金曜日にモスクワのクロッカス市庁舎で、ソビエト時代のロックバンドの公演前にコンサート参加者が襲撃され、137人以上が死亡、100人以上が負傷した。

ロシアのインタファクス通信が土曜日に報じたところによると、武装襲撃に直接関与した4人を含む11人が拘束された。

ロイター通信によると、ISILのアフガニスタン支部(別名「ホラサーン州のイスラム国」ISKP(ISIS-K))はこの攻撃の責任を主張しており、米国当局もその主張の信憑性を確認しているという。

 

以下は、ISIS-Kについてわかっていることと、モスクワ襲撃の動機についてである。

 

このグループは現在もISILの最も活発な関連組織のひとつであり、かつてアフガニスタン、イラン、パキスタン、トルクメニスタンの地域を包括していたこの地域の古代のカリフ制国家からその称号をとっている。このグループは2014年後半にアフガニスタン東部から出現し、パキスタンのタリバンの離脱した戦闘員と、ISILの故指導者アブ・バクル・アル・バグダディに忠誠を誓った地元の戦闘員で構成されていた。ISグループはその後、残忍な行為で恐るべき評判を確立した。軍事アナリストで元トルコ軍大佐のムラト・アスランは、ISILのアフガニスタン支部は「過激でタフな方法論」で知られていると述べた。

「彼らのイデオロギーが、標的を選ぶ際に彼らを刺激しているのだと思う。第一に、ロシアはシリアにおり、アメリカと同じようにダーイシュ(ISIL)と戦っている。つまり、彼らはそのような国を敵対視しているのです。」とアスランはアルジャジーラに語った。「彼らは今モスクワにいる。以前はイランにいましたが、もっと多くの攻撃が、もしかしたら他の首都でも起こるかもしれません。」と彼は付け加えた。アフガニスタンでのメンバーは2018年頃をピークに減少していると言われているが、その戦闘員は依然としてアフガニスタンにおけるタリバンの権威にとって最大の脅威のひとつとなっている。

 

同グループによる過去の攻撃

ISKPの戦闘員は、少なくとも175人の民間人を死亡させ、13人の米兵を殺害し、多数の負傷者を出した2021年のカブール空港外での攻撃の責任を主張している。ISILの関連組織は、2020年5月にカブールの産科病棟を襲撃し、女性や幼児を含む24人が死亡した事件の犯人とされたことがある。同年11月にはカブール大学を襲撃し、少なくとも22人の教師と学生を殺害した。2022年9月、同グループはカブールのロシア大使館で起きた致命的な自爆テロの責任を取った。昨年イランは、シラーズ南部の主要な祠堂であるシャー・チェラーグが2度にわたって襲撃され、少なくとも14人が死亡、40人以上が負傷したと同グループを非難した。

米国は、今年1月にイラン南東部の都市ケルマンで100人近くが死亡する自爆テロが発生する前に、ISKPが攻撃準備を進めていることを確認する通信を傍受したと主張した。ISKPはケルマンのテロ事件の犯行声明を出した。

 

ISILはなぜロシアを攻撃するのか?

国防・安全保障アナリストによれば、ISILは近年、ロシアによるイスラム教徒弾圧の疑惑をめぐって、ロシアのプーチン大統領をターゲットにプロパガンダを展開しているという。「ロシアの外交政策は、ISIS(ISIL)にとって大きな赤信号だった」と、ワシントンに拠点を置くウィルソン・センターの南アジア研究所のマイケル・クーゲルマン所長はアルジャジーラに語った。「ソ連のアフガニスタン侵攻、チェチェンにおけるロシアの行動、モスクワとシリアやイラン政府との緊密な関係、そして特にロシアがシリアやアフリカの一部でワグナー・グループの傭兵を通じてISISの戦闘員に対して行った軍事作戦がそうだ。

これらすべてが、モスクワがISKPの「広範な宣伝戦」の焦点になっていることを意味している。」とサウスカロライナ州にあるクレムソン大学の助教授で、『アフガニスタンとパキスタンにおけるイスラム国』の共著者であるアミラ・ジャドーンは言う。

「ISISとその関連組織との世界的な戦いにおけるロシアの関与、特にシリアにおける軍事作戦と、ISIS-Kのライバルであるアフガニスタンのタリバンとのつながりを構築する努力は、ロシアがISIS/ISIS-Kにとって重要な敵対者であることを示している」とジャドーンはアルジャジーラに語った。

「モスクワの攻撃がISKPに“間違いなく起因する”ものであった場合、ISKPはロシア領内でも攻撃を開始できることを示すことで、支持を獲得し、「世界的な影響力を持つテロ組織へと進化するという目標」を前進させることを望んでいる。」とジャドーンは述べた。

 

「ISK(ISKP)は一貫して、手ごわい地域組織へと進化する野心を示してきた。イランやロシアといった国々に攻撃を向けることで、ISKは地域の重鎮に立ち向かうだけでなく、グローバルな舞台での政治的関連性と作戦の到達点を強調している。」とジャドゥーン氏は述べた。

インドのニューデリーを拠点とするシンクタンク、オブザーバー・リサーチ財団の戦略研究プログラム研究員であるカビール・タネジャ氏は、「アルジャジーラに対し、ロシアはISILとその関連組織から“イスラム教徒に対する十字軍のような存在”と見られている。」と語った。

 

“ISISの危機”という本の著者であるタネジャ氏は、「ロシアはISKPだけでなく、最初からISISの標的だった。ISKPは2022年にカブールのロシア大使館を襲撃し、この数カ月間、ロシアの治安当局は、ロシア国内と国境周辺、特に中央アジアとコーカサス地方の両方で、親ISISの生態系を取り締まる努力を強めてきた。」とも述べている。

3月上旬、ロシア連邦保安庁(通称FSB)は、モスクワのシナゴーグを攻撃するISILの計画を阻止したと発表した。「ISIS-Kがロシアを攻撃する現在の最も説得力のある動機は、タリバン要因である。タリバンはISISの宿敵であり、ISISはロシアをタリバンの友人と見なしている。モスクワとイスラエルとの親密な関係も、ISILのイデオロギーにとっては忌まわしいものだ。」とタネジャは言う。「ですから、この摩擦はイデオロギー的には新しいものではありませんが、戦術的にはそうなのです」と彼はアルジャジーラに語った。

 

もうひとつの要因もある;ISKPはシリアやイランでの挫折を経て、世界の注目から大きく離れ、強大な勢力へと再編成された。「アフガニスタンのISKPは著しく勢力を拡大している。ISKPだけでなく、ISISの本来の活動地域であるシリアとイラクでも、作戦能力の向上が見られる」とタネジャ氏は言う。今日、ISISは政治的、戦術的、戦略的にはさほど強力ではないにせよ、イデオロギー的に強力である。このことは、注意散漫な世界にとって難題である。

「大国間競争と世界的な地政学的混乱がテロ対策を後回しにしている今、これにどう立ち向かうかが大きな問題だ」とタネジャ氏は付け加えた。

 

ISILはどう反応したのか?

 

シンガポールのSラジャラトナム国際問題研究大学院のシニア・アソシエイト・フェローであるアブドゥル・バシットは、ISKPのソーシャルメディア・チャンネルは、モスクワへの攻撃を受けて「歓喜している」と述べた。

「彼らは攻撃を祝っている。」とバシット氏はアルジャジーラに語り、ISILに連なるアマク通信が発表した「犯行声明」を支持者たちが「翻訳し、再流布している。」と付け加えた。

バシットは、ISILの作戦方法は、大規模な攻撃の前にプロパガンダ・キャンペーンを増幅させることであり、これは最近の反ロシア・メッセージに見られたと述べた。このような攻撃は武装集団の「信頼性を高め」、「資金調達、勧誘、宣伝の範囲を広げる」とバシットは説明した。

「中央アジア出身のISILの新兵(特にタジク人)は、ISILがシリアを支配していたときに重要な役割を果たしていた。彼らは今、中央アジア地域に戻ってきており、攻撃を実行する意図が今、能力として具体化している。」とバシットは述べた。

 

ロシアでの過去の攻撃

モスクワをはじめとするロシアの都市は、過去にも攻撃の標的となっている。

2002年、チェチェンの戦闘員がモスクワの劇場ドゥブロフカで900人以上を人質に取り、チェチェンからのロシア軍撤退とロシアによる戦争終結を要求した。ロシアの特殊部隊が膠着状態に終止符を打つために劇場を攻撃し、130人が死亡した。そのほとんどは、チェチェンの戦闘員の意識を失わせるために治安部隊が使用したガスによる窒息死であった。ロシアで最も死者を出した攻撃は、チェチェンのロシアからの独立を求めるチェチェン人武装グループのメンバーによって実行された2004年のベスラン学校包囲事件である。この包囲事件では、186人の子どもを含む334人が死亡した。

 

(上記は“アルジャジーラ ケビン・ドイル氏による2024年3月23日付記事”の抄訳です。)