そろそろ夏期講習の準備をしなければならない。
「先生、文法って問題集一周やるより仮定法なら仮定法で何週かした方いいの?」
春から入会した女子生徒さんが尋ねる。
「もちろん!Vintageと学校の問題集、塾からだしたプリント、横断していいから
確実な部分をつくって行こう。」
「先生、模試返って来た。」
彼女は少しがっかりしたように成績表を取り出した。
確かに志望校までの道のりは遠い。
でも現役生は最後の粘りが効く。
「大丈夫。これからだから。今はみんなこんなもんだから。
一個ずつできることをつくって行こう。関係詞までは今まで復習してきたんだから
これから。読解に不安あるなら1年のリーディングのテキスト持ってきて。
構文、日本語訳、自分でつくってみよう。」
「大丈夫かなぁ。」
「まずは模試の解き直ししよう。」
「最後の長文時間無かった。」
確かに大問6は全くマークされなていなかった。
「そうか。確かに長文は時間かかるから、いかに文法問題を早く解くかだよね。
秋になったらでスピード上げる練習しようね。そのために今は何回も復習して
確実に解けるものを増やそう。
今回出て来た不定詞、動名詞の該当ページ宿題にだしておくからやってみて。
質問あったらすぐに来ること。では頑張ってね。」
「先生!質問なんですけど。」
また別の女子生徒さんが問題集を持って駆け寄って来た。
「なんで( )の後ろSとVしか無いのにwhichじゃ無いんですか?」
「よし!2文に分けてみよう。whの前にあるのが共通点だよね。」
すなわち関係代名詞と先行詞の話。
死んでもこの二語は使いたくない。英語の文法用語など不要だ。大っ嫌い。
そんなもん覚える暇あれば英単語を30個覚えた方が効率がいい。
短期間で合格へと導くため下した結論だ。かれこれ4年ほど
独自の用語で授業をしている。
「HeがS. used to liveまでV. in the town.にどーでもいいかっこ。
the townが共通点(先行詞)だよね。
どうでもいい部分(副詞節)に共通点があるよね。
だからin which を用いることは可能。
He used to live in the town in which the International conference was held.
もしくはHe used to live in the town where the I.C was held.」
私は英語の専門家では無い。英文科出身でも無い。
確かにこの塾では英語の主担当はしている。
わかりやすいと定評を頂くことも多々あった。
だが響かない生徒さんがいることも事実だ。
「わかった?」
「うん。思い出した。」
手を動かす様子は皆無。
「書いとかなくていいの?」
「たぶん大丈夫。」
大丈夫なはず無い。意訳で解釈した結果、④のused toを選べなかったあいつ。
春に復習していて、受験生なら常識として知っているものだ。
その過去問の出典は、志望校よりも偏差値が低い大学。
「”かつての彼”、はい英語で書いて。」
「うんとね、え、なんだっけ。
He ・・・。」
「what SV.これ使ってやって。」
「What he was じゃだめ?」
「まぁ・・いいけど。確かに同じだけど。
もう、what he used to be いっしょにやったよね?私じゃなくて
藤原先生とねー!藤原先生泣かしたら私が許さん。」
また笑ってごまかす気だ。
「いいから書いておいて。じゃあbe used to もの・ひと・ことor Ving(名詞or動名詞)は?」
「昔の・・?」
「ちょっと待て、手前にbeあるよ。」
「え、なんだっけ!やばい ど忘れした。」
<~に慣れているだよ。・・>
こんなにぶっ壊れたやり方でいいのだろうか。
「何も無ければ、30までに死んじゃおうかと思った。」
親友に電話をかけてしまった。
朝の4時。
この時間まで話し込むことはざらにあったが、
よく考えてみると昼夜逆転している。
急にあいつの放った一言が頭に浮かび、とっさにとった行動がこれだ。
あの時、抱きしめるべきだった。
自分の身に置き換えると、そんな言葉を吐露できるのは側にいてほしい人間のみ。
あいつがどれだけ私を信頼しているかは知らない。
「ごめん、旦那とドンキに買い物行ってた。」
LINEにメッセージが入っていたが無視してしまった。
眠れずに某私立大学の過去問を解く。
自分の至らなさを体で感じるためであった。
もうすぐ現代文の講習も始まる。
こんな生活をしていて十分な仕事ができるのだろうか。
嫌でも昼には起きて過去問研究、傾向と対策をさらった上で
テキストに落とし込まなければならない。そんなカリキュラムを下書きしたわけなのだから。
いくら夕方に最 高の状態を持って行こうという考えでも、
これじゃ体が持たない。
昼に活動し、夕方から夜にかけて働く。
普通の学生はそうなのであろう。
眠くなったら負けだ。
だけど、朝日に誘われ目を閉じてしまいそうだ。
親友に電話をかけてしまった。
朝の4時。
この時間まで話し込むことはざらにあったが、
よく考えてみると昼夜逆転している。
急にあいつの放った一言が頭に浮かび、とっさにとった行動がこれだ。
あの時、抱きしめるべきだった。
自分の身に置き換えると、そんな言葉を吐露できるのは側にいてほしい人間のみ。
あいつがどれだけ私を信頼しているかは知らない。
「ごめん、旦那とドンキに買い物行ってた。」
LINEにメッセージが入っていたが無視してしまった。
眠れずに某私立大学の過去問を解く。
自分の至らなさを体で感じるためであった。
もうすぐ現代文の講習も始まる。
こんな生活をしていて十分な仕事ができるのだろうか。
嫌でも昼には起きて過去問研究、傾向と対策をさらった上で
テキストに落とし込まなければならない。そんなカリキュラムを下書きしたわけなのだから。
いくら夕方に最 高の状態を持って行こうという考えでも、
これじゃ体が持たない。
昼に活動し、夕方から夜にかけて働く。
普通の学生はそうなのであろう。
眠くなったら負けだ。
だけど、朝日に誘われ目を閉じてしまいそうだ。
仕事ばりばり
大酒飲み
ニコチン中毒
姉御肌
頼れる先輩
そんな風に語られる。
自分自身そのキャラクターに違和感は無いし、そうやって後輩から言われるのも悪くない。
故にモテるタイプでは無い。
「とっつきにくいんだべさ。」
慎吾から言われた。
まともな彼氏を作るように言われては泣いていた日々。
昼間のデート、ドライブ、海、夜景の見えるレストラン、何一つ彼氏らしいことをしてもらった記憶は無い。むしろ、そんなことを真剣に望んでいた二十歳の頃の自分を恥ずかしく思うばかりであった。
休みの日を一人で過ごすこと、電話やメールに対しうざい・重たいと言われること、
またそれらを控えることに慣れてしまったこと。これが一番悲しいことだ。
別に好きで一人でいるわけじゃないし、強くなったわけでも無い。
乱暴に生きるしか無いから、目標も無いのに目の前の仕事にぶち当たる。
それで適当に自棄酒をする理由を見つけては、おじさま方しかいない居酒屋で
ビールをあおる。
興味本位でかけられる声は一切遮断。かわいくない女になることを心がけていた。
そうしたら、知らぬ間に上記のように語られるようになっていた。
「一人で飲む以上、酒しか飲みたくない。
別に出会いなんか求めてねーし!!。」
ろくに酔ってもいなかったが、バドワイザーの瓶を叩き付けバーで叫んだこともある。
またいつかは無駄に絡んでくるバーテンがうざくて、ウィスキーを一気飲みさせ
潰したこともある。
誘われない女は惨めである。
それは慎吾の思うツボである。
「塾生に見られないように、5m後ろ歩いて。」
繁華街。
カップルたちが手をつなぎながら週末の街を楽しんでいる。
私と慎吾は離れて歩く。
「さぁ着いた。」
なぜか入ったのは仕切りもろくに無い昭和っぽい居酒屋。
おじさんしかいない。
騒いでたサラリーマンたちが私たちの方を見る。
慎吾は何食わぬ顔してビールを注文する。
ペールグレーの無地のワンピースを着ていた。
焼き鳥を焼く煙がむんむん立ちこめている。
帰りたい気持ちに襲われた。
泣きそうになりながらも、慎吾は私の顔を見ない。
「早く食えよ、じゃないと俺全部食っちゃうから。」
先生の面影は無い。
店を飛び出したかったけど、次はいつ会えるかわからない。
ギラギラした親父たちの視線が私たちの方に突き刺さる。
「お前、ウーロン茶でいいか?」
確かに当時私は未成年。
だけど、今と同じくらい大酒を煽りたいくらいの怒りに襲われた。
「こんなはずじゃなかったのに。」
別に懐かしんでいるわけでは無い。
現在仕事帰りに立ち寄るのは、そんなような赤ちょうちんが下がっているような居酒屋。
なるべくしてなったのかもしれない。
よくも私を強くしてくれたね。
大酒飲み
ニコチン中毒
姉御肌
頼れる先輩
そんな風に語られる。
自分自身そのキャラクターに違和感は無いし、そうやって後輩から言われるのも悪くない。
故にモテるタイプでは無い。
「とっつきにくいんだべさ。」
慎吾から言われた。
まともな彼氏を作るように言われては泣いていた日々。
昼間のデート、ドライブ、海、夜景の見えるレストラン、何一つ彼氏らしいことをしてもらった記憶は無い。むしろ、そんなことを真剣に望んでいた二十歳の頃の自分を恥ずかしく思うばかりであった。
休みの日を一人で過ごすこと、電話やメールに対しうざい・重たいと言われること、
またそれらを控えることに慣れてしまったこと。これが一番悲しいことだ。
別に好きで一人でいるわけじゃないし、強くなったわけでも無い。
乱暴に生きるしか無いから、目標も無いのに目の前の仕事にぶち当たる。
それで適当に自棄酒をする理由を見つけては、おじさま方しかいない居酒屋で
ビールをあおる。
興味本位でかけられる声は一切遮断。かわいくない女になることを心がけていた。
そうしたら、知らぬ間に上記のように語られるようになっていた。
「一人で飲む以上、酒しか飲みたくない。
別に出会いなんか求めてねーし!!。」
ろくに酔ってもいなかったが、バドワイザーの瓶を叩き付けバーで叫んだこともある。
またいつかは無駄に絡んでくるバーテンがうざくて、ウィスキーを一気飲みさせ
潰したこともある。
誘われない女は惨めである。
それは慎吾の思うツボである。
「塾生に見られないように、5m後ろ歩いて。」
繁華街。
カップルたちが手をつなぎながら週末の街を楽しんでいる。
私と慎吾は離れて歩く。
「さぁ着いた。」
なぜか入ったのは仕切りもろくに無い昭和っぽい居酒屋。
おじさんしかいない。
騒いでたサラリーマンたちが私たちの方を見る。
慎吾は何食わぬ顔してビールを注文する。
ペールグレーの無地のワンピースを着ていた。
焼き鳥を焼く煙がむんむん立ちこめている。
帰りたい気持ちに襲われた。
泣きそうになりながらも、慎吾は私の顔を見ない。
「早く食えよ、じゃないと俺全部食っちゃうから。」
先生の面影は無い。
店を飛び出したかったけど、次はいつ会えるかわからない。
ギラギラした親父たちの視線が私たちの方に突き刺さる。
「お前、ウーロン茶でいいか?」
確かに当時私は未成年。
だけど、今と同じくらい大酒を煽りたいくらいの怒りに襲われた。
「こんなはずじゃなかったのに。」
別に懐かしんでいるわけでは無い。
現在仕事帰りに立ち寄るのは、そんなような赤ちょうちんが下がっているような居酒屋。
なるべくしてなったのかもしれない。
よくも私を強くしてくれたね。