Startin' over… -79ページ目
蒸し暑い昼下がり、駅へと歩く。風が吹くわけもなく、涙は渇かない。その流れる雫の一滴一滴は、気温よりも熱く感じる。頬を伝いながら、決して冷えることを知らない。


さっきまで触れられたものが、もう触れられないのだ。奴はもう私のものではない。もう私の胸に、頭を埋めることは無いんだ。その事実を受け入れ、納得させる方法を考えることが、唯一あふれ、流れ出すものを止めるためにできる最大限のことであった。

ホームに立った頃には、普通の顔になってただろう。内心なんて、誰も悟ることはないから、それで十分であった。

ただ、なんで昨夜まで抱き合ってたのに、たった数10分前にいきなり、必要ないと言われたのが、悲しいというよりも理解できないという歎きがこみ上げてくると、自ずとまた視界がぼやけようとしてきた。
涙は流れたけど、何とか平静な表情を保っていただろう。

「じゃあな、気をつけて行けよ。」
奴は原チャ、私はバス。明日以降のテストに備え、お互い違う経路で休日の大学へ向かう。

奴の笑顔。私の泣き顔。 奴は吹っ切れたような奴の笑顔。
私の涙が流れたことが、そんなに幸せだったのだろうか。

「サナのことはもう吹っ切れた。求めるところは、手に入らないんだよな。」
そう言い残した。
久しぶりの制御できない涙。
「未来のない関係は続ける気はないし、こんなのセフレみたいで気が狂いそうだ。」



「俺は家のような男になりたい。何て言うか、家に帰ればこいつがいてくれるっていう安心が欲しい。」



奴の傍に寄り添って肩を抱き、左手を握りしめる。
せめてものプライドだった。
私は奴が求めて私が与えることができなかった奴にとっての安らぎにずっとなろうとしていた。