まあ、そういうことで、我が国が事前調整型から事後調整型になることは、我々の眼の黒いうちにはないでしょうね。
なので、訴訟社会なんか来やしません。
だから、弁護士市場の拡大もまずありえません。
この誤った予測に基づく増員は、人数ベースではわずか数千~1万人です。
ですが、社会的影響力のもっとも大きなゾーンで、これだけのだぶつきと引き締めと適正化を行おうとするわけです。これが社会全体に及ぼすマグニチュードは、正直予測不可能なくらいです。
大小予測できない、ではなく、どれくらいデカいかわかんない、という予測不可能さです。
所得面から見てみます。
実際にも個人経営的な小規模事務所が多く、東京大阪を除き(大企業対応のために必要な)大規模事務所の出現と統合は起こらず&止まってしまいました。
そして、小規模事務所の平均経費率が60±5%あたりだとされていますので、所得は1990:1050~1350万、2000:1300~1670万、2010:1120~1440万と概算できます。
また、1990年と2000年の数字をそのまま2010年数字と比較できるように補正を掛けると、1990年の所得が実質1220~1570万、2000年の所得は1380~1770万あたりに底上げされることになるため、2010年は既に1990年を下回る所得水準になっていたんだと(後になって)わかる可能性があります。
ロースクール制度の面から見てみます。
導入前(2000年頃)の予測は、2010年の市場規模は14,500億円、2020年は32,000億円になるので、2010年には31,000人、2020年には55,000人が必要だ、という話でした。
ロースクールは2004年に導入され2006年から卒業生が出ていますが、フタをあけてみたらエライことになりそうなんで、新制度での卒業生が出てわずか数年でブレーキを掛けてます。
ここらへんの情報は大学生にキッチリまわっており、今春の志望者激減によりロースクール制度にヒビが入りました、で、来年か再来年にガンガン崩壊していきます。
※大卒者の民間企業への就職難がどうしようもないレベルに陥ってますが、それよりひどくなるだろう、と読まれているということですね。
で、「過払い金」から跳ね飛ばされたダメ連中や、「過払い金」に見切りをつけた連中が家事・人事訴訟に群がりつつあるわけです。
さて、食い詰めた弁護士連中が次の餌場としようと狙っているのが離婚市場ですが、これがまた、びっくりするほど細い、やせた市場なんですよ。
そこに、需給予測すらできない低脳弁護士が殺到するわけですから、トンでもなく恐ろしいことが起こりえます。
いや、起こります、と言ってみよう(笑)。
以下に、H22年度の統計データを記します。
最高裁サイトに直リンクしてますので、そのまま抜けます。
とりあえず10個ほど。
全取扱事件の区分別年次比較
家事審判&調停の細目別年次比較
家事審判の単年度状況
家事調停の単年度状況
全取扱事件の年度末スナップショット(受付/終結/持越:管区別)
全婚姻事件の年度末スナップショット(同上)
家事(人事)訴訟の過年度受入れ状況+単年度受入れ状況
家事(人事)訴訟の第一審終局区分(判決/和解/その他)+終局区分別審理期間
家事(人事)訴訟の第一審種別(人事訴訟/損賠/その他)+口頭弁論実施回数(全事件/争点整理手続事件別)
家事(人事)訴訟の代理人弁護士就任状況+当事者/証人尋問実施状況
家事(人事)訴訟のうち、参与員関与/調査命令の状況
1. 協議離婚が年270,000件ありますが、そのうち代理人をつけるのは10%もないはずです。どんだけ盛っても少ないほうの数%といったあたりでしょう。どう考えても10,000件はありませんが、上限設定でジョブ10,000本とします。
何%かは表沙汰を嫌う「おかねもちの示談」が混ざっているはずですが、それはマジ相続と同じく別市場扱いすべきでしょう。ノコノコ新規参入してきたカッペが喰える機会はほぼ皆無じゃないかと。
2. 離婚訴訟が年11,000件。
ホントなら×2で22,000件の仕事が欲しいところですが、本人訴訟で頑張る被告が結構いるので、上記統計資料ではジョブ17,000本で止まってます。
3. 乙類審判が年18,000件で、乙類調停が年67,000件ありますが、これらはダブり具合がまったく見えないので、弁護士仕事になってるのが何件あるか概算するしかありません。とりま真水部分のジョブは30,000本、うち半分が弁護士マターとして上限いっぱい見てみます。
4. 非乙調停(離婚調停が大半)が年73,000件ありますが、これも詳細があまり見えません。
そもそも非公開だから当然ですが。弁護士臨席はダブル5,000本、シングル10,000本で正味20,000本くらいかな。
そして、この程度のアバウトな情報でも、今後の家事/人事訴訟ワールドがヤバそうなこと(下手したら鉄火場化しかねない)がわかります。
※自分がどれだけいい加減に鉛筆なめて作った数字かってわかっててるからこそ(これ以上増えようがないとわかるだけに)、ビンビンとヤバさが伝わってきます。
1. が10,000本、2. が17,000本、3. が15,000本、4. が20,000本、総計でもわずか62,000件です。
では、単価を盛りまくっていきますね。
まず、1.の単価は「協議なのにわざわざ弁護士をつける」ところからご祝儀単価として@300,000 とします。2.もエイヤ!で@2,000,000、3.もエイヤ!で@200,000、4.もエイヤ!で@300,000としました。
1. 300,000 x 10,000 = 3,000,000,000
2. 2,000,000 x 17,000 = 34,000,000,000
3. 200,000 x 15,000 = 3,000,000,000
4. 300,000 x 20,000 = 6,000,000,000
total 46,000,000,000
盛りまくりの結果、離婚訴訟・調停周りの市場規模は460億円と概算できました。さて、ここに「離婚専業」弁護士を何人いれることができるでしょうか。
2010年の平均売上が一人アタマ3,200万ですから、現在、離婚市場で食ってる弁護士は頭数換算で約1,400人とわかります。
総勢2万数千人とか3万人の業界なのに、この程度の市場規模しかないわけです。相続とかもホントに知れてるので、弁護士業界として念頭に置いている本来の職務領域が企業間だということは納得いただけるかと思います。
※事実、この十数年の業界的な旗振りも、懐かしい「ビジネスモデル特許(失笑)」から火がつくことなく弁護士会的にはスカで終わった(弁理士サマが篭城立てこもりを成功させ安定収入化を確実なものとした)知財分野をはじめとして、ここ数年のなりふり構わぬ「インハウスロイヤー」ネタまで、すべてがビジネス領域の話だったわけです。
要するに、弁護士会自体が、家事・人事案件の下には何も埋まってないことを実証データとして持っているに違いない=だから旗振りすらしなかった、ということです。
で、世間の一般市民と同じ誤解をして「家事・人事なら喰えるはずだ」と思い込んでる弁護士が何人いるかってことですよね。
さて、あと数年で過払い金の底が抜けます。そこで慌てたバカ弁がなだれを打って家事・人事に乱入してきます。一部は「ここはヤバい」と引き返しますが、そういう目先の利くやつならそもそも乱入してこないわけで。
喰えるはずだ、で乱入してきた連中の行動原理はカネだ、ということには、どなたも異存はないかと思います。
・・・さて問題です。
正味、1400人だか1500人だかしか食わせられない「離婚訴訟・調停」分野に、今後アホほど余ってくる弁護士のうち、いったい何人が勘違い突撃をぶちかますでしょう?
※予想ではなく確実に数千名が余ってくるものとします。
答え:わかりません。
・・・だと格好がつかないんで、何とかがんばって見ます。
仮定法でやってみますね。
新規参入者は、最小値で500人とします。
この場合、参入者によって競争相手が3割増えますが、離婚ネタが短期間に3割も上がるわけありません。3割増の場合、頭割りすると2割の収入ダウンを意味します。
こういう目に陥ったとき、たいていのヒトはどういう対応をするでしょうか?
そうですね。
価格競争です。短期調整は価格でなされるんですよ。
だぶつき弁護士のうち、わずか500人程度の参入で、離婚訴訟市場の底が抜けます。
底が抜けて単価暴落した市場で、古参と新参入り乱れの死闘が行われ、数年で勝敗が決してきます。そして、一度落ちた単価を戻すのは本当に時間がかかります。・・・さて、価格の底が抜けた離婚市場で勝ち抜いてきた弁護士先生たちは、次にどのような行動に出るでしょう。
そうです。
事件数アップです。
長期では生産量で調整されますよね。基本以下の基本です。
では、家事・人事ワールドでの「事件数アップ」を目指す「市場開拓」はどのようなカタチとして現れてくるでしょうか。
筋道追って説明するのがしんどくなってきたので飛ばし気味にしますが、そんなに外しては無いはずなんで、まあそれなりの信用度があると考えて読んでいただければ、と思います。
まず一つ目。
協議離婚への介入が増えます。
しかも裁判所に行かないどころかコントロール外にあるので、真っ先に無法地帯化しかねません。
事件屋そのものの展開が続出しても何の不思議もありませんね。
二つ目。
離婚訴訟の件数と代理人就任率を上げます。
件数アップは、調停不調率アップで行いますので、今でも続出している弁護士が馬鹿介入してワヤクチャにされるような調停が増えざるを得ない(もしくは増える傾向を強く持つ、でしょうか)わけです。
三つ目。
そもそもの土台となる調停件数を上げます。
二つ目のアプローチで調停不調率を上げまくったせいで、すでに調停委員や裁判所からの不興を買ってるにもかかわらず、市場開拓にいそしむ弁護士たちは、協議→調停への送り込みをがんばります。
その一方で、調停の現場では一生懸命不調にさせるための立ち回りを繰り返し、調停総件数も増加させるわけですから、調停委員的にも件数増がしんどい影響を与え、不調化への努力が不本意な結末の確率を上げて行きます。
調停制度は、調停委員個人の資質とモラルにおんぶに抱っこしてもらってる制度ですから、このダメージは本気で効く痛いものになりかねません。
こんな風に書いてくときりが無いのでやめますが、細部に差はあるものの、ほぼ鉄板で起こるでしょうね。テレクラ・出会い系ティッシュの代わりに、離婚相談ティッシュが配られる日も近いでしょう。
(ホントにイヤな将来図だな)
弁護士がシャレにならないレベルで人数をだぶつかせるのは規定事項です。
そして、「給料減」だったなら出費減でしのぐ個々人も、個人事務所なりを構えて雇用を起こしていれば、出費減ではなく売上げ確保を目指すのが人情というものでしょう。
新規参入の身軽なヤツはともかく、もとからそこに食ってきて根っこが生えているヤツが戦い抜くため、過当競争は必ず起こってしまいます。
さて、修習費の貸与制度スタートで、新人弁護士の大半が過剰債務状態での勤務開始になります。
ノキ・イソ弁になれて、ボスに前貸ししてもらう連中もいるでしょう。でも、それはボスからのノルマ増として必ず呑まされる条件として帰ってきます。
おそらく、「離婚そそのかし」 「連れ去り指南」 「DV冤罪推奨」は怒涛の勢いで増えていきます。これは、弁護士のモラルの問題でも、夫婦関係の問題でもなんでもありません。
まず、弁護士を引っ込みのつかない時間と金銭を投入しなければなれない職業にしたこと(旧司法試験は、そういう意味では「試し受験」の多い試験だったかと思いますが、現制度での「試し」は原理的に不可能です)、次に、ロースクール制度に賛同してくれた大学に恩を売るため、生徒数過剰の状態を修正することを敢えて遅らせたことが何よりのダメージとして利いて来るでしょう。
まさか、こんなどうでもいい話の影響が、婚姻関係という大事な領域に集中して現れてくる、という、10年前には誰も予想できなかった光景が見えてきそうです。
DV法は改定されないまま、ハーグ条約批准はなされないまま、共同親権化など夢のまた夢、状態のまま、「係争を起こしたくて仕方ない飢えた弁護士」が野に放たれます。(何よりもすごいのが、この↑文章に一片の予測も混じっていない:オール既定事項だということですね)
高い授業料と年数を費やしてようやく就職できた(いまさら別の仕事に就けない)、借金を背負わされた上にダブつかされた若手弁護士が大量に野に放たれること、今までの所得水準を維持するために若手を迎え撃つベテラン弁護士のバトルから、この結論まではほぼ一本道です。
最も有効なのは、そうなる前に「家事・人事では食えない」という実績に基づいた知識を弁護士どものアタマに叩き込むことです。
何の効果も無いかもしれませんが。
到着時刻と高さの予想はまだ困難ですが、津波は必ず来ます。
※「離婚専業」を看板にしてる弁護士ほど怪しい、というのは何度か言ったことあるかと思いますが、正確を期するために追記しておきます。
どんな低いシェアであっても、個人を生かすには十分すぎるほどの広がりを持っているので、相応の専門性と確実な好評価があって、リピーターが確保できていれば「専業」を維持することは可能です。
しかし、離婚訴訟は一発限りの要因が強すぎて、個人的なリピーターは基本的に確保不可能です。
そういう意味では、「ある親戚一族」や「ある友達グループ」内でのリピートに期待することになりますが、そんな範囲で評価を維持するのがどれだけキツいか、という観点も当然に持つべきです。
あと、男性向け市場と女性向け市場も、微妙に性格が異なるので、別市場と言っても良いかも知れません。 端的に言って、男性同士の交際・情報共有形態と女性同士のそれがかなり異なるために、「良い評判」の着実な伝播と継続度合いがまったく変わってしまいます。
その結果、顧客としての忠実度は男性市場のほうが格段に高くなるはずです。
要するに、確固たる地位を築いていて、確固たる様子が見てわかるような「専業」でなければ、事実上の眉唾だと判断して良い状況が到来する可能性が高い、ということですね。
追伸:悲観情報を流して楽しい事などまったくなく、ガチで落ち込む自分がいます。
もし何かポジな情報や見通しがあれば何でも教えてください。
よろしくお願いいたします。
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