あいつを真ん中にはさみ、結局閉室までこれからの勉強について話をした。
伊藤先生がいる。だからこそ、私がしゃべることはせずただ横にいた。
仲良く3人で教室を出る。あえてエレベーターは使わず。
おそらくあいつと伊藤先生はこれからごはんでも食べに行くのではと思っていた。
だが出てきたのは意外な言葉だった。
「せっかくだから、先生と帰んなよ。いっぱいお話聞いて。じゃ」
伊藤先生はこれからゼミの会議があるらしい。
教室の前のコンビニで別れた。
私たちは、”いつも通り””いつもの”道を歩いていく。
何も特別なことではない。
「大丈夫?元気?」
「元気ですよ、元気って聞かれたら元気じゃなくなるし、怒ってる?って聞かれたら
怒る。そんな性格。」
「あらそう、ごめん。じゃあもう言わない。別の話しよう。」
明らかに不機嫌な表情をしているとき、帰り際に聞いてしまうことがある。
もし何かあったのなら?私が何かしてしまったのではないか?
そう思って聞いてしまうことがある。
自分本位なのだろうか。
今日だって、昨日だって、出勤し顔を合わせたら寂しそうな表情をしていた。
何に対し、何を感じているのか、ますますあいつがわからなくなる。
言葉を発せず数メートル。
どうしてこうもまぁ、カジュアルな話題ができないのか。
もっと普通の学生だったら、もっと普通の恋愛をしてきたなら、
もっと普通の家庭環境で育ってきたなら、
もっとまともな話ができたのかもしれない。
語るのが面倒な経歴。
聞かれない限り答えないようにしてきた。
また常に聞き役に逃げることで、語らずしてその場をやり過ごしてきた。
それ故事実に盲目な人間からは誤解されてきた。
それで不利な立場に追い込まれることもあった。
そして今後だってそうなるのかもしれない。
そんな時には、一人でいいから、目で見て判断できる人間、
寄りかかる存在、そんなものを渇望するのであろう。
近くにいると思うから欲しくなる。甘えなのかもしれないが。
伊藤先生のように、学生生活の一部を語るのも悪くないだろう。
一部なら
でも無理だ。
「大学に入ったら何したいの?」
「特に無い。」
意図の無い質問。宙に消えるだけだ。
私だってそうだった。
学生生活に何かを求めることには懐疑的だ。
ただ多くは得た方のは否めないが。
「ゲームしたい。」
「何のゲームするの?」
「あれ言いませんでしたっけ?ポケモンの話。」
「あ、そうだった。」
結局私の家の付近まで、ポケモンの話をさせた。
ゲームは全くやらない。
151匹の時代で記憶が止まっている。
聞いてもつまらないリアクションしか返せない。
そこにはただただつまらない女がいた。