総務省「家計調査」のエンゲル係数は、1980年以来の過去最高の割合に並んだ。食料品の高騰が原因だ。10年前比で増加した中身を調べると、肉食化・間食化・中食化という3つの変化の特徴を見出すことができた。家庭では、女性の就労比率が高まり、その影響が食料品の消費の内訳にも変化を及ぼしている。
29%のエンゲル係数
過去1年間の移動平均値のエンゲル係数(家計消費支出に占める食料費の割合)が2000年以降で過去最高で並んでいる。総務省「家計調査」の全世帯ベース(2人以上世帯)では、2022年9月~2023年8月までの12か月間累計のエンゲル係数が29.0%になった。この数字は、過去最高の2021年1月、2月(過去12か月累計)の29.0%とも並んでいる。
1999年以前について暦年データで遡ってみると、1980年以前で過去最高に並んでいた。それ以前は日本の所得水準が低く、エンゲル係数はもっと高まった。これを含めると43年間で最高域となっている。
理由は、食料品価格が、消費者物価の中で目立って上昇していることにある。消費者物価の食料品(含む生鮮食品)の上昇率は、2021年以降上昇し、現在もその勢いは衰えそうにない。
岸田首相は、経済対策5本柱で、物価上昇の負担増に何とか支援の手を差し伸べようとしているが、エネルギー(電気ガス代、その他光熱、自動車関係費)にはいくらか効果を及ぼせたとしても、食料品の方には影響力を十分に行使できていない。食料品は、輸入比率が高いため、円安効果が価格高騰を促しているせいだ。
では、どういった世帯が、特に負担感が大きいのだろうか。2022暦年の家計調査から、世帯属性を調べてみた。すると、70歳以上の高齢者世帯と低所得層のところで、負担感が高くなっている。食料費は必需的な品目だから、食料費が高騰したとき、支出を切り詰めようとしても限界がある。特に、年金生活者(無職世帯)にとっては、なかなか食料費が切り詰められない分、価格上昇が大きなストレスになっていると考えられている。日本の高齢化率は世界一(2023年9月29.0%)なので、食料品価格の高騰に消費マインドが敏感な性格を持っていると考えられる。
(上記は“エンゲル係数が過去43年間で最高域 ~食料費の負担増のしわ寄せ~ | 熊野 英生 | 第一生命経済研究所 (dlri.co.jp)”からの記事の一部引用です。