読書中のロベルト・ボラーニョ『2666』の第2章より。

 

前世はトラークルだったかもしれない、とまで思われる教養豊かな薬剤師に好きな本は何かを聞くシーンがあった。
語り手はその回答にちょっと失望する。
彼は大作でなく、小品を好んだのだ。

 

『審判』でなく『変身』
『白鯨』でなく『バートルビー』
『ブヴァールとペキュシュ』でなく『純な心』
『二都物語』『ピクウィック・クラブ』でなく『クリスマス・キャロル』

 

その後の言葉が熱い。

 

「いまや教養豊かな薬剤師さえも、未完の、奔流のごとき大作には、未知なるものへ道を開いてくれる作品には挑もうとしないのだ」

 

「彼らが見たがっているのは巨匠たちが剣さばきの練習をしているところであって、真の闘いのことを知ろうとはしないのだ。巨匠たちがあの、我々皆を震え上がらせるもの、戦慄させ傷つけ、血と致命傷をもたらすものと闘っていることを」

 

と、いうわけで、今年はなるたけ大作に挑もうかな、と思った次第。
重い本を読むと体力向上にもつながるし。
寺山修司が肉体労働としての読書について書いてたっけ(うろおぼえ)