どうしてそうなったかはわからないけど、精神的に発狂しそうになった。
深夜12時、付き合いの飲み会を適当に済ませ、見送りが済んだ後駅前を通る。
北口のすぐ横の喫煙所で落ち着く。
手にはすでに缶ビール。
本音を話せる人など誰もいない。
誰が味方なのかわかならい。
そんな時に頼るのは慎吾であった。
だけどもう頼れない。
一人で耐え抜くこともしてきたけど、今回は本当に辛い。
こっちにいる親友に電話をかけた。
酔って電話しても、酒癖悪いなんて認識しない貴重な飲み友達。
「おっつーー。ごめんね、電話して。」
「どうした?」
「おごってもらった。」
「え?なんで」
「就活のウェブテストやってやっただけ。」
「へーそれで。」
「うん、さんすうと国語やった。酒入ってたけど。」
どうやらこの会社は、お客様であるご家庭のことなどどうでもいいらしい。
多額の授業料をぼったくるなら形だけでもいいから最高のサービスを提供する姿勢を
とったらどうだ。
騙すなら、幸せを感じさせるほどうまく騙したらどうなのか。
事実講師、すなわちアルバイトは使い捨て。給料の未払いを起こしかねないシステムさえ
構築されている。またそこから出る苦情を処理する部署は、授業を持てない講師を雇ったコールセンターであるのだ。
だから私たちの声が上に届くことは無い。
会社に期待していないのは入った時からであった。
お客様が払う授業料の8割は、会社に入る。
しかしご家庭の期待は大きい。
まずは時給に見合う人間になろうと、その次は授業料を払う価値があると思って頂ける授業・サービスをしようとやり抜いて来た。失敗もした。
ただ体験授業で入会させた生徒さん、今までの担当生徒の人数は誰にも負けない。
だけど、数字では残されていない。公式には。
そして教室長が変わろうとその事実が引き継がれることはない。
すべては雰囲気、印象、イメージで判断される。
幸いにも前の教室長は私のことを「体験授業で入会・コースアップになりやすい講師。
生徒からの信頼も厚い。」そう形容して下さった。
何をどれだけ話したかはよく覚えていない。
一人で夜を過ごすのが怖かった。容赦なく女友達の優しさに甘える。
「最悪、もう無理。私馬鹿みたい。
なんだかなーー。浮いてるのかなー、よくわかんないや。」
「いや、でも。」
「授業ってさ、適当に組めばいいものなの?
なんで生徒さんのことよく知りもしないのに決めちゃうわけ?」
「メールしたんでしょ。」
「したよ。馬鹿みたいに。日時、時間、生徒さんの情報も添付して。」
夏期講習が組めていない。講師のスケジュールを調整したいが、生徒さんの都合と合わない。
「なんかさ、人の気持ちや時間優先するのがおかしいのかな?何も進まなかったよ。」
「いや、誰からも返ってこなかったの?」
「返ってきたよ。3人からは。でもあとは返ってきてない。
仕事遅いの決定だよね。あーもうどうしよ恥ずかしい。」
「やる気ないんじゃない?」
「いーよやる気無くたって。ご家庭が納得する授業提供できればいいし生徒さんが力つくならいい。
逆にやる気だけで仕事できねー奴はいらねー。」
「そうだよね。」
「でもさ、やる気の押しつけになってないかな?
私はお金払って下さるご家庭の都合最優先に動くよ。そのためには多少身内は犠牲になっても
仕方ないと思ってる。だけどそれって、誰しもが受け入れられる考えではないよね。」
「うーん。」
「結果講師振り回してるし、その度に謝ってるけど、なんか無駄なことしてるんじゃないかって思う。別の奴がやった方がうまく回るんでないかとか。」
私は何もできない。
やる気が大切だとは、決して思わないけど
やる気が無いと”当たり前”のレベルに到達しないほど、私は無能な人間である。
大事なのはやり方であって、人の気持ちを汲み取ること、それに見合ったものを提案し、提供すること、期日に間に合わせること。
それを考えることさえ、私は頑張らないとできない。
やる気だけもってすべてが許されるなら、決して動いて形にすることに価値は置かれていないだろう。
「って今何しゃべってたんだっけ?」
「えwww」
「やっと家着いた。」