会社への不安 | Startin' over…
ぼろぼろになった肌に、適当にアイシャドウを塗ったくる。
白いクリームシャドウで、くすみを落ち着きに化けさせるけど
やさぐれ感は拭いきれない。

遂に週7労働の開始だ。
今日もミスをなすりつけられた。
「保護者は入る気満々だったのにねー。」
己の営業トークの無さを、非正規の私の授業力不足に転嫁しようとしているのか。
若いとはいえ、エリアマネージャーの器の小ささを思い知るのだった。
後から知ったことだが、自分の非を認めたくないが故合理化するために
周囲に向けそんな発言をするような男だった。
上の上も使えない。
馬鹿が馬鹿を支える。
そして会社が回って行く。
だけど社会はそうでないと信じたい。

数学の体験授業であった。
中高一貫校に通う中学3年女子。
一次関数の分野から理解が抜け落ち、高校の特待生試験を受けるためには復習が必要ということで
ご来校。

例のマネージャーは飛び込みで来校したお客様の対応に追われていたため、
途中まで私が応対した。
目標と不安点のヒヤリング。
それでも時間が余ったので、一次関数、連立方程式との関係性を理解しているかを
チェック。
いっしょに問題を解いていた。体験授業前であるが。
やはり基礎レベルの抜け落ちが見られる。
だが面談の結果、体験授業では二次関数の文章題をやるはめになった。
結果は入会保留。
明らかにその女の子の学力レベルと乖離した問題だった。
彼女もプライドを刺激され基礎を復習する気を失ったようで、
わからないことをわからないと言うのにためらいを持つようになったしまった。
その短時間で。

本当に学力を上げるならば、何問合ってるか難しい問題を解けるかより
そこに行き着くために間違った問題をいかに解けるようにするか、
解法の各段階を支える基礎計算力、文章を式に落とし込む力が必要とされるのではないか。
数学の場合。
確かに英語ほど数学には詳しくない。
ただエリアマネージャーが節々に
「自分は数学が得意だった。これくらいは解けて当たり前。」
と言わんばかりの、得意な人間の論理を押し付けている様子が鼻についた。
上昇志向はその女の子自身が一番強く持っているのでは?
それだけじゃ進めないから塾を探しているのでは?
想像力の浅さを想像できなかった私はまだまだ甘かったものだ。

若くしてのし上がったのか、人に感謝もできない男だった。
恐らくこの業界しか知らないのだろう。

「わからない、そう言っていいんだ。」
「足りないものを補うのに、前に戻っていい、それが最短で目標に行き着く道。」
そう感じてもらうことで、信頼を得ようとしていた。
エリアマネージャーの意向を飲んだ私が馬鹿だった。

その頃あいつは模試であった。
ちゃんと起きれただろうか。
会場にたどり着けただろうか。

それから必須業務に無駄な時間をかけ、
何の収穫も無いまま退勤。夏期講習のコマを分配するのに
講師・生徒両者の予定があまりに集められてないかがわかっただけだ。
だから明日も出勤する。
ただ講師も生徒もくるわけがない。
ひたすらメールと電話を駆使して、日程調整をするのだろう。
ご家庭のご都合を最優先に動く、とはいえそれでまた講師たちを振り回すのだろうか。
休み前にわかっていればこんなことにならなかった。
講師業務の傍ら、1時間の空きですべての講師・生徒にスケジュールと講習時間の提案・確認を
行えるだろうか。
質問対応もあるだろう。
だが、その生徒さんの質問を待たせそちらの業務を優先せざるを得なくなるかもしれない。
講師なのか?私は。
教室スタッフという薄っぺらい響きと最低賃金に、
正社員の仕事の大部分が押し込まれる。
健康に生きるためには、責任感を勝手に持ち合わせない方がいいのかもしれない。
1時間しか寝ていない。
レッドブルで目を覚ます。
その後はブラックコーヒーで集中力をつなぐ。
マルボロに頼って笑顔をつくる。
仕事と言えない仕事をしてしまったことへの嘆きから
日本酒、ビール、ビール、ハイボール・・・
これは眠る努力だ。

ふと居酒屋を出ると、もう一人労働を終えたのが歩いている。
少しばかりの理解者。