「リク魔人」の妄想宝物庫様
のseiさんより、
罠を奪取して参りました☆(ノ∀<)
あ~いろすとまいうぇい。
以下より本文です。
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a dense fog
「カーット!!二人とも、お疲れ様!!クランクアップです!!」
「「「「お疲れ様です!!!」」」」
監督がクランクアップを告げ、ざわつくスタジオ内。
彼女がこの後フリーだというのは社さんに予め確認を取っている。
一刻も早く彼女を氣比から遠ざけたい、
思いを伝えたいと逸る気持ちを抑え、彼女のもとへと歩を進めた。
「…たよ。」
「…っ!」
…なんだ?
離れ際、氣比が彼女の耳元へ顔を寄せ、何かを囁いた。
そして、それを聞いた瞬間キョーコは固まったかと思うと、
そのまま俯いてその場にへたり込んだ。
急いで彼女のところへ向かおうとしたら、
すれ違い様に氣比がニヤリと笑い、肩に手を置いてきた。
「…お疲れ様です、敦賀君。」
「貴様、キョーコに何をした?」
「特に何も?疑うのなら、彼女に聞いてみるといいですよ。」
「……。
…最上さん、どうかしたの?大丈夫?」
そのままマネージャーの方へと歩いていく氣比を視界から外し、
キョーコに声をかけた。
「敦賀さん…。いえ、特に、何も…。」
「京子ちゃん?具合でも悪くなったの?」
そう言う彼女は俯いたまま目を合わせようとせず、
明らかにいつもとは違う様子だった。
心配したのか後ろから社さんも声をかけた。
「いえ、本当に大丈夫ですから。
撮影が終わって少し気が抜けてしまっただけです。」
「その状態で車の運転をさせるのは心配だから、送っていくよ。
この後はオフなんだろう?」
気が抜けたというにはその声はあまりに弱々しいものだった。
この後、彼女と話をしたいと思っていたこともあり、
俺は家まで送っていくよと声をかけた。
「いえ、敦賀さんにご迷惑をおかけするわけにはいきません!」
やっと顔を上げて答えてくれたが、顔色も悪い。
しかしこれ以上言っても遠慮して取り合ってはくれないだろう。
そう判断して俺は少し強引に話を進めることにした。
「迷惑なんてことないから!社さんも乗って行って下さい。一緒に送ります。」
「あ、ああ。」
とても車を運転させて帰らせる気にはなれず、強引に話を進め、
彼女の腕を掴み、立ち上がらせようとしたその時だった。
「敦賀君、悪いけど京子さんは俺と先約があるんだ。」
俺の手を掴んで氣比がそう声をかけてきたのだ。
「…最上さんは体調が悪いようですので遠慮させて頂きます。」
掴まれた手を振り払い、睨みつけた。
しかし氣比は余裕綽々な顔でキョーコに声をかけた。
「京子さん、体調悪いの?」
「いえ…私は大丈夫です。
社さん、そういうことですので、
申し訳ありませんが先に帰って頂いても宜しいでしょうか。」
「なっ、最上さんっ?!」
「キョーコちゃんっ?!」
彼女の口からでた言葉が信じられなくて、目を見開いた。
再び腕を掴み、氣比のところへ移動しようとする彼女を引き止めた。
「敦賀さん、ご心配頂き有難うございます。でも、本当に大丈夫ですから。」
「そんな顔色で言われても全く説得力がない!今日はもう帰るんだ!」
「いいから離して下さいっっ!!!」
彼女の声がスタジオ内に響いた。
一斉に周りの空気が凍る。
「…すみません、でも、本当に大丈夫ですから。
氣比さんのおっしゃるとおり、約束があるので私はここで失礼します。」
「え、ちょっ、キョーコちゃんっ?!」
「社さん、送ることが出来ずすみません。皆さん、お先に失礼しますね。」
「そんなに心配なようなら俺が彼女の車を運転させてもらいますよ。
では、失礼します。」
「……。」
氣比は彼女の肩に手を置いて、馬鹿にしたような表情をこちらに向け、
彼女と一緒にその場を去っていった。
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「おい、蓮っ!蓮っ?!」
「え、あ…社さん?…すみません、ボーっとしてました。」
「いいから、早くこっちに来い!!」
強引に腕を引っ張られ、キョーコの楽屋へと連れて行かれた。
どうやら数分あの場で立ち尽くしていたようだ。
キョーコが声を荒げたことと、その場で固まっていた俺に、
何があったのかと不審に思ったスタッフたちは、
社さんが誤魔化してくれたらしい。
「あれ、どういうことだよっ?!
一体なんでキョーコちゃんが氣比と約束なんかしてるんだ?!?!」
「俺が聞きたいくらいですよ。
…社さん、今から社長のところに向かいます。準備して下さい。」
「え、それ…社長にはれ「今から行くと連絡して下さい。」…わかった。」
なんであんな奴と二人きりで約束を?!
氣比について行こうとする彼女にそう問い質したかったが、
“離して下さい!”と強い意志で言い放ったのを見て、
…キッと睨むような目で見据えられたことで、
俺は何もできなくなってしまった。
意識を取り戻した後、キョーコに電話しても、
コール音が響くだけで電話にでる気配はない。
どうやら社さんが電話しても同様らしい。
しかしあんな奴とキョーコが今も二人きりでどこかにいると考えただけで、
はらわたが煮えくり返りそうだ。
この状況を打破するべく、俺と社さんは社長のところへ向かった。