【清瀬校】2024年入試の国語の問題(出典編②)

こんにちは。清瀬校の山﨑です

今回は前回に引き続き、『2024年度入試における国語の長文問題の出典(小説編)』について具体的にお話させていただきます。

今年の入試での一番の注目作品は、文句なしに辻村深月の『この夏の星を見る』でしょう。

何と言っても高校入試において、東京都立の入試問題と埼玉県立の入試問題の両方で小説分野の長文問題の題材になったんですから。他にも群馬県や愛知県の公立高校入試でも出題されたようです。

少なくとも、新刊本の同一作品から、東京と埼玉の公立高校入試の国語でその翌年に同時に出題されたというのは私の記憶の範囲内ではないですね。(もっとも『私の記憶』というのが怪しいと言えば怪しいんですが…)

しかも、今年は東京都と埼玉県の公立高校入試が同一日(2月21日)に実施され、合格発表も同一日(3月1日)という異例の年でした

中学入試においても、学習院女子・品川女子・東京農大一・芝浦工大附属などで出題されたようです。

前回のブログでも触れていますが、辻村深月は私の好きな作家の一人です。当然、私も新刊本が出たところですぐに書店で買って読みました

そして、読み終わった直後の感想は、『これは中学入試に出るぞ、間違いなく』でした。

ただし、その時点では、よもや高校入試でもこういう形で出題されることになるとは思ってもいませんでした。

全国の中高生が天体観測を通してコロナ禍に向き合っていく姿を描いたストーリーで、テーマ的にも今の時代にとてもマッチしていたと言えるでしょう。

入試問題の作り手が題材としてこの作品を選びたくなる気持ちは、同じように問題を作りまた分析する立場としてとても理解できます。まさに絶妙のタイミングで出版された本だったんです。

次に挙げたい注目の作品は、宮島未奈の『成瀬は天下を取りにいく』ですね。言わずと知れた4月10日に今年の本屋大賞に選ばれたばかりの作品です。

恥ずかしいことにその後で知ったんですが、1月31日には坪田譲治文学賞も受賞していました。実は、この賞を取った作品は、過去に中学入試で数多く取り上げられています。

1988年　第4回『四万十川　あつよしの夏』(笹山久三)

1994年　第10回『オサムの朝』(森詠)

1995年　第11回『泣けない魚たち』(阿部夏丸)

1998年　第14回『ナイフ』(重松清)

1999年　第15回『ウメ子』(阿川佐和子)

2001年　第17回『翼はいつまでも』(川上健一)

2006年　第22回『空をつかむまで』(関口尚)

2007年　第23回『しずかな日々』(椰月美智子)

2011年　第27回『鉄のしぶきがはねる』(まはら三桃)

2016年　第32回『Masato』(岩城けい)

2020年　第36回『もうひとつの曲がり角』(岩瀬成子)

ちなみに、この坪田譲治文学賞を取った作家は、その後も中学入試で別の作品がよく出題されるということも覚えておいた方がいいですよ

実は、前回のブログで、私が中学入試でドンピシャで的中させたという話をさせてもらった森詠の『少年記』は、第10回の坪田譲治文学賞を取った『オサムの朝』の続編にあたります。『オサムの朝』はその翌年の中学入試で出題されていました。したがって、その続編もまた中学入試に出るであろうことは予想した上で、『新刊本対策プリント』を作ったということです