私がその物件を知ったのは今から2年程前のこと。

ちょうどその頃、あるお客様の住まいを探していた時に見かけた物件でした。横浜の郊外にあるその物件は、土地が約150坪、建物も70坪はある築20年ほどの中古住宅です。


中古住宅といっても、コンクリート打ちっ放しの俗に言うデザイナーズ住宅。見るからに豪邸という雰囲気で記憶に残っていた物件でした。


その物件の売主さんから先日、売却相談があったのです。


「2年程前から売りに出しているんですが、なかなか売れなくて・・・」

「そうですか、今、おいくらで売りに出しているんですか?」

「8,700万円です」

「8,700万円ですか、以前はもう少し高かったですよね?」

「はい、最初は11,000万円で出していました」

「価格を下げられたんですね」

「えぇ、なかなか売れないんで・・・」

「今はどこの不動産会社に依頼されているんですか?」

「大手不動産会社4社くらいに頼んでいます」

「引き合いはどうですか?」

「ぽつ、ぽつ、案内が入る程度ですね」

「具体的な話になったことはありますか?」

「はい、先日購入を考えたいという方がいらしたんですが、結局、銀行のローンが借りられないということでダメになってしまいました」

「そうですか・・・」


そんな会話をした後、周辺相場等々について調べてみると見えてきました。売れない理由が。


まず価格。実は、売主さんがこの家を建てるのに掛けたお金は土地、建物を合わせて15,000万円余り。終の棲家というつもりでかなり贅沢な家を建てたそうです。


そのため、建物はまだリフォームすれば十分使える状態。壊すには忍びない物件です。それが逆にこの物件を見た人にはマイナスに作用しているようです。


というのも、リフォームするにしても建物が大きいため、2,000万円近い費用がかかるのです。そのため、購入する人の予算は1億円を超えることになり、尻込みしてしまう人が多いようです。


次に場所。確かに閑静ないい場所なのですが、駅からは徒歩17分とアクセスがいいとはいえません。環境を重視する人にはいいのですが、そうでない人には大きなネックとなりそうです。


また、周囲には新築の建売住宅も多く、50坪弱の土地がついて価格は4,500万円程度。豪邸が建ち並ぶエリアとは少し違います。


もうひとつは、担保評価。

銀行の融資基準が厳しくなっており、8,700万円の売却価格に対して6,500万円程度しか融資が出ないようです。ということは、現状のままで購入するには、自己資金が2,200万円以上、リフォームするとなれば4,200万円以上は必要ということです。


もちろん、150坪の豪邸を購入しようという人ですからその程度のお金はあるのでしょうが、そうなると果たして中古物件を買うべきかということになります。これだけの予算と自己資金のある方であれば土地を購入して建物を新築するという選択肢も選べます。ましてやリフォームを前提に考えるとなおさらです。


正直、今のままの価格で中古住宅として売却するのは至難の業。いつ売れるか全く検討がつきません。それらの状況を踏まえて再度、売主さんに電話してみました。


「現状のままでは、売れる時期が予測できないのですが・・・」

「そうですよね、もう2年ですものね・・・」

「価格をもう少し下げるということはできますか?」

「えぇ、他の不動産会社さんにも同じことを言われているんですが・・・」

「厳しいですか?」

「はい、実は抵当権が8,000万円ほど残っているんです。値引きや仲介手数料を考えると8,700万円が限界で・・・」

「そうですか、じゃあこの価格で売れる方法を考えるしかありませんね」

「はい、なんとかお願いします」


売却において一番大切なのは、価格設定と不動産市況を読むことです。不動産業者は媒介(売主から売却依頼を受けること)を取得することに必死になる余り、売主が喜ぶことしかいいません。耳の痛い話をする業者の声にも耳を傾けることが大切です。













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