日銀は6月14日、政策決定会合で日銀が買い入れている長期国債の額を、今の月6兆円程度から減額する方針を決定し、次回、7月の政策決定会合で、今後1~2年程度の具体的な減額計画を決めることになった。異次元緩和によって日銀は市中に流通する国債を「爆買い」し、マネーの量的緩和を推進して来たが、その結果、異次元緩和前には91兆円だった日銀の国債保有額は今や590兆円と6倍以上に膨れ上がった。これはGDP比でほぼ100%に達していて、欧米の15%~30%に比べて突出している。今回の方針決定によって、保有額の規模はともかく、日銀の国債保有額は減少することになる。

 

マイナス金利が解除され、経済が量的緩和(QE)や「異次元緩和」のような非伝統的金融政策から脱却すると、いくつかの潜在的な経済的影響「ツケ」が回ってくる可能性があり、それらの幾つかを挙げると、

 

借入コストの上昇:金利が上昇すれば、消費者、企業、政府の借入コストは上昇する。これは債務返済費用の増加につながり、家計の可処分所得や企業の利益を減少させる可能性がある。

 

債務の持続可能性: 高水準の債務を抱える国にとって、金利の上昇は債務返済コストの増加を意味する。その結果、政府予算が圧迫され、財政収支を維持するために増税や歳出削減が必要になる可能性がある。

 

資産価格の調整: 低金利の終焉は、安い資金に支えられてきた株式、債券、不動産などの資産価格の下落につながる可能性がある。この調整は市場のボラティリティを高め、投資家が損失を被る可能性がある。

 

通貨価値への影響: マイナス金利の解除は通貨価値に影響を与える可能性がある。通常、金利の上昇は外国資本を呼び込み、通貨高につながる可能性がある。しかし、移行期間中は市場が調整するため、ボラティリティが高まる可能性がある。

 

銀行の収益性: 銀行は通常、預金金利に比べて貸出金利を高く設定できるため、金利上昇の恩恵を受ける。これは、低金利環境で圧迫されてきた銀行の収益性を改善する可能性がある。

 

インフレ・ダイナミクス: 中央銀行はインフレ率の上昇に応じて金利を引き上げるかもしれない。インフレの暴走を招いたり、成長を抑制したりすることなく移行を管理するためには微妙なバランスをとる必要がある。

 

金融の安定性: 非伝統的な金融政策からの転換は、根底にある金融の脆弱性を露呈させる可能性がある。安価な借り入れに大きく依存してきたセクターや企業が困難に直面し、デフォルトや金融不安につながる可能性がある。

 

消費支出: 金利の上昇は、住宅や自動車など、多くの場合ローンで賄われる高額商品への個人消費を減少させる可能性がある。このような支出の減少は経済成長を減速させる可能性がある。

 

投資シフト: 投資家は金利の変化に応じてポートフォリオをシフトし、リスク資産からより安全な有利子投資へと移行する可能性があり、資本フローや投資戦略に影響を与える。

 

マイナス金利の解除とQEの終了は経済状況の正常化に役立つが、移行には潜在的な悪影響を緩和するための慎重な管理が必要となる。

 

(3月17日付Ameba Blog「マイナス金利政策(NIRP)解除による様々な影響」として既に投稿しています。)