「ねぇ、これなんの意味あるの?」
「え、倒置だよ。」
「絶対嘘でしょ。」
「五文型つくっといていいよ。」
報告書の片隅の”SV”と”CSV”が何を意味するのか、知りたがっている。
質問は小学生と同じ。
興味深さも子供と同じ。
一応内心ほめている。
実際は”スーパーバイザー”と”チーフスーパーバイザー”。
すなわちこのエリアでは、使えない社員により捺印される欄なのだ。
「いっつもはぐらかす。」
「noticeでもseeでもletでも好きなの使いな。」
「先生、追試いつやるの。」
「21時。」
帰すにはいかない。
自分の授業が落ち着くのがその時間、というのももちろんある。
ただ家で勉強しているようにも見えない。
50点中28点。
時制、助動詞、不定詞。あらゆる得点源問題を盛り込んだのに、
それらをないがしろにしてきたことを露呈された。
「ねぇ、構文プリント持ってきた?」
「あ、忘れた。」
宿題を探すふりして忘れたとケロッとしている小学生と幾分違いはない。
「じゃあ今から刷るから、21時までに仕上げて。」
適当に生きるのは勝手だが、行き着く先でボロボロになる覚悟もできていない。
ならば、用意された道であろうと散々利用して自ら歩いてみてはどうだろう。
高額の学費で舗装された受験生という経路を、
あいつの首を引っ張って、引き摺り進んでいるような気分。
それでもって私は生活をつないでいる。
「先生、これ終わったら出した方いいの?」
「うん、頂こうかな。」
「その前にごはん食べてきていいですか?」
はい、私の食事休憩のタイミングが消え去った。