アップル、家電量販選別の舞台裏 | As it is

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できるか できないか ではなく やるか やらないか

巷ではiPhone4予約開始で盛り上がっているようです。

日経経済新聞より 転写

アップル主導の交渉

 都内の家電店。操作を体験してみたいという客が専門コーナーに列をつくるなど発売後1週間以上がたってもiPad人気は続いている。アップル日本法人も「とても好調」と説明する。
取扱店は全国で約180店に厳選、通信販売はアップル公式サイト限定とし、販路を大胆に絞り込む戦略転換を断行したが、ライバル不在の圧倒的な商品力を前に影響は全く出ていないようだ。
 アップルの販売戦略の見直しが表面化したのは4月。しかし、準備は周到だったようだ。
 アップル日本法人の幹部が、ある大手家電量販店の本社を訪ねたのは昨年末。「米国本社の意向」として見直しの内容を伝えるアップル側に、量販幹部は表情を曇らせながら聞き入った。
 量販店へのアップル側の要求は、携帯音楽プレーヤー「iPod」などを含むアップル製品を、アップル側が指定した店だけで販売すること。店以外では売らず、通販業者などへの商品供給もしないこと。
さらに、今までより納入価格を高くすることも取引の条件として提示したようだ。その代わり、アップルの指示に従って販売実績を上げた社に対しては、販売奨励金などの名目で実質的な利益を増やす特典を付けた。
 有力な量販店には直接乗り込み、複数回の協議を重ねた。規模が小さい通販の専業会社になるとアップル側に呼び出され、取引条件の変更を迫られたという。
 交渉が詰めの段階を迎えたのが2月から3月。「顧客にアップルの世界観を堪能してもらうためです。
小型店の狭い売り場で他社製品と一緒に並べられてはブランドイメージが保てない」とアップルは扱い店舗の絞り込みを迫る。これに対して量販幹部は「取扱店を減らすとなると、その店を利用していた消費者はどうなる。通販でも売れないなんて」と反論した。アップル側の答えは「ごもっともですが、米国本社の方針です」と結局アップル主導のまま、量販店側の意見が留意されることはなかった。

中間流通業者も絞り込み

 アップルが販売店を選別する際に基準にしているのは、売り場面積や販売数量だけではない。
「専用の棚をつくる」「一定水準以上の販売員を何人置く」など、販売店の営業施策にかかわる部分にも踏み込んで要望する。ある家電量販店大手の首脳は「ここまで要求するメーカーは今までなかった。本音では自由に販売したいが、アップルには逆らえない」と打ち明ける。その姿はルイ・ヴィトンなど人気高級ブランドと百貨店との関係にも似ている。商品単価は高くても販売側にとって取引条件は厳しく、アップル製品の利幅は「ポイント還元もできないほど」とこぼす大手量販店首脳もいる。それでも消費不況下、集客には絶大な力を発揮するため、要求を受け入れざるを得ない。
 既存商品の販売見直しを求めた後、iPadの販売店舗数の絞り込みについて打診してきたのは4月。ここでもアップルの豪腕ぶりは際立った。
 例えば、アップルが通販での同社製品の販売を停止するよう依頼したにもかかわらず、唯一4月下旬までネット通販を続けていた業界7位の上新電機。意向に従わなかったせいか、上新でiPadを扱えるのは直営約170店のうち、わずか1店。全店舗数では上新の半分以下に過ぎないノジマやPCデポでも2~4店。競合他社からも「アップルも極端なことをする」と驚きの声が上がる。
 家電量販店は5月28日のiPad発売に先駆けて同10日に事前予約を実施した。だが2日後の午後3時、アップルから突然、「30分後には予約を締め切ってください」との連絡が入る。もちろん事前に入荷数量は知らせない。ある量販店の首脳は「あまりにも売る側への配慮がない」と憤る。
改善を要望しているが、「のれんに腕押し」という。
 販売ルートの絞り込みに向け、アップルは販売体制の抜本的な見直しにも着手した。
 もともとアップルはキヤノンマーケティングジャパン、加賀ハイテックなど10社近くの中間流通業者を介して大小の数千店規模の販売店に商品を供給していた。しかし、今春からはヤマダ電機、ヨドバシカメラなど主要家電量販8社と直接取引を始め、ほかの取引のほぼすべてをダイワボウ情報システム、ソフトバンクBBの2社に集約した。
 アップル日本法人の元幹部は「苦しいときもあれだけ世話になった取引先を切るなんて、いくら外資系でもドライすぎる」と指摘する。「あれだけブランド力が確立したのに地方の店で販売をやめるなんて消費者からひんしゅくを買うだけ。長年在籍した幹部が辞めるなど組織の流動化も激しく、日本市場に応じた営業戦略が立てられていないのではないか」(元社員)と指摘する声もある。
取引を打ち切られたあるシステム系企業の社長は「アップルについて何も言うことはない」とぶぜんとする。

公取委は静観

こうしたアップルの営業姿勢に業界では「取引条件としては極端。独占禁止法に触れないのか」との声も上がる。
 公正取引委員会は現段階では静観の構えだ。「専門店やネット通販といった流通経路は、アップルが営業施策として決められること」(取引企画課)としている。販売店絞り込みの行為自体が即座に独禁法に抵触することはないとの認識だ。例えば、化粧品では使い方を丁寧に説明するために、量販店に卸さず、百貨店にある専門店でしか扱わない商品もある。
「ブランドを維持するということが目的であれば、客観的な事実だけみれば、アップルの件も化粧品と同じ」という。ただ、値崩れを防ぐために販路を絞り込んでいるなら、「独禁法に抵触する恐れがある」として、公取委はアップルの動向を注意深く見守る構えだ。

 10年前の2000年、公取委はパソコン「iMac」「iBook」の価格を拘束していた疑いで独禁法違反に当たる恐れがあるとしてアップルの日本法人に警告を出した。当時もアップル側は「違反はない」と反論。あくまで在庫を圧縮し、リベートを排除した販売手法の結果だったとしている。
 今回、アップルと交渉にあたった量販店幹部の1人は、「彼らはどんなに話を振っても小売価格については触れず、ブランドイメージの話だけを強調する。独禁法対策で、弁護士から指導を受けているとしか思えない」と明かす。

 水道の水のごとく、消費者に手軽に商品を行き渡らせる「水道哲学」とは逆をいく「高級りんご哲学」ブランドを守るために、厳しいルールで市場に臨むのはおかしいことではない。持続的に利益をあげるためには、批判を浴びるぐらいの強い商品力を備えることも必要だ。ただIT(情報技術)産業は(人間の約18倍の速度で年を取る)マウスイヤーに例えられるように、あっという間に主役が交代する。
ある家電チェーンの首脳は「今はアップルの要求をのまざるを得ないが、iPadに勝る製品はいずれ出てくる。そうなれば違う対応も考えられる」と主導権の奪還に意欲をにじませる。
アップルと量販店との力関係は、その時点でどちらが消費者を味方に付けられる企業の力を持っているかにかかっている。

日経経済新聞さん面白い記事をありがとう


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