普段、人の話をよく聞いているつもりが、本当にその人が言いたいことをそのまま聞いていることは意外に少ない。
自分の関心のあることだけ聞いていたり、都合のいいように聞いていたり、先走って勝手に先を想像して聞いていたりする。
あるいは、すきあらば反論しようとして、理解するためでなく自分の考えとの違いを見つけるために聞いていたりする。
そして最後まで聞かずに、すぐ口をはさむ。
多くの人は人の話を聞くより、自分が話すことを聞いて欲しいのだ。
みんながそう思っていたら、ただ言いたいことの応酬で言葉は空中に飛び交うだけだ。
言葉の奥にある気持ちまで含めて、真に共感的に理解しようとして人に耳を傾けることは、なかなか難しい。
本当に深く聴きあうことができたら、どんなにお互いの理解が深まるだろう。世界はどんなに平和になるだろう。
持った人だけが心の底から話し、持たない人は全身全霊を傾けて聴く、という「トーキング・スティック」を使う場で、私はずいぶん深く「聴く」ことを学んだ。
人の言葉やその奥にある気持ち、さらには発言の背景となる価値観やそれを育んだ人生史まで想像して聴くようになる。
途中で口ははさめないから、その人の文脈で最後まで一緒に寄り添いながら聴く。
その人が感じたことは、その人なりの真実だから、正しいとか間違っているとかの問題ではない。
批判するのでなく、そのまま聞き届け、受けとめればいいのだ。
様々な感じ方や考え方があることを素直に受け入れられれば、その多様な違いを豊かさとして感じることもできる。
そして、自分が話すときに、しっかり受けとめて聴いてもらえると、他の人の話もしっかり聴こうという気になるものだ。
また、自分自身をも深く聴くことを学ぶ。
「今、感じていること、本当に話したいことを話せ」と急に言われても、じっと自分自身に耳を傾けないとわからない。
自分が今感じていることって何だろう、本 当に話したいことってなんだろう、と。
『ワークショップ』(中野民夫著):岩波新書から
この一文、いいでしょう!
仲のいい研修講師から教えてもらいました。
ある研修団体のテキストで引用されていたそうです。
「無視と傾聴」のワークを行って、教室が盛り上がる。
そうして、「どうです、聴くということの大切さがわかりましたか。部下の話を聴いていましたか?」などと適当に言う講師のおおいのが現状です。
ワークショップ―新しい学びと創造の場 (岩波新書) | |
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