前の記事にも書いたように、
いまパスカルの『パンセ』を読んでます。
とうとうあの一節に到達したので、
省略なしで引用します。
「思考が人間の偉大をなす。
人間は自然のうちで最も弱いひとくきの葦にすぎない。
しかしそれは考える葦である。
これをおしつぶすのに、
宇宙全体は何も武装する必要はない。
風のひと吹き、水のひとしずくも、
これを殺すのに十分である。
しかし、宇宙がこれを押しつぶすときにも、
人間は、
人間を殺す者よりもいっそう高貴であるだろう。
なぜなら、人間は、
自分が死ぬことを知っており、
宇宙が人間の上に優越することを
知っているからである。
宇宙はそれについては何も知らない。
それゆえ、
われわれのあらゆる尊厳は
思考のうちに存する。
われわれの満たすことのできない空間や時間からではない。
それゆえ、
われわれはよく考えるようにつとめよう。
そこに道徳の根源がある。」
(筑摩書房『世界文学全集11 モンテーニュ・パスカル集』)