あらゆる欠如 | Startin' over…
奴らは先に着いたらしい。セブンイレブン前の喫煙所にいるとのこと。
先輩を二人待たしている、というのが恐縮だった。
まして自分から誘っておいて。


駅から若干の下り坂。
日はまだ落ちていない。
蒸し暑いこの盆地は夕方になってもなお空気がよどんでいる。
故郷の高台のすがすがしい空気が恋しくなった。

「おせーぞ、アホ」
奴は灰皿の横にしゃがんでアメスピをふかす。
目つきが鋭い。不機嫌な表情をする。
極めつけは和馬。ちゃんとベンチには座っているが、どう見ても出勤前の黒服を統括するマネージャーだ。この二人が合わさると、どっから見ても私たちは危ないオーラを醸し出している。
通行人の視線が痛いが動じない。


どこの店で飲むかは決めていなかったから、繁華街をぶらぶらする。
道行く女性の一人一人を賛辞する奴。
ここは男のノリだから、同調する。
たまに和馬もからむ。
松雪泰子が好きらしい。柴咲コウでもいいらしい。彼はそれ以外は語らなかった。
奴はすれ違った巨乳の女性を褒めたたえる。
曰く巨乳か貧乳、極端じゃないと嫌らしい。

初めて抱き合ったときに言っていた。
このつまらない身体に対し、きれいなおっぱい、と。あれは嘘だったのだろう。きれいな女性はたくさんいる。
目移りしたって当たり前。ただ、私じゃ満足してくれないんだ。そんな思いが募るばかりで、私の脳裏には、常に沙那さんがいる。