沙那先輩 | Startin' over…
「See ya!」
3限が終わり、サンタクロースみたいな講師に挨拶してから、沙那先輩と教室を出る。

唯一これが先輩方と一緒に受けられる授業だ。
リア充にならないと決めた私はサークルになんぞ入ってない。
だが、かえってそれが原動力となりタテのつながりをつくろうと、この授業がきっかけで、沙那先輩と仲良くなった。お互い数少ない女喫煙組で、いつも一緒にいる女子グループをほったらかしにして喫煙所で過ごすことも多かった。
それ以上に沙那先輩は独特のオーラを持っていて、初めて会ったとき、「この人と話したら面白そう!」と直感的に思った。
実際高校の頃からクラブに出入りしていて、時々DJもやるらしい。
ジャンルは違えど爆音好きという点で、かなり馬があう。
今日はラメ入り生地のヌードベージュのタイトなミニワンピを着ている。
クラブに行く女子はたくさんいるが、そこらへんのギャルとは違い、沙那は一線を画していた。しっかり自分を持っているから、外にもそれが滲み出て、断然洗練されている。
HOUSEMUSICをチャラい音楽だと言われたときに、彼女ほど真っ向から反撃できる人は他にいないだろう。

一服したあと、ノリで買い物に行くことになった。


荒れた肌にバカ殿のように丸いチークを塗った店員が、沙那に近づく。
「こんなのお似合いですよ~。」
パステルピンクのドルマンシャツ。
これを勧める店員の神経がわからない。
褐色の肌とルーズな巻き髪が美しい沙那の魅力を、見事にかき消す一着だ。

沙那は店員にかまっちゃいないのに、しつこく追い回されている。
対する私は店内を勝手に歩き回り、ワイルドでゴージャスな日本人離れした沙那の雰囲気が引き立つようなコーディネートを、無我夢中で勝手につくっていた。
「それかわいいですよ。」
背の低い店員が近づいてきた。ストローハットが顔に不釣り合いだ。
沙那が着こなしそうなオレンジのペーズリー柄のマキシワンピを手に持った私に、見当違いな商品説明をし始める。
それを無視し、ワンピースと薄茶色のニットジレ、ターコイズのネックレスを持った。

「沙那さん、たまにはこんなのどうですか?もしお好きでしたら。」

うんざりしたようだった沙那の表情が急に明るくなった。
「さすが元アパレル店員!」


結局沙那はその組み合わせの他に、センスよくクラッシュが入ったダークブラウンのデニムショートパンツ、ゴールドのスパンコールのタンクトップ、トマトレッドの背中が開いたチュニック、セットのインナーはヒョウ柄だった。他にも買っていたかもしれない。

「助かったぞ。」
スターバックスのラテを片手に、沙那が私の肩をたたいた。

どこかに少し隠れたい気分。キチガイじみて私はおせっかいである。人にはそれぞれ似合うカラーグループがあるから、自分が着こなせないものを着てくれる他人のコーディネートほど、楽しいものはない。
ただ別に資格は持っていないから、散々アドバイスという建前の、好き勝手言い放題の後は、いつも萎縮してしまう。


その後、ピザがおいしいというダイニングバーに行った。

「この前いっしょに飲みに行ったんだってね。」

タバコの後のワインは苦かった。