江戸川乱歩賞受賞作ということで非常に楽しく読みました。
著者は佐藤究さん。
一家みんなが殺人者という設定は『悪魔のいけにえ』などの先行作品を思い出させます。
殺人一家の娘がヒロインで自分と家族にまつわる謎に分け入っていくというストーリー。
これ、東京出張のお供にと文庫で買って読んだのですが、面白くて行きの新幹線とホテルの夜とで読了してしまいました。
ここで扱われている「鏡」のテーマは次作『ank』にも続いていきます。
ミステリーというよりも、心の迷宮を彷徨う少女の冒険物語と見なしたほうがすんなり楽しめるでしょう。
殺人や国家などのモチーフが深く考察されていて、その理屈だけでも十分スリリングで満足できる。
この手の感じは苦手な人も多そうで、乱歩賞審査員の湊かなえさんも苦言を呈したと言われています。
個人的にはかなり好きですね。この家族の住まう家の画が頭の中にくっきりと浮かびました。
作中で言及されているジャック・ラカンにも挑戦してみたくなりました。
ただし、事件のあり得なさの謎解き自体は想定を超えないという意見はごもっともだと思います。
京極作品、とくに姑獲鳥の夏などが好きな人にもおススメです。