ことしの「骨太の方針」で焦点の一つとなっている、財政健全化目標の扱いについて、鈴木財務大臣は「基礎的財政収支」を来年度に黒字化するという、今の目標を堅持すべきだという考えを示しました。政府が6月にも取りまとめる経済財政運営の基本方針、いわゆる「骨太の方針」では、財政健全化に向けて「基礎的財政収支」を来年度に黒字化するという目標の扱いが焦点の一つとなる見通しです。


16日に、自民党の積極的な財政出動を求める議員連盟は、期限を区切った黒字化目標を撤廃するよう求める提言をまとめました。これに関連して、鈴木財務大臣は17日の閣議のあとの記者会見で「提言の詳細がわからないので申し上げることは控える」としたうえで、「日本の財政状況が厳しい中、金利が上昇して利払い費が増加すれば、他の歳出が圧迫されるリスクや、災害対応など臨機応変な財政出動が必要となる事態も考慮に入れ、財政健全化へ、たゆまぬ努力を継続することが重要だ」と述べました。
そのうえで「引き続き今の財政健全化目標の実現に向けて、全力で取り組んでまいりたい」と述べ、「基礎的財政収支」を来年度に黒字化するという、今の目標を堅持すべきだという考えを示しました。

 

(上記は NHK News Web 2024.5.17 付 記事の引用です。)

 

 

積極的な財政出動

積極的な財政出動とは、経済活動の活性化を目的とした大幅な政府支出や減税を指します。これには、インフラ・プロジェクト、国民への直接支払い、補助金など、経済における需要を増やすことを目的とした支出が含まれる。

 

インフレと金利への影響

 

 需要の増加とインフレ: 政府支出の増加は総需要を増加させる。経済がフル稼働に近い状態であれば、インフレ率の上昇につながる可能性がある。

 

金利への反応: 中央銀行はインフレ率の上昇に対応するため、金利を引き上げて景気を冷やす可能性がある。しかし、中央銀行が成長を支えるために金利を低く抑えた場合、実質金利(インフレ調整後の名目金利)は低いまま、あるいはマイナスになる可能性さえある。

 

為替レートと資本移動

 

円建て資産の魅力: 日本の財政出動がインフレ率の上昇につながったとしても、日銀が低金利を維持すれば、円建て資産の実質リターンは低下する。より高いリターンを求める投資家は、実質金利の高い国へ資金を移動させる可能性がある。

 

資本流出: 日本の資産の魅力が低下すると、投資家はより良いリターンを求めて円を売って外貨を買うという資本流出につながる可能性がある。

 

円の需給

 

円供給の増加: 財政刺激策に資金を供給するため、日本政府はしばしば国債を売却して借入を増やすかもしれない。中央銀行がこの負債をマネタイズ(事実上マネーを印刷)すれば、円の供給が増加する。

 

円安圧力:円供給の増加は、潜在的な資本流出と相まって、円の価値に下落圧力をかける。円の流通量が増えれば、それに見合う円建て資産への需要が増えず、円安につながる。

 

対外部門と貿易収支

 

貿易効果: 円安は日本の輸出を安くし、輸入を高くする。これは日本の輸出セクターを押し上げる可能性がある一方で、輸入コストが高くなりすぎれば貿易収支の悪化につながる可能性もある。

 

経常収支: 経常収支への全体的な影響は、輸出と輸入の需要の弾力性に依存する。通常、円安は長期的に貿易収支を改善させる。

 

市場の期待

 

将来の政策への期待: 市場参加者が財政刺激策や緩和的な金融政策の長期化を予想した場合、さらなる円安を予想する可能性がある。この期待は投機的な円売りを増長させる可能性がある。

 

信頼と安定: 積極的な財政刺激策は、長期的な財政安定性や政府債務水準への懸念につながり、通貨の信認をさらに低下させることがある。

 

まとめ

 

要するに、積極的な財政出動は以下のような経路で円安につながる可能性がある。

 

インフレと金利:金利が上昇せずにインフレ率が上昇すると、円資産の実質リターンが低下する。

 

資本移動: 投資家はより高いリターンを海外に求め、資本流出につながる。

 

需要と供給: 政府支出や潜在的なマネタイゼーションによる円供給の増加は円安につながる。

 

市場の期待: 円安を支援する財政・金融政策が継続されるとの予想が円安をさらに促進する。

 

これらの相互作用は、財政政策と為替レートの複雑な関係を浮き彫りにし、国内の経済状況と国際的な資本移動の両方から影響を受ける。