財務省は28日、2023年末の対外資産・負債残高を発表した。日本の企業や個人、政府が投資などを通じて海外で保有する資産から、海外企業などが日本に持つ資産を引いた「対外純資産」は前年末比12・2%増の471兆3061億円で過去最高を更新した。証券の時価評価額が高まったほか、海外投資の活発化も影響した。円安で外貨建て資産の円換算評価額が膨らんだのも寄与した。23年末の対ドル円相場は1ドル=141円台で前年比で約9円円安が進んだ。世界的な株高も寄与し、対外資産は11・1%増の1488兆3425億円だった。一方、海外企業などが日本に持つ資産を示す対外負債は10・6%増の1017兆364億円。主要国・地域の対外純資産で日本は33年連続で首位となった。

(上記は読売新聞、日本経済新聞などの記事を基にまとめた小文です。)

 

トレーダーによる円売りと日本の対外純資産との関係

トレーダーの円売りと日本の対外純資産には関係性がある。日本の対外純資産は、対外純投資ポジション(NIIP)とも呼ばれ、対外金融資産と負債の差額を示す。

為替レートと対外資産・負債に関しては、トレーダーが円を売ると他の通貨に対して円安になることが多い。円安は円ベースで見た日本の外貨建て資産の価値を高め、日本の対外純資産を増加させる。逆に、日本の対外負債が円建てであれば、その円換算額は増加する。円安は日本の輸出を安くし、輸入を高くするため、貿易収支を改善する可能性があり、貿易収支の改善は経常収支の黒字につながり、日本の対外純資産を長期的に押し上げる。

トレーダーによる持続的な円売りは、日本経済やその財政・金融政策に対する信認の欠如を反映している可能性がある。投資家が、高齢化、生産性の低さ、公的債務の多さなどの要因から日本の対外純資産が悪化すると予想すれば、円を売って円安を悪化させる可能性もある。日本は多額の対外投資を行っており、円安はこうした投資からの収益の円換算額を増加させ、日本の経常収支、ひいては対外純資産にプラスに寄与する。トレーダーによる円売りは短期的には通貨価値にマイナスの影響を与えるが、日本の対外純資産に複雑な影響を与える可能性があり、対外資産や投資収益の価値を高めることで対外純資産を改善させる可能性がある。しかし、長期的な純資産にマイナスの影響を与えかねない、より広範な経済的懸念を反映したり、その一因となったりすることもある。

 

対外純資産の財政政策への役割

日本の対外純資産は間接的ではあるが、日本の財政政策に何らかの役割を果たしている。どのように貢献しているかは以下の通りである。

 

投資収益から見ると日本の対外純投資ポジション(NIIP)が大きいということは、対外投資から多額の収入を得ていることを意味する。この収入は貿易赤字を相殺し、国家予算に貢献する。投資収益の流入は国の財政ポジションを強化し、財政政策決定の柔軟性を高める。

また、為替レートの安定性という面では 強固な対外純資産は為替レートの安定に貢献する。この安定性は必需品やサービスを含む輸入コストを削減し、インフレ管理に役立つ。財政政策は為替レートの変動に対応するよりも、他の優先事項に集中することができる。

借入コストとしては、強固な対外純資産は投資家の信頼を高め、政府の借入コストの低下につながる。これにより、日本は財政赤字をより安く調達し、必要に応じて拡張的な財政政策を維持することができる。

外貨準備についても、日本の対外純資産には多額の外貨準備が含まれている。これらの外貨準備は、経済的ショックに対する緩衝材となり、危機時に経済を安定させるために使用され、間接的に財政政策を支えることになる。

さらに、経済の回復力として、強固な対外純資産は健全な国際収支を示し、全体的な経済の回復力に貢献する。この弾力性により、政府は財政政策に余裕を持つことができ、過度な経済的ストレスを与えることなく景気刺激策や社会支出を実施することができる。

以上のように、日本の強固な対外純資産は金融の安定性を提供し、借入コストを削減し、収入を生み出すことによって財政政策を支えており、これらすべてが政府の効果的な財政措置を実施する能力を高めている。